【触れたもの_38】ジャコメッティ

ジャコメッティと聞いて、勉強不足の僕には細長い黒い造形物くらいしか思い浮かばない。けれども、この映画の中でジャコメッティはひたすらにある一人のポートレイトを書き続ける。今日も、明日も。

これだから、アーティストと呼ばれる人たちのことは理解ができない、と思ってしまう。ため息すら出てくる。一歩進んでは二歩下がるような、そんな日々の作業に一体なんの意味があると言うのだろう。

しまいには、すべての作品は未完成だと彼は言う。無茶苦茶だ。
そんな未完成品を世の中に出し、金を稼いでいるのか、とつい言いたくなる。

けれども作品の途中、一人で創作に向き合い続ける、その手探りの日々の中の孤独さや不安が滲み出てくる。不覚にも、思い入れが生まれてしまう。これは正直、ズルい。

何よりも好きだったのは風邪で倒れて、普段は邪険に振る舞う妻に甘えるジャコメッティの姿だ。とてもかっこ悪いし、非常に情けない。けれども、どんな瞬間よりも人間くさくて、その瞬間少しだけ彼のことを好きになってしまった。


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千葉雄登

触れたもの

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