見出し画像

ある先生と、私。

忘れられない先生、と考えたときに真っ先に思い浮かべたのは、高校2年生のときの担任の先生でした。ここでは、A先生と書くことにします。

高校生の頃、持病の症状や合併症を防ぐために、私はある薬を飲んでいました。詳細は伏せますが、今使っている薬とは異なる、かなり強い作用のあるものでした。高校入学と同時期に薬の服用が始まり、身体に異変が出たのはそれからちょうど1年後、高校2年生になってすぐの出来事でした。後から分かったことだったのですが、もう少し対処が遅れたら内臓がダメになって取り返しのつかない事態になっていた可能性すらあったそうです。もちろん、この時の私は知る由もありません。

動けない、起き上がれないほどの倦怠感や自分の意思に反した眠気。ノートを取ったことも覚えていないような記憶障害。思考の大半を占めていた鬱。午後から学校に行くことや早退は日常茶飯事で、いつしか私は保健室の常連になっていました。1年生のときと真反対の状態になった私は、周りからの「頑張れ」に耐えられなくなっていました。カッターを手首に当てても身体に傷一つつけられない弱さに絶望するほど、心は擦り切れていました。

「助けてください」とA先生にSOSを出したのがいつだったか、定かではありません。ただ、先生が驚いたような顔をしていたことと、話をしたいという旨を書いたメモを渡したときの私の手の冷たさだけは今も鮮明です。
A先生とは、それから何度も話しました。他愛ない趣味の話から、理由もなく泣きたいという呟きまで色々と。辛い気持ちも話すうちに落ち着いて、帰るときには心が軽くなっているという繰り返しを、かなり長い期間続けていたように思います。

先生。
あの頃の私に代わってお礼を言わせてください。
先生と話した沢山の時間が、私を繋ぎ止めていました。当時、消えたいと連発していたあの生徒は、今なんとかやっています。
一番辛かった時期に向き合ってくださったのが先生で良かった。
本当にありがとうございました。

#忘れられない先生

この記事が参加している募集

忘れられない先生

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?