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Japanese MT-Benchの中身を見てみる

はじめに

Japanese MT-Benchには以下の8つのカテゴリーがあります。それぞれのカテゴリーにどんな質問が含まれているのか分析してみたいと思います。

  • coding: コーディング

  • extraction: 抽出

  • humanities: 人文科学

  • math: 数学

  • reasoning: 推論

  • roleplay: ロールプレイ

  • stem: STEM(科学、技術、工学、数学)

  • writing: 執筆

coding: コーディング

  1. アルゴリズムの実装:

    • 特定の数学的問題や論理問題を解決するためのアルゴリズムを実装するタスク。例えば、フィボナッチ数列の計算、最長共通部分列の探索、中央値の計算など。

  2. データ構造の操作:

    • バイナリツリー、配列などのデータ構造を用いて特定の問題を解決するタスク。例えば、バイナリツリーの共通祖先を見つける、配列の共通要素を抽出するなど。

  3. ウェブ開発:

    • HTML、CSS、JavaScriptを使用してウェブページを作成し、特定の機能を実装するタスク。例えば、ユーザーインタラクションに応じてジョークを表示するウェブサイトの作成。

  4. パフォーマンスの最適化:

    • 既存のアルゴリズムやプログラムの効率を改善するための最適化タスク。例えば、アルゴリズムの時間複雑度を改善する、並列処理の可能性を探るなど。

  5. プログラミング言語の特性と利用:

    • 特定のプログラミング言語の特性を活かしたプログラムの作成。Python、C++、HTML/CSS/JavaScriptなど、言語に応じた特定のタスクの実行。

extraction: 抽出

  1. テキストからの情報抽出:

    • 特定のフォーマットやキーワードに基づいてテキストから重要な情報を抽出し、整理するタスク。例えば、書籍の情報、映画レビューの評価、企業の財務データ、ニュース記事からの固有名詞の抽出などが含まる。

  2. カテゴリー分類とタグ付け:

    • テキストやデータを特定のカテゴリーやタグに分類するタスク。これには、質問を特定の学問分野に分類する作業や、特定の情報に基づいてデータをグループ化する作業が含まれる。

  3. 数値データの解析と集計:

    • 数値データを解析し、特定の統計や計算を行うタスク。例としては、企業の利益率の計算、株価の最高値と最低値の抽出、単語の出現回数のカウントなどがある。

  4. レビュー分析と評価:

    • 製品やサービスのレビューを分析し、それに基づいて評価を行うタスク。これには、映画やスマートフォンのレビューを分析して、それぞれの評価を数値や文字で表現する作業が含まれる。

  5. 形式の変換とデータ整形:

    • データを一つの形式から別の形式に変換するタスク。例えば、CSV形式からJSON形式への変換、数値データの丸め処理、特定の出力フォーマットへのデータの整形などが含まれる。

humanities: 人文科学

  1. 経済学と政策分析:

    • 経済指標と政策の関連性、金融政策の効果など、経済学的な分析を行うタスク。

  2. 歴史と文化の教育:

    • 歴史的事件や文化的背景を基にした教育プログラムや授業計画の作成。

  3. 法律と公共政策:

    • 法律、特に独占禁止法などの市場規制に関する知識を用いて、その影響を分析するタスク。

  4. 哲学と倫理:

    • 哲学的な問いや倫理的な議論を扱うタスク、例えばソクラテスの方法や現代問題への応用。

  5. 文学と創造的表現:

    • 文学的なテーマや寓話的な詩を作成するタスク、または創造的な方法で情報を伝える方法の開発。

  6. ビジネスとプロフェッショナルスキル:

    • 特定の業界におけるビジネスマナーやプロフェッショナルスキルに関するトレーニング資料の作成。

  7. アートとインタラクティブ教育:

    • 美術作品を子供向けのインタラクティブな体験に変換するアイデアの開発や、教育的なアプローチの提案。

math: 数学

  1. 幾何学的問題の解決:

    • 三角形や円などの図形の面積や周囲の長さを求める問題。これには座標を用いた面積計算や、図形を外接する円の面積の計算が含まれる。

  2. 代数問題と方程式の解:

    • 未知数を含む方程式や不等式の解を求める問題。これには一次方程式や二次方程式、不等式の解集合の求め方が含まれる。

  3. 確率と統計:

    • サイコロの投げや色の好みなど、確率的な現象に関する問題の解決。確率の基本法則を用いて、特定の事象の起こる確率を計算する。

  4. 応用数学問題:

    • 実際のシナリオやビジネスケースに関連する数学的問題。例えば、投資額の計算、乗車人数の推定、購入金額の合計や利益計算などが含まれる。

  5. 数列とシーケンス:

    • 数列やシーケンスに関する問題、例えば投資額が時間とともにどのように変化するかを求める問題など。

reasoning: 推論

  1. 論理的推論:

    • 与えられた情報から論理的な結論を導くタスク。これには、矛盾を見つけたり、与えられた事実から新たな情報を推論することが含まれる。

  2. パズル解決:

    • 論理パズルや配置問題を解くこと。これには、特定のルールや手がかりを用いて、正しい配置や答えを見つけ出すことが含まれる。

  3. 因果関係の推定:

    • ある事象が起こった理由や、ある状況が他の結果にどのように影響するかを推論するタスク。

  4. 方向性と位置の推定:

    • 物理的な配置や方向に関する情報を基に、特定のオブジェクトの位置や向きを推定するタスク。

  5. 状況判断と意思決定:

    • 特定の状況下での最適な行動や選択を判断するタスク。これには、倫理的判断や最も効果的な対応策を選ぶことが含まれる。

roleplay: ロールプレイ

  1. キャラクターの模倣:

    • 実在または架空の特定の人物やキャラクターになりきり、その人物の視点や言動を模倣するタスク。これには、有名な映画監督やアニメキャラクターなどが含まれる。

  2. 職業体験:

    • 特定の職業の人物になりきり、その職業特有の問題解決や対応を行うタスク。例えば、医者、恋愛コーチ、AIエンジニア、翻訳者などが該当する。

  3. 状況シミュレーション:

    • 特定の状況やシナリオに置かれた人物になりきり、その状況をどう乗り越えるかを考えるタスク。これには、家族関係や職場の問題などが含まれることがある。

  4. 創造的表現:

    • 芸術的または創造的な役割になりきり、詩を作成したり、特定のアプローチで問題を解決したりするタスク。数学者兼詩人やドラマキャラクターなどがこれに該当する。

  5. 教育的役割:

    • 教師やトレーナーとしての役割を演じ、学習者に特定の知識やスキルを教えるタスク。これには、数学の教師や技術的なトレーニングを提供する役割が含まれる。

実はここに英語を翻訳するタスクが含まれています。

stem: STEM

  1. 基本的な科学原理の説明:

    • 物理学、化学、生物学などの基本的な科学原理や現象を解説するタスク。これには、量子物理学の重ね合わせや光合成のプロセスなどが含まれる。

  2. 応用科学と技術の解析:

    • 実世界の技術的問題や現象に対する科学的アプローチを用いた解析。例えば、衛星の軌道変化の物理的影響や太陽熱温水システムの設計などがこれに該当する。

  3. 工学設計とシミュレーション:

    • 実際の工学的課題に対する設計提案やシミュレーション。これには、橋梁の建設時の留意点や住宅建築のためのシステム設計が含まれる。

  4. 数学的モデリングと計算:

    • 数学を用いて複雑な問題をモデル化し、計算するタスク。確率計算や統計分析などが例として挙げられる。

  5. 技術革新とその影響評価:

    • 新しい技術や方法論の提案及びその社会的、環境的影響の評価。例えば、機械学習の概念の説明やその学習方法の違いなどがこれに該当する。

  6. 批判的思考と問題解決:

    • 与えられた情報やデータを基に問題を特定し、批判的に分析する能力を問うタスク。これには、科学的な説明や技術的な問題に対する疑問点を特定し、解決策を提案することが含まれる。

writing: 執筆

  1. 創造的な執筆:

    • 物語性が強い内容を要求される執筆活動。これには短編小説、詩、ドラマティックなシナリオなどが含まれます。創造性と物語構築能力が重要とされる。

  2. 説明的な執筆:

    • 説明や解説を目的とした執筆。技術的な内容、科学的な概念、ビジネスメールのエチケットなど、情報を明確に伝えることが求められる。

  3. 比較分析の執筆:

    • 複数のアイテムや概念を比較し、その違いや特徴を分析する執筆。例として、製品比較、文化的違いの分析などがある。

  4. 再表現と修正:

    • 与えられた文を異なるスタイルやフォーマットで再表現するタスク。文体を変えたり、特定の制約(例えば特定の文字で始めるなど)のもとで内容を書き換える。

  5. 指導的な執筆:

    • 指導書やマニュアルの作成。読者に特定の手順や行動を指導する内容を明確に伝える能力が求められる。

まとめ

まず、8つのカテゴリーそれぞれにおける難易度に差あることが印象的でした。特に、コーディング問題や算数の文章問題については、GPT-4を用いた自動評価の限界があるのではないかと感じました。例えば、実際にプログラムが動くのかといったことは重要であると思いますが、GPT-4だけでは適切な評価が難しいという課題があります。

また、伝統的なベンチマークに類似した質問が含まれている点も興味深いです。これにより、従来の評価方法と比較して、より幅広い性能評価が可能になると考えられます。このような多様な問題設定は、システムの能力を総合的に把握する上で非常に有効だと感じました。


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