朽ちた胡蝶蘭

法人向けのお花事業を立ち上げる理由

以前「花の会社を立ち上げた理由」という記事を書きましたが、Mawiではお花の価値を伝えていくための最初の事業として移転祝いなど法人向けのお花のサービスをつくっています。

上の記事でも書きましたが、僕のお花の原体験は好きな女の子へ花を贈った経験からきています。
そのストーリーを話すとプロポーズとか、誕生日プレゼントとか、toCのお花のサービスをやる方が自然に思われます。

それでもなぜあえてtoBを選んだのか、その理由を書いてみたいと思います。

「どこにも届いていない」お祝い花

僕はいくつかの花屋さんで働いていたのですが、何度か企業にお届けしたことがありました。大きな企業の上場や移転のお祝いとなると、何十個とお祝いが届きます。
受け取る総務の方はとても忙しくされていて、数十個目になるお祝花を持っていくと「またか」という顔をして「その辺に置いておいて」と言います。帰りがけに「これの処理、どうすればいいの?」と半ばめんどくさそうに相談されることも。
あるときは、その場で名前の入った札を抜いて地べたに山のように重ねて、お礼状リストに贈り主の名前をひたすら記載されていました。
もちろん受け取り担当の方は贈り主の顔を知らないことがほとんどでしょうし、仕事の責任がそこにあるので、これらはしょうがないことでもあると思います。

でも、そんな状態を指して僕の友人は「どこにも届いてない」と悲しそうに言っていました。
自分は花屋としてどこか「法人向けはそういうものだ」と思っていた節があり、はっとさせられました。

「企業向けのお祝い花では、お前のこだわりは必要ない」

これは知人の花屋さんが先輩から教えられたことだそうです。
「企業向けのお祝い花は、スピードと札に書いてある名前が目立つかが全てで、作品にお前のこだわりは必要ない」
そう教えられたと言っていました。
きっとそれを言われたその方も、言っている先輩も悲しかったと思います。

贈り主、贈り先、花屋、特定の誰かが悪いとは思いません。
いつのまにか「法人向けのお花はこういうもの」という形骸化した状態になってしまって、贈り主の想いや顔が想像できない状態になっているんじゃないかと思います。

捨てられた胡蝶蘭

この記事の画像は、あるオフィスビルに捨てられていた胡蝶蘭です。
メイン通りからよく見える場所に、無造作に捨てられていました。
扱い方や捨て方が悪いとかモラルの話をするわけではありません。
でも、単純に、贈った方が見たら悲しい気持ちになるんじゃないかと思いました。
そして自分が贈られたとして「本当に相手がお祝いしてくれた」と感じていて、同様の捨て方をするのだろうか、とも思いました。

恋人が自分のことを想ってプレゼントを贈ってくれた時、とても嬉しくてそのプレゼントが入っていた箱とかまで大切に扱っちゃう、捨てることになるのはわかっていても捨てたくない、そんな感覚ってあると思います。

恋人とまでいわなくても、お世話になっている取引先、いつも協業しているパートナー企業から贈られてくるお祝い、相手が自社を想ってお祝いしてくれた姿を想像すると、もう少し違った扱いになるのではないか、そう思います。

これは花が好きな自分のエゴですが、花もかわいそうだと思います。
花にとっての幸せはわからないけど、その美しさを価値と感じて、お祝いとか想いを伝えるために命を頂いていて、でも、まるで邪魔者のように扱われる。
よく贈られる胡蝶蘭も、とても独特な形と煌びやかな色で、本当に美しいと思います。
生産者の方に現場を見学させてもらいお話を伺ったことがありますが、生産には時間も手間もかかる。これだけ美しいものを丹精込めて作り続ける生産者には敬意を持ちました。
なのに、贈っても素通りしていく。
贈り主と贈り先のお祝いがきちんと伝わっていなかったり、花屋、そして花そのものが価値を感じてもらえなかったり、お祝いなのにlose-loseな状態だと感じます。

お花の未来と贈り物のあるべき姿

シンプルに、お祝いするって相手を想って何かすることだと思います。

今の法人向けのお花は、慣習的に「しなければいけない」が強くなり過ぎてしまい、慣習の側面が強い故に慣習通りが求められ、結果的に相手へのお祝いの気持ちが見えないような状態になってしまっているんじゃないかと思います。

僕はそんな状態を打破したい。

「お祝いといえばお花」は常に最適解では既にないのかもしれません。
ウィッシュリスト的なものや花以外の贈り物もありだし、新しいものが生まれていくと思います。だから市場自体はシュリンクしていってもおかしくないと思っています。

でも、それでもお花は命という刹那故にその瞬間の想いを切り取って伝えることができるという他にない価値を持っていると思うし、お花で想いを伝えたい・お祝いしたいっていう人は一定い続けると思います。

先日お贈りしたお祝い花に対して贈り主に送られてきたというお礼。ちょっとしたことかもしれないけど、こんな生のコミュニケーションが生まれるような贈り物を実現したい。

企業間であってもちゃんと想いを伝えるためのお祝い花を贈ることができる、花の価値を最大限に感じてもらえる、そんな状態をMawiの事業を通じてつくっていきたいと思い、法人向けの事業をやろうと思いました。

法人向けをやろうと考えた時に、多くの方に着眼点がよくないとフィードバックいただきました。
確かに、実際にテスト的にやってみて「企業にとってやはりお花はどうでもいいのかな」と感じることも多くあり、やめたほうがいいのかなと思うこともありました。
でも、だからこそ自分がやらねばとより強く思うようになりました。

企業間とはいえ、お祝いはそこに存在する人同士のコミュニケーション、体験です。
お花が「モノ」ではなく「コト」として価値発揮し得る機会です。
お花を通じたお祝いを少しでも理想に近づけるべく、挑戦したいと思っています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?