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H30/11/4 秋季近畿大会決勝「龍谷大平安-明石商業」試合レポート

こんにちは遊撃です。

3週間にわたって開催された近畿大会も、この試合をもって幕を閉じた。そのファイナルは、それに相応しい最高の「守り合い」となった。

平成30年度秋季近畿地区高等学校野球大会決勝戦
龍谷大平安(京都③)2x-1明石商業(兵庫①)
(延長12回サヨナラ)

明石商業 000 000 000 001 計1 H11 E1
龍大平安 000 000 000 002x  計2 H9 E1

明石商業スタメン
1中△来田⑧
2捕 水上②
3三 重宮⑤
4右△安藤⑨
5左 溝尾⑦
6遊△河野⑥
7二 岡田⑱
8一 清水④
9投 宮口⑩

龍谷大平安スタメン
1中△中島⑧
2二 北村④
3捕 多田②
4右 水谷⑨
5三 奥村⑤
6一△三尾③
7遊 羽切⑥
8左 半保⑦
9投△野澤⑪

(〇数字は背番号、△は左打者)

【試合の振り返り】
1回表、明石商業は1死から2番水上と3番重宮の連打で、1死1,3塁のチャンスを作る。ここで打席には4番の安藤。カウント2-2の5球目に仕掛けた作戦は「エンドラン」だった。明石商業の攻撃の多彩さが早速発揮された形だ。

しかし、安藤は龍谷大平安の⑪野澤の、アウトローに制球されたスライダーに空振り。捕手の多田は、スタートを切っていた三塁走者の水上を落ち着いて追い、タッチアウト。龍谷大平安が初回にいきなり訪れたピンチをしのいだ。

3回表、明石商業は2つの四球で1死1,2塁のチャンスを作る。この場面で、打席にはまたしても4番の安藤。粘りを見せた後の8球目、⑪野澤の直球をとらえるが、打球はサードの正面に飛ぶ。龍谷大平安のサード奥村は落ち着いて二塁へ送球。セカンド北村が一塁へ転送し、併殺を完成させた。この併殺、一見何でもないダブルプレーなのだが、実は裏がある。それについては、あとで詳しく解説する。

その裏、龍谷大平安は1死から1番中島の快足を飛ばした中前二塁打と、2番北村の死球などで、2死1,2塁のチャンスを作る。打席には好調な4番水谷。カウント1-2から外のボールを打ったが、当てただけの弱い二ゴロだった。しかし、それが幸いし一塁は微妙なタイミング。このとき、二塁走者の中島は三塁を回っていた。

明石商業のセカンド岡田は、一塁に送球しようとするが、間に合わないと判断し、すぐに三塁走者を見た。そして、走者が回っているのを確認し、躊躇なく三塁へ送球した。三塁走者の中島は挟まれてタッチアウト。明石商業がピンチをしのいだ。場面と状況を予め整理し、次のプレーを予測出来ていたからこそのプレーだった。それが出来ていなければ1点が入っていた。

5回までは両校ともチャンスを作る場面があったが、もう一本が出ない展開が続いた。明石商業の⑩宮口、龍谷大平安の⑪野澤がともに本調子ではない中、バックの好守が光った。

5回終了
龍谷大平安0-0明石商業

6回以降は、両投手が立ち直りを見せる。龍谷大平安の⑪野澤は6回以降、9回までは被安打2、無四球で4つの三振を奪うほぼ完璧な投球を見せた。球数が100球を超えてからは、むしろこれまで以上に制球が安定し、投球に凄みすら感じた。

明石商業の⑩宮口も、6回以降9回までは、ヒットを3本しか許していない。中盤まで高めに浮いていたボールは低く集まり、ゴロの山を築いた。セカンド岡田とショート河野の安定した守りも見事だった。特に岡田のプレーで1点、特筆すべきものがあった。

9回裏1死走者なし、打席には龍谷大平安の6番三尾。このとき、三尾の打球は地を這うような強い当たりで、セカンド岡田のところへ飛んでいく。終盤でグラウンドも荒れていたため、イレギュラーも怖い。この打球に対し、岡田は最初から捕球する気がないように見えた。彼からは「前に落とせばいい」という意識が感じられた。その通り、岡田は打球をしっかりと前に落とし、落ち着いて素手でボールを掴んで一塁へ送球。1つのアウトを確実に取った。

なぜ私には岡田「捕球する気がない」ように見えたか。そこにははっきりとした理由が2つある。

まず1つ目。近畿大会を通して見たところ、岡田はゴロに対してワンハンド(いわゆる股を割った捕球体制で両手で捕りに行くのではなく、外野手のように片手)で捕球することの多い選手だった。これは岡田だけでなく、ショートの河野にもそういう傾向があった。

