浦佐日傘男子__2_

【編集部取材 番外編】 40過ぎの「おっさん」が「日傘男子」デビューしてみて気が付いたこと。

2018.08.12

日傘男子元年。

記録的な酷暑となった2018年は、間違いなくそう呼ばれる年になるだろう。

かく言う自分も先日、40過ぎの(正確に言えば50近い)「おっさん」ながらも、「日傘男子」デビューを果たした。

自分は職業柄、撮影を含め、屋外の「物件」を取材することが多いのだが、その日はあいにく、ほぼ終日屋外で取材をせざるを得ないスケジュール。。。

この酷暑では、さすがに日傘をささないと「生命の危険」にさらされると思い、「UVカット・フォー・メンズ」と記載された雨傘・日傘兼用の商品を購入した。

しかし、「日傘男子」デビューを決意?したのは、熱中症による「生命の危機」を回避するという目的だけではない。


自分は東北の片田舎で生まれ育ったのだが、そもそも色白の人が多いとされるその地方の中でも、ひときわ色が白い方だった。

当時は、「男の子は外で元気に遊び、真っ黒に日焼けすべし」といった風潮が強かっただけに、「女の子に生まれればよかったのにね」という誉め言葉?は、コンプレックスでしかなかった。

今でこそ、30年あまりの東京暮らしのせいで、常に外気に露出している顔などはすっかり「関東焼け」してしまったものの、今なお日焼けには弱く、ちょっと日差しが強いだけでも、「ゆでだこ」のように赤くなってしまう。

日焼け止めを塗りたくった時期もあったが、日焼け止めは石鹸で洗っても落ちないため、いちいち「化粧落としのようなもの」で落とさなければならないのが面倒だった。

「おっさん」としては、「化粧落としのようなもの」にも抵抗はあった。

よって、日傘というものが、熱中症予防だけでなく、日焼け予防についてもどこまで効果が確認できるのか、試してみたかったのである。


さらに、「日傘男子」デビューの目的は、もうひとつあった。

世間一般に長年染みついた「恥ずかしい」とされる行為が、いかにして「恥ずかしくない」行為へと変化するのか、自らを実証実験の対象ととすることで、確かめてみたかったのである。

つまり、「あのおじさん、男のくせに日傘なんかさしてる、変な人!」という視線を前身で浴び、「嘲笑の対象」になってみたかった。

実は、この3つ目の目的が、50近い「おっさん」の「日傘男子」デビューを後押しした、最大の要素だったりもする。


しかし、「嘲笑の対象」になってみるという目的は、果たすことが出来なかった。。。

この日は、かなり長い時間、「日傘男子」であり続けたが、嘲笑されるどころか、好奇の視線を浴びることすら無かったのである(あくまでも実感ベースだが)。


その理由は、取材で訪れた地域の気象条件にあった。

その地域とは、人里離れた標高の高い山間部ではなく、紛れもなく平地の「都市」なのだが、驚くほど短時間で天気が変わりやすい場所だった。

つい数分前までカンカン照りだったかと思えば、バケツをひっくり返したかのように雨が降り、そしてその雨雲はあっと言う間に去っていく。

しかも、しっかりとお日様が照っているにもかかわらず、割と強めの雨が降り注ぐ天気(いわゆる狐の嫁入り)にも2度ほど遭遇した。

つまり、この地域では、お日様が照っている状態で傘をさしている人がいても、「ああ、ついさっきまで土砂降りだったし」とか、「またすぐに降りそうだから傘を引っ込めてないんだな」くらいにしか見えないようなのである。

増して、狐の嫁入りともなれば、「日傘男子」は誰が見ても「ただ単に雨傘をさしている男性」だ。


実は、嘲笑の対象とならなかった理由は、もうひとつあった。

それは左手に傘、右手にカメラを持っていたからである。

屋外で写真を撮る際、左手で持っていた傘は太陽に向けて大きく掲げ、右手に持っていたカメラでシャッターを切った。

どうやら、その仕草を見た人は、「ああ、この人は撮影に邪魔な逆光を避けるために傘を持っているんだな」と思ったようなのである。

実際のところ、やや見上げるような状態で建造物を撮影する際、逆光を遮る傘は、想像以上に役に立った。

もちろん、片手で構えたカメラでシャッターを切るのは、安定感という点ではハンデがある。

しかし、日傘男子デビュー前は、左手で逆光を遮っていたことを考えると、強風が吹いていない限り、手よりも傘の方が断然「性能」が良いことは容易に想像できるだろう(撮影の際はくれぐれも通行人の邪魔にならないように)。

自撮り棒がそうであったように、逆光を避けるための傘が、撮影のための「兼用道具」として認識される日は遠くないと感じた。


そしてここから先は、かなりの部分で「憶測」の域を脱しないのだが、嘲笑の対象とならなかったさらなる理由が2つあったように思う。

1つ目は、今年の夏はあまりにも酷暑過ぎて、想像以上に「日傘男子」の認知が広がっていたこと。

この日は終日、自分以外に「日傘男子」を見かけることは無かったが、街ゆく人からすれば、自分の存在は「ああ、ニュースや噂では聞いていたけど、ホントにいるんだな」くらいの認識だった可能性がある。


2つ目は、「日傘男子」の存在を知っている・いないにかかわらず、日本人は往々にして、少々奇異な人?は「見てはいけない人」「目を合わせてはいけな人」として接する習性があること。

嘲笑こそされなかったが、こちらが伺い知れぬところで、実は街ゆく人々はこうした習性に基づいて行動していた?という可能性も否定できない。


ところで、「熱中症予防」「日焼け予防」という、最初の2つの目的はどうだったのだろうか。


とりあえず、熱中症にはならずに済んだ。

ただ、強い日差しは、日傘を通過して体に注ぎ込んできたようにしか思えてならない。

温度を測ったわけではないが、少なくとも「涼しい」とは思えなかったのである。

もっとも、傘をさわってみると、想像以上に熱を帯びていた。

傘は、自らが熱を吸収することで、実は人知れず?自分を「ガードしてくれていた」のかも知れない。


一方、日焼け予防の効果はあったのだろうか。

多分あった、と言っておこう。

日差しの強い時間帯がかなり長く続いたにもかかわらず、顔はほぼ焼けなかった。

しかし、手の甲は若干日焼けしている。

左手に傘、右手にカメラを持つ体制だったこともあって、気が付かないうちに、手の甲は「傘の影」から離れていた時間が長かったようだ。


結論。

日傘には、「熱中症予防」と「日焼け予防」には一定の効果があるとと思われるが、涼しさを「体感」できるかは微妙。

一方、屋外で写真撮影をする際、使い方によっては「逆光封じ」にも使えるということを発見した。

しかし、「目立ちたい」「笑いをとりたい」といった目的で「日傘男子」デビューするとしたら、恐らくその目的は果たせないだろう。

日本全体がこれだけ記録的な酷暑を経験してしまうと、「日傘男子」はもはや、「笑える」レベルではない。

来年以降の夏は、雨が降れば男子も女子も普通に雨傘をさすように、強い日差しが差せば男子も女子も普通に日傘をさす日本になっていることだろう。

遊都総研.com 編集部

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