見出し画像

No.06:脳波からてんかん発作の検出|今週の論文

はじめに

近年医師不足が深刻化しており、厚生労働省の試算によると2036年には2.4万人の医師が不足すると考えられている。
(参考:https://mainichi.jp/articles/20190216/k00/00m/040/001000c
特に過疎化が進む地域では大きな問題となることは間違いない。

今回の論文はそのような医療の問題を解決する一助となるものだろう。

この研究では医師が脳波データから視覚的にてんかん発作を検出するのと同様に、脳波データを画像に変換し、DeepLearning を用いててんかん発作の検出をおこなった。


てんかんとは
 大脳の神経細胞の異常な活動により発作的に手足が硬直したり、意識が飛んだりする病気のことである。100人に1人がなると言われており、日本国内にも約100万人の患者がいると考えられている。
 脳内の電気的な活動が影響しているため、発作が起きている最中に脳波に異常が出ることが知られている。
(参考:https://www.tenkan.info/


これまでのてんかん治療においては専門の医師が脳波から発作の検出をおこなっていた。そのため、豊富なデータ処理の時間とコスト、専門医の経験が必要となり、自動検出できる手法が求められてきた。
今回の技術が臨床現場で応用されれば、専門医の仕事コストの減少や新しい治療法の発見につながると考えられる。


脳波プロット画像に対するCNNを用いたてんかん発作の検出

Seizure detection by convolutional neural network-based analysis of scalp electroencephalography plot images
(Ali Emamia , Naoto Kuniib , Takeshi Matsuoc , Takashi Shinozakid , Kensuke Kawaie , Hirokazu Takahashia , 2019)

背景
これまでの研究でもてんかん発作の自動検出のために、機械学習等の様々な手法が検討されてきた。
しかし、てんかん発作の脳波データの量が少ない上、個人によって特徴が異なるため、自動化は難しい状態だった。
近年、DeepLearning を用いた自動検出が検討されるようになったものの、いまだに人間の視覚的な検出能力と比較すると劣っている。

そこで専門医が複雑なデータ処理ではなく、脳波の特徴を画像から視覚的に分析していたことに着目し、CNNを用いた画像ベースの発作検出を検討した。

手法
24人のてんかん患者の脳波を記録し、一定の時間(0.5, 1, 2, 5, 10s)に区切って画像データ(224×224pix)に変換したものをそれぞれCNNを用いて発作時と非発作時に分類した。
データは合計1124.3時間あり、そのなかに発作は97回あった。
検証はleave-one-outとpairwiseの2パターンでおこなった。

結果
1sの時間幅を用いた際がもっとも精度が高く、74%という結果だった。
これは既存の市販の自動検出ソフトの精度(20〜30%)を大きく上回る結果であった。
また、pairwiseテストにおいて精度が高かった場合はleave-one-outでも高く、pairwiseテストにおいて精度が低かった場合はleave-one-outでも低いという結果となった。このことから訓練データとテストデータの発作パターンの類似性が精度に影響することがわかった。つまり、学習時に様々な発作パターンが追加されると精度が上がることが明らかになった。

本研究ではCNNを用いて脳波の画像データからてんかん発作を検出できることが明らかになった。
今回は発作時の検出であったが、医師は発作前の微妙な脳波の違いを検出するために過去の脳波画像に遡って評価することもある
このような脳波の検出にはRNNと本研究で得られたCNNを組み合わせることが必要であると考えられる。


おわりに

今回はこれで以上です。
*もしおかしな解釈があったらぜひ教えてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?