この「ワンハンド捕球」の利点は「①打球と顔との距離が遠くなるため、恐怖が薄れる」「②グラブの可動範囲が前後左右に広くなる」「③足が動きやすい」といったところが考えられるが、グラブだけで捕りに行くので、体で「カベ」を作れないことが多い。どういうことかと言うと、グラブで捕れなければ、そのときは「カベ」がないので、確実に打球を後ろに逸らしてしまうということだ。ちゃんとした捕球体制であれば、グラブで捕れなくても、体が「カベ」となり、打球を止めてくれることがある。ワンハンド捕球は利点も大きいが、リスクもある捕球方法だ。実際、ショートの河野はこれで後ろに逸らしたことがあった(記録はヒットになっていたが…)。

この「ワンハンド捕球」をする傾向の強かった岡田が、この場面では股割り捕球の態勢をとった。これが1つ目の理由だ。

そして2つ目は落とした後の落ち着きだ。最初から打球を「捕ろう」とした結果、捕球できなかったら「焦り」が出る。それは送球ミスや、お手玉といった分かりやすい形で現れることがあれば、落とした打球をグラブで捕りに行ったり(基本的に止まっているボールは素手で捕りに行くのが基本)、一瞬体が起き上がったりと、結果的にミスには繋がらない形で現れることもある。

この場面で岡田は、前に落とした後、体を起こすことなくそのまま素手で捕球し、素早く一塁へ送球した。この落ち着きからも、最初から「前に落とすこと」を考えていたのだろうということが分かった。

9回裏の痺れる場面。どうしても走者が出せない、アウトを取りたい局面で、落ち着いてこの選択が出来るところに、明石商業の守りの堅さを再実感した。

最高の「守り合い」は、今大会初の延長戦に突入する。

9回終了
龍谷大平安0-0明石商業

10回以降は再び両校にチャンスが訪れる展開になる。

11回裏1死、球数が150球を超えたところで、ここまで10人連続でアウトを取っていた明石商業の⑩宮口の制球が突然乱れる。3番多田、4番水谷に連続四球、5番奥村には死球を与えて1死満塁となった。

四死球を与えても、ワイルドピッチになっても試合が終わる場面。そんな場面でも、明石商業のバッテリーは強気だった。

カウント1-0から6番の三尾に対して、捕手の水上は2球続けて外角低めにチェンジアップを要求する。⑩宮口がそこに投げ込んで2つの空振りを奪うと、4球目は死球を恐れず内角低めに直球を要求した。これはボールとなったが、水上は次も続けて内角を要求。これに⑩宮口が応えて内角に力のある直球を投げ込むと、打席の三尾は詰まらされ、弱いショートゴロとなった。これも難しい打球だったが、ショートの河野は前にダッシュして、本塁へ正確な送球を見せた。これも「なんでこんなに落ち着いているんだ…」と思わせるプレーだった。

これで2死満塁。打席には7番の羽切。三塁走者は俊足の水谷。この場面で、龍谷大平安が仕掛けた。

2球目、二塁走者の奥村が、わざと第二リードを大きく取り、コケるようなしぐさを見せた。それを見て、明石商業の捕手水上二塁へ送球した。その瞬間、三塁走者の水谷本塁へ向かってスタートを切る。水上の送球をショートの河野前に出て捕球し、ダイレクトで本塁へ送球。本塁はクロスプレーとなったが、間一髪でアウト。明石商業が絶体絶命のピンチをしのいだ。

このプレーは攻守両方とも、その場で「やろう」と思って出来るものではない。こういう局面を想定し、打開する術を用意していた龍谷大平安も見事だが、そのトリックプレーに落ち着いて対応し、一つも無駄のないプレーで得点を防いだ明石商業の野手陣はそれ以上に見事だった。このプレーだけで、この試合の素晴らしさが十分伝わるはずだ。

そして12回、ついに試合が動く。

この回の先頭打者、明石商業の1番来田の打球はキャッチャーの前に転がるゴロ。龍谷大平安の捕手多田は、これに対してミットでの捕球を試み、ファンブルしてしまった。ほとんど止まっている打球、素手で捕りに行くのが正解だった。この試合、両校通じて初めての失策。明石商業はこういうスキを逃さない。

2番水上が送った後、3番重宮が初球をとらえてレフトオーバーの二塁打を放ち、ついに明石商業が先制点を挙げた。尚も1死2塁で打席には4番の安藤。この安藤の打席が勝敗の分かれ目になった。

