映画「パンク侍、斬られて候」
オタクなので、こじらせ系のいびつな日本語に惹かれがちで、具体的には、
ここ数年 → ニンジャスレイヤー
社会人1年目~3年目 → 円城塔
大学・大学院 → 松尾スズキ、中島らも
みたいな感じの荒んだ日本語遍歴を経てきていて、思えばその源流あたりには、高校のときに読んだこの本がある。修学旅行の移動時間のひまつぶしのために、近所の本屋でジャケ買いしたやつ。
しかし、町田康の本を映像化するなんて無茶だ。
町田康は、そのすぐれて荒んだ日本語が、そのいびつさが、日々の不条理や虚無を相対化しシュールさへと回収し、がために極めて退廃的な心理的安全をもたらしてくれるのであって、文字という土俵に強く依存している。文体を摂取する邪魔にならないように、ストーリーを意図的に破綻させているのではないかとさえ思う。
そういう意味で、この映画はすごい。ああ、このシーン見たことある...、ってなる。まったく見たことはないのに。この虚無を俺は知っている。うまく言語化できない懐かしさがあるというか。
町田康は、言語でもって、言語化できない虚無みたいなものを描き出す。逆説的に、しかし雄弁に。そういうパンクな精神が、映像化できないものを映像で描き出そうというこの映画にも通底している、というか。
とりあえず町田康が好きなら一度は観ておいていい映画だと思う。
(カバー画像: https://flic.kr/p/9EEHCD)
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