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百貨店におけるDX事例を深掘りしてみる-Macy's編

1.「日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)は米国よりも5年遅れてる。」

そんな声をアメリカから仕事のため出張してくるデザイナーからよく耳にする。
確かにここ5年ぐらいで人間中心設計だったり、顧客体験だったり、それを実践するためのデザインシンキングなどの言葉がほとんどの会社に浸透し、最近ではどのビジネス系のセミナーに行っても耳にするようになった。

しかし米国ではセミナーで言っているようなことはもう当たり前のように実践していて、DXが成功した事例がいくつもある。
今回は米国最大手の百貨店Macy's(メイシーズ)のDX事例を深掘りしていく。

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ニューヨークに行ってたことがある方なら必ず目にする百貨店


2.DX施策を行う前の百貨店の背景

誰でもネットで物が買えて、売ることもできる時代になり、米国中の百貨店は、売り上げも右肩下がりで次々と閉店した。日本でも同じような現象が起きているかと思う。
確かにあらゆるめんどくさいことを解決してくれるサービスが増えている中、目的の商品を大きい店舗から探して、重い荷物を持って帰る行為は嫌に決まっている。


3.Macy'sは具体的に何をしたのか

Macy'sは、店舗は「物を買う場」という概念を壊して、「物を実際に体験できる場」として提供した。必ずしも店舗で決済して、商品を受け取る必要はない体験を構築したのだ。
その一連の体験に欠かせないのが「Scan&Pay」というアプリになる。

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このアプリ一つで、今まで店内をうろうろして、欲しい商品をカゴにいれて、レジに並び、支払いをして、商品を受け取って、持って帰るという一連の購入導線を短縮して、気に入った商品があったらバーコードをスキャンしてアプリ上のカートに入れていき、支払いまで済ます体験を実現した。

このアプリを提供すると共に店舗導線の最後にカフェを設けて、じっくり悩みながら商品を購入するかどうか考える空間を作り、購入する場から体験する場を作り出した。

また店舗内で商品を見ているお客さんの表情を分析して、そのユーザーに対して商品のリコメンドを送ったり、商品のリアクションデータを蓄積して、百貨店ならではの体験とデータを構築している。


4.Macy'sの一連の体験がもたらしたもの

・オンラインとオフラインの融合
リアル店舗を営業していく中で、常に強敵となるのがECサイト。それを敵対するのではなく、ECで出来ないことを店舗で、店舗でできないことをECで行い、お互いのウィークポイントを帳消しにした。
・店舗の都合ではなく、お客さんに購入を考えさせる余白を持たせた
ほとんどの店舗はお客さんが商品を取って、スムーズに購入ができるように設計されているが、購入までの間に余白を設けることで、Macy'sでの試せる購入体験を思い出させて、リピート客を増やしていった。
・ユーザーも理解していない百貨店での無意識なウィンドウショッピングのデータ化
ECでの買い物はほとんど何を買いたいか意識して行動しているが、百貨店などのリアル店舗では視界に入ってくる商品が多い&実際に動きながら行動しているため、お気に入りな商品があってもチラッと見て通り過ぎてしまうことが多い。これを見逃さないために商品を見ているお客さんの表情を認識して、あとでアプリ内でPUSHすることで、購入意欲があるお客さんを逃さない。


5.まとめ

日本の百貨店も多くの企業がデジタルにも手を出しているが、未だリアル店舗とECには大きな壁があり、それぞれ境界を分けて運用している。大きい企業になればなるほど部署間の社内政治があり、壁を壊すことが難しいが、それを壊さない限り、DXの実現は不可能である。その壁を低くするために部署間で同じ目標に向かって共通言語を作り出すワークショップやスプリントの実施は非常に重要だと思う今日この頃、、、

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