安藤の打球はセンターに抜けるかという当たり。これに対し、龍谷大平安のセカンド北村がスライディングしながら逆シングルで捕球。そのまま素早く一塁へワンバウンドで送球し、間一髪アウト。抜けていたらもう一点が入り、畳みかける攻撃が持ち味の明石商業に流れが行って、一気に畳みかけられていただろう。それを寸前のところで止める、スーパープレーだった。

野澤は続く打者を抑え、最小失点にとどめた。

12回裏、龍谷大平安はこの回先頭の7番羽切が四球で出塁する。続く途中出場の大國は犠打を試みるが、キャッチャーの目の前に転がってしまう。明石商業の捕手水上は二塁へ送球したが、これが悪送球に。ここで明石商業にもミスが出て、無死1,2塁となった。続く野澤が送り(小フライとなったがキャッチャーの水上が落球。記録は犠打)、1死2,3塁。1番の中島は敬遠。明石商業は満塁策をとった。

打席には先ほどスーパープレーを見せた2番の北村。今大会は好調を維持していたが、この日は明石商業の⑩宮口にタイミングが合っていなかった。それを強く感じたのが第1打席だった。普段は基本に忠実にセンター返しを心がけているバッター。手首を返さず、逆方向にもいい当たりが打てる。その北村が、⑩宮口のスライダーに対して手首をこねたような、ひっかけたサードゴロを打った。私はこの秋、龍谷大平安の試合を府大会からこの決勝も含めて7試合見てきたが、北村がこのような打ち取られ方をしたのは初めて見た。今日は苦しいな、とそのとき思った。

案の定、この日は⑩宮口に対して無安打。この打席も、高めのボールを上げてしまい、遊フライに倒れる。これで2死満塁。

この場面で打席に向かったのは3番の多田。この多田は、今大会ここまで18度打席に立って、ヒットが1本しか出ていない。しかもその1本は、初戦の天理戦の第1打席に出たもの。17打席無安打が続いていた。

カウント2-2からの5球目。明石商業の捕手水上は外角低めにスライダーを要求した。右打者に対するウイニングショットだ。⑩宮口の190球目は、その要求したところよりも、少し内側に入った。

そのボールを多田がうまく拾い、打球はセカンドの頭を越える。三塁走者が生還し同点。二塁走者も三塁を蹴った。

明石商業のライト安藤が本塁へ送球する…しかし、その送球はキャッチャーの頭上を大きく越え、ボールが点々とする間に二塁走者がホームイン。龍谷大平安が逆転サヨナラで5年ぶり6度目の優勝を決めた。

試合終了
龍谷大平安2x-1明石商業
(延長12回サヨナラ)

最後の最後にミスが出たが、最高の「守り合い」だった。

【投手成績】(△は左腕)
〇明石商業
・⑩宮口 投球回11と2/3 球数190 被安打9
与四球5(1) 与死球2 奪三振8 失点2 自責点0

〇龍谷大平安
・⑪野澤△ 投球回12 球数179 被安打11
与四球3 与死球1 奪三振8 失点1 自責点0

【雑感】
随所に両チームの完成度の高さが感じられる試合だった。

まず明石商業は、上でも書いたが、3回裏2死1,2塁から岡田が二ゴロを処理した際に、次のプレーを予測して三塁走者を刺した場面や、9回裏にセカンド岡田が難しいゴロを前に落としてアウトを取った場面。10回裏には、1,2塁間のちょうど真ん中に打球が飛んだ際に、ファーストの清水も打球を取りに行こうとしたのだが、セカンドの岡田がいち早く声をかけてファーストの清水を一塁ベースに戻し、自身がゴロを処理してアウトを取った場面もあった。そして上にも書いた11回裏の、ショート河野の落ち着きを感じた2つのプレー。

ざっと上げただけでもこれだけある。細かいところまで書けば、書ききれないくらい、守りに関しての素晴らしいところがあった。この大会では明石商業らしくない守備のミスも見られたが、大会を通じてしっかりと守備を修正してきたあたりは流石だった。この日は明石商業らしい「堅い」野球を見せた。

また、ベンチにいる狭間監督が、一球ごとに野手に守備位置を指示していたのも印象的だった。そしてその指示にベンチの選手も呼応して声を出し、指示された野手はすぐに動いていた。ベンチからの指示は試合中、中々通らないこともあるのだが、明石商業の選手たちはそれが無かった。普段から指示を徹底している証拠だろう。

