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私が日本酒の販売を辞めたワケ

こんにちは。
株式会社小林順蔵商店の小林佑太朗です。
今回は、今携わっている日本酒貿易に関して感じることを書いていこうと思います。

日本酒の輸出は毎年伸びてる!

もうすでにご存じの方も多いと思いますが、日本酒の輸出金額は2019年まで10年連続で伸びています!

この統計からみても分かるように、2009年時点から金額ベースで比較しても2019年の輸出額は3倍以上になっています。

海外でも、有名な世界規模のワインコンクールに日本酒部門が創設されたり、外国人が海外で日本酒を評価する品評会などが次々と開催され、その認知度は以前とは比べ物にならにほど大きくなってきているといえます。

それに伴い、弊社にもありがたいことにお問合せも増えてきています。

日本酒は「売れる商品」になった!?

それでは、日本酒は海外でバンバン飛んで売れるような商品となったのか!?

残念ながら、私はまだそのレベルには到達していないと感じています。
私が海外で実際に現地の方々とお会いして、お話しした中で感じるのは、やはりまだまだ「What is Japanese Sake?」という段階です。

この辺りに関しては、以前の投稿「海外の人々は日本酒をどの程度知っているのか」で詳しく記載しておりますので、宜しければ併せてご覧ください。

ではどのような商品が売れているのか?
それは、簡単に言うと以下のような商品です。

・日本で有名な銘柄
・ラベルがアイコニックで分かりやすい商品
・梅酒など海外の人に受け入れられやすいリキュール

特に、中国や香港などの中華圏では、日本語のT番組や雑誌をよく見ていたり、日本に訪れたことのある人も多いため、そのような傾向が顕著です。

「売れるものを売る」のか、それとも

そんな中、様々な業者の方々と商談やミーティングをしていると、こんな風に考えるようになります。

「どの商品が売れる商品なんだろう?」
「この商品は売れなさそうだから、この有名な銘柄を何とかプッシュして商売につなげよう」
「有名銘柄を仕入れられないから、あまり売れない」

酒蔵を選んで、売れるような商品だけ取り扱えるように交渉する...

もちろん、営利企業の活動としては、求められるものを提供する、ということが間違っているとは思いません。
どんな形であれ、日本酒が今まで提供されていなかった流通に載るのは、非常に喜ばしいことだと思います。

しかし、本当にそれが「現在の日本酒業界にとって求められている」のか?また、これが「本当にやりたかったこと」なのか?

と考えるようになりました。

日本酒は、米・水・酵母・蔵人などどれかが違えば全く違う商品になります。全く同じ原材料を使用しても、製造する人の技術や考え方によって驚くべき個性が生じます。
ここが、奢侈品である日本酒の素晴らしさの一つだと思います。
競合としてよく引き合いに出される「ワイン」も、有名な商品だけが売れているかというとそうではないと思います。
高価な商品群にはそれ相応の市場が存在し、それは安価な商品群にとっても同様です。

これまで私が訪れた酒蔵や、お会いしたりお話ししてきた蔵元の皆さまは減少する国内市場に直面し、なんとかしようと様々な努力をされています。

これら酒蔵の努力や想い、受け継がれてきた歴史に惹かれて、少しでも力になればと始めた日本酒輸出だったのに、無我夢中で走っている間に、ある意味真逆の活動をしてしまっている自分がいることに気づきました。

「こんなに素晴らしい商品を提供する酒蔵の商品が、海外で認められない訳がない」
「国内市場で苦戦を強いられている中小酒蔵こそ、海外市場に活路を見出してさらなる飛躍ができるはず」


これは、日本酒輸出を始めたときから持っている変わらぬ想いでいた。

日本酒が売れないのは「商品」のせい?

改めて、何故日本酒が売れないのか?と考えてみると、それは必ずしも「商品」のせいという訳でもないという事に気が付きました。

今まで相談を受けてきたり、商談をしてきた中で、「単純に有名な商品がないから買わない」といってきた人はどれだけいたか。

我々に共感して相談に乗っていただいている人の中では、その割合はそんなに多くはありません。

むしろ、

日本酒が好きになって、自分の国で普及させたいけどどうやって輸入するかわからない。ライセンスって必要?関税っていくらなの?原産地証明書ってなに?!」
「この酒蔵の日本酒にほれ込んで、直接酒蔵にメールしてみたんだけど、返信が来ないんだ。。。買うって言ってるのに何でだろう。。」
「酒蔵から日本酒を輸入したいだけなのに、何故か仲介の日本人が何人も入ってきて、値段が高くなっている。あの人たちは誰だ?」
「日本酒って面白そうなんだけど、町のSUSHIチェーンに行ったら5ドルで売ってたよ。同じ日本酒なのになんで日本から輸入する商品はこんなに高いの?」

といった声の方が多かったように思います。

全て、「有名銘柄ではない」という商品の理由ではなく、日本酒を購入するために酒蔵と交渉、購入、梱包、通関、国際輸送、商品登録、プロモーション、販売する中のどこかしらで起きている問題です。

もちろん、こういった問題は特に日本酒特有の問題ではなく、むしろどのような商品でも起きうる普遍的な問題です。

ただ、こと日本酒業界に関して言及すると、そこで何かしらの問題が起きて、未来のお客様を逃してしまっているケースは少なくないのです。

「日本酒を販売する」ことを辞める決断

なので、私は「日本酒を販売する」ことを辞めることにしました。
言い換えると

売れる日本酒だけを選定して、もうすでに市場が出来ている地域の業者に売る

ということを辞めようと改めて考えました。
このようなことは、既に弊社よりも以前から日本酒業界に携わってきている大手専門商社の方々でも出来ることです。むしろ、そういった方々がやる方がノウハウ的にも、人脈的にも、費用的にもメリットがあると思います。

語弊がないようにしたいのですが、私はこれが日本酒業界にとって不必要だ、と断じたいのではなく、現状の日本酒業界において弊社がするべき役割としては違う、と感じるという事です。

それよりも、まだ日本酒を扱ったことのない業者や、日本酒が市場に浸透していない地域で、そもそも日本酒を届けるという事に起きている問題を解決したり、素晴らしい商品を醸造し続けている地方中小酒蔵と共に、まだ日本酒の浸透がゼロの市場で、イチを作り上げていく仕事をしようと思います。

そのために必要なことは、いわゆる従来の商社のように売れる商品を仕入れて大量に販売する、ということではなく、日本酒輸出に関わるあらゆる場面で生じる問題を解決する、ということだと思います。

元々からの想いではありますが、改めて、弊社は「日本酒輸出に関わるあらゆる問題を解決する企業」として今後も精力的に活動してまいります!

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