宮口もよく投げた。今大会はエースナンバーを背負う1年生の①中森の調子が上がらない中、投手陣の軸として素晴らしい投球を見せた。ピンチでも恐れることなく内角にボールを投げ込むことが出来る度胸も素晴らしい。記事を読むと緊張しやすい性格とのことだが、勝負どころではそんなことは微塵も感じられなかった。ストレートが動くことに加え、左右の両打者に対してウイニングショットを持っており、相手からしたら厄介な投手だ。ひと冬を越えれば、球速も140キロ台が出るようになっているだろう。今後が楽しみだ。

打線は、この日はもう一つ繋がりに欠けた。しかし、初回に走者を3塁に置いた場面でエンドランを仕掛けたり、ボール先行のカウントでも甘いボールが来れば逃さずにスイングしていったり、バントの構えを見せながらも、簡単にはせずに投手を揺さぶったりと、持ち味は十分に発揮した。平安の⑪野澤を中心とした守りのほうが一枚上手だった。

明石商業の攻撃は方向性がはっきりとしており、その精度も高いので、現状これといって改善したほうがいい点は特に無い。だからこそ、個々のレベルアップに期待したい。

選出が確実な来春の選抜では、優勝が視野に入る位置にいる。攻守両面での「堅さ」に更に磨きがかかった状態で、選抜の舞台で躍動している姿を見ることを楽しみにしている。

龍谷大平安からも、随所に強さのワケを感じた。特にそれを強く感じた2つの場面を紹介する。まず1つ目は、上で「あとで詳しく解説する」と書いた3回表の併殺の場面だ。

あの併殺、なんでもないプレーにも思えるが、裏がある。実は龍谷大平安のサード奥村は、前日の準決勝・履正社戦で2つの失策を犯していた。そしてその1つが送球ミスだった。

龍谷大平安としては、この日が近畿大会で初めてとなる連戦。これまでは試合と試合の間が1週間空くため、試合でミスが出ればその1週間で練習をして、修正することができた。しかし、連戦となると練習が出来ない。そんな中でどうやってミスを修正してくるのか。だからこそ、この日の試合前ノックで、私は奥村のプレーに注目をしていた。

その奥村は、試合前ノックで三塁線の打球を捕球した際、そこからしっかりとステップを踏んで、一塁へワンバウンドの正確な送球を披露していた。私はこれを見た瞬間「今日の奥村は大丈夫」だと確信した。昨日のプレーを省みて、丁寧にプレーをしようという意志が伝わってきたからだ。

11回表には、試合前ノックで捌いた打球と同じような打球が飛んできたが、奥村はそれも練習通りのワンバウンド送球でしっかりと処理した。

これは自身で意識したことなのか、原田監督の指示なのか、チームメイトの指示なのか定かではない。しかし、前日のミスをしっかりと「試合前ノック」の間に意識をして修正し、試合でもその通りのプレーをすることが出来る。このあたりの修正能力の高さに、龍谷大平安の強さを感じた。

野球は失敗のスポーツ。どんなに素晴らしい打者でも、10回打席に立てば、6回はアウトになる。失敗は付き物だ。だからこそ、同じ失敗を繰り返さないことが重要になってくる。それを通して、失敗を減らすことはできる。

ドイツ統一の中心人物であり「鉄血宰相」の異名を持つオットー・フォン・ビスマルクの言葉にこんなものがある。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

野球においても、過去の歴史や経験を自分のプレーに生かしていくことは大事。歴史に学ぶとはすなわち、どれだけの準備が出来るか、ということだ。

ただ、「一度の失敗」という経験に学ぶ選手は、野球においては「愚者」ではないと思う。もちろん失敗を防ぐための最大限の準備は必要だが、やってみて初めて分かることも多い。だからこそ、一度の失敗は仕方がない部分もある。しかし、その一度の失敗に学ばない選手は「愚者」だ。

龍谷大平安には、この大会を通して「愚者」が居なかった。しっかりとした準備ができる点、そして修正能力の高い点が、一戦一戦、戦うごとに力をつけ、京都3位から近畿大会を制覇することに繋がったのだと思う。

もう1つは、4回表の明石商業の攻撃で、2死1,3塁、打席には9番の宮口が入っている場面。初球がストライクとなったときに、明石商業は攻撃のタイムをとった。このとき、セカンドの北村がすかさず投手の⑪野澤のところへ行って、声を掛けた。ちょっとしたことなのだが、こういう声掛けがあると投手が孤立しない。投手は強い気持ち、そして勇気をもって投げることが出来る。

その声掛けが生むのはメンタル面でのプラスだけではない。雰囲気を良くしたり、投手に勇気を与えるといったことに加え、JK(準備・確認)にも繋がっているのだ。

準決勝の履正社戦でこんな場面があった。2回表、無死1塁で、打席には長打もある6番の野口。一球目を投げる前に、⑪野澤は一塁へ牽制を入れた。このとき、野口のバットが一瞬動き、ほんの少しバントのそぶりを見せたのを、平安の野手陣は誰一人として見逃さなかった。サード奥村、ショート羽切、セカンド北村の3人が一斉に打者を指さし、「バントあるぞ!」と声を出し、バントをされた時の守備の確認をすぐに行っていた。

龍谷大平安はこのような声掛けが常になされ、終始よく声が出ていた。しかもそれが中心選手だけでなく、1年生のサード奥村も含めた全員に徹底されていた。

この声掛けのポイントは、独りよがりに「来い!」などと声を出すのではなく、「サードバントあるぞ!」など味方の選手に向かって声を出している点だ。常にこのような声掛けをしているということは、常にJK(準備・確認)をしているということ。そしてお互いに声を掛け合うことで、それぞれの準備にズレが出ることもない。このあたりにも、龍谷大平安の強さを感じた。

(準備にズレが出た典型的な場面が、2017年選手権3回戦「大阪桐蔭-仙台育英」で、9回裏2死1,2塁でショートゴロが飛び、ショートの泉口がセカンドへ送球すると思い込み、ファースト中川のベースカバーが遅れて、中川が一塁ベースを踏み外した場面。ショートの泉口とファーストの中川の準備・認識にズレがあったため、生まれたミスだったと言っていいだろう)

修正能力の高さJK(準備・確認)がしっかりできる、そして声掛けを通して雰囲気を良くするだけでなくJK(準備・確認)を共有し、認識にズレが出ないようにしている。もちろんその他にも沢山あるとは思うが、このあたりが龍谷大平安が一戦ごとに強くなり、崩れることなく、勝負所をモノにして近畿を制した理由なのだろうと、私は考えている。

投手の頑張りも光った。府大会では全く結果を残せず、エースナンバーを豊田に奪われた⑪野澤が大車輪の活躍。近畿大会では26イニングを投げ、失点はわずかに2(自責点は1)。被安打は16、与えた四球は4つだけと抜群の安定感を見せ、近畿制覇の立役者となった。

打者の左右に関係なく、内角を厳しく攻めることが出来た点が、今回の好投に繋がった。今週末から行われる神宮大会でも、引き続き各地区を勝ち抜いた強豪との戦いとなるが、恐れずに内角を攻めてほしい。

打線は4番水谷が府大会では不調だったが、近畿大会は16打数9安打5打点と活躍を見せた。近畿大会では不調だった1番中島と3番多田に、決勝戦で当たりが出たのも大きい。この勢いのまま、神宮大会でも本来の力を発揮してほしい。中島・北村・多田・水谷・奥村と続く上位打線は、全国でも屈指の力を持っている。

そこに足を絡めた攻撃を組み合わせたり、トリックプレーが出来ることも示した。まだまだ引き出しがありそうな感じがして、対戦校は嫌な印象を抱くだろう。

【まとめ】
龍谷大平安は京都府大会は3位だったものの、そこから力をつけて実力で掴んだ近畿王座。これに満足せず、どんどん上を目指してほしい。

まずは神宮大会。今回の近畿大会のように、目の前の一戦一戦に自分たちの力を余すことなく発揮すれば、優勝も見えてくる。この一週間でさらに成長した姿を明治神宮球場で見るのが楽しみだ。

明石商業も近年力をつけてきているが、限りなく全国の頂に近いところまで来ていると思う。ただでさえ完成度の高いチームが、ひと冬を越えたときにどんなチームになっているのか。想像するとワクワクが止まらない。

ここまで、キーボードを打つ手がほとんど止まらなかった。それくらい面白く、今後が楽しみになる戦いだった。

神宮大会での龍谷大平安の戦い、そして選抜での近畿勢の躍進に期待を持ちつつ、近畿大会の試合レポートを終えさせていただきたいと思う。

ここまで読んでいただいた方、そしてこれまでのレポートを読んでくださったり、感想をいただいた方、本当にありがとうございました!シェアやいいね、リツイートに加え、感想や意見もお待ちしておりますので、頂けると幸いです!

神宮大会は連日になるので、大会終了後、気になった試合や龍谷大平安の試合を中心にレポートを書ければいいなと思っております。そちらの方も読んでいただけると嬉しいです。

本当にありがとうございました!それでは失礼します。

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