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音楽の伝道者としてのASKAの生き様を示す旅-higher ground-神奈川ネタバレレポート

今回のASKAさんのツアーいろんな人が詳細レポをあげているので、それに倣って1曲1曲の完全ネタバレレポを書いてみようかと思う。それは今回のライブが素晴らしすぎたという事はもちろんだが、チャゲアス脱退後初のライブという事、そしてセットリストやパフォーマンスから見ている者はいろいろな想いを抱くツアーだったので、ちゃんと自分の記録に残そうと思ったのである。(今ツアーは1月の渋谷と2月の神奈川を見ましたが、今回は2月神奈川のレポです)

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まずツアータイトル「billboard classics ASKA premium ensemble concert-higher ground-」バンド+ストリングス、そして「higher ground」=更なる高み。

復帰後のASKAはシンフォニックコンサート、バンドツアーという違う形態で「今のASKAの音」を聴かせて来た。そして今回「更なる高み」へとどう誘ってくれるのか。。。

ストリングスチーム、バンドメンバーが登場、そしてASKAが大歓声に迎えられて、ライブスタート

①「We Love Music」(2020年・ソロ新曲:AL「Breath of Bless」収録)~「僕はMusic」(2004年・C&A:SG「僕はMusic」収録)

いきなり新曲の「We Love Music」のサビからクラップによって音楽の世界に吸い込まれていく、そして「僕はMusic」へ。昨年シングルリリースされた「歌になりたい」そして新曲「We Love Music」とともに、ASKAが自分は音楽の伝道者であり、音楽そのものという意志を伝えるために選曲されたのではないか。それを見事に体現しているASKA、まさに「僕はMusic」だった。

②「Hello」(1995年・ソロ:AL「NEVER END」収録)

ソロ初期の人気曲。ライブでの披露は実に10年ぶりとなる。2つのツアーを経て復帰後やっと気軽に「Hello」と言えるようになったそんなことを感じた。そしてこの曲で改めてこの日のASKAの声の好調さを実感。このライブ体験が素晴らしいものになる予感がどんどん確信に変わっていく。

③「天気予報の恋人」(1989年・C&A:AL「PRIDE」収録)

現段階でのチャゲアスの最後のツアー「alive in live」でも披露されたチャゲアスの代表曲の一つ。ソロでセルフカバーもされているが原曲に近いアレンジ。イントロで大歓声が上がり会場のボルテージも一気にあがる、この曲の持つパワーを改めて実感。

MC

④「Fellows」(2017年・ソロ:AL「Black&White」収録)

ASKAのファンクラブ(本人はこの呼び方は好きではないらしい)の名称ともなっている「Fellows」。ソロでみせる男臭さ、名曲「月が近づけば少しはましだろう」にも通じる世界観。個人的にはこの曲が先行で配信された時に結構打ちのめされてたので勇気づけられた。ライブでは初披露だったけど、ライブ映えする曲。今後ライブの定番になって欲しい。

⑤「修羅を行く」(2018年・ソロ:配信シングル「修羅を行く」収録)

ストリングスとバンドの融合で世界観がくっきりと見える曲。「修羅」という言葉が、ここ数年のASKAを取り巻く環境を一言で表している。そしてその中をまっすぐと前を見据えて歩いていくASKAのその姿に圧倒される。。。

⑥「しゃぼん」(2017年・ソロ:AL「Too many people」収録)

復帰後初めてのアルバム「Too many people」の最後に収められている楽曲。当時の心情を吐露しているような歌詞に心打たれる。迷いや葛藤、そして希望。。。この曲のロングトーンは復帰後のシンフォニック、そして1月の渋谷のライブでは、かなり苦しそうだったがこのライブではかなり音源に近い形で再現されていて、ASKAのボーカリストとしての矜持が見られた。

MC・ヒット曲は曲の良しあしだけでなくいろいろな要素・タイミングで生まれるといった後で、次の曲の紹介へ

⑦「はじまりはいつも雨」(1991年・ソロ:SG「はじまりはいつも雨」収録)

言わずと知れたソロでミリオンヒットを記録し、シンガーとしてのASKAを多くの世代に知らしめた曲。間奏では自然と拍手が起きる。自分的にはライブで一番聴いた曲かも(この曲か「SAY YES」かどちらかかな…)誰しもが歌の世界に入っていく、美しいメロディーと歌詞、色あせることない名曲。復帰後はサビの歌い方が原曲の「はーじまりはいつも雨」に戻ってくれたのが嬉しい

⑧「good time」(2000年・ソロ:SG「good time」収録)

前回のツアーで当初はセットリストに入っていたが、流れの中でセットリストから外れた曲。とはいえASKAの中ではきっと歌いたい楽曲なんだろうと思われる。決してヒットしたとは言えないがASKAらしい楽曲で、のちのチャゲアスの楽曲「Man and Woman」でも歌われている「前世・輪廻」がテーマとなっている。

MC・以前のツアーのMCでも語られた事。音楽活動を続けていく上で忘れられない光景を歌われた曲へと

⑨「帰宅」(1997年・ソロ:AL「ONE」収録)

明け方に見た光景。この曲を歌う時ASKAには当時見た光景がしっかりと蘇り、歌を通して同じ景色が観客にも届く、シンプルな音を通して伝わってくる歌の持つ力を感じられる。

⑩「RED HILL」(1993年・C&A:AL「RED HILL」収録)

社会現象となっていたチャゲアス。「YAH YAH YAH」が2枚目のダブルミリオンを記録し、『「やっぱこいつらすげえよ」って言わせたいんだ そのためのアルバムだと思われてもかまわない』というアルバム「RED HILL」のタイトルチューン。頂点にいるからこその危うさ、「赤」という色に潜む温かさと危険さ。。その後いろいろなことを経て歌うから歌に説得力が増して、凄まじいまでの歌力を感じた。

⑪「歌になりたい」(2019年・ソロ:SG「歌になりたい」収録)

昨年10年ぶりにリリースされたシングル。「歌になりたい」自分がやってきた音楽への迷い無き宣言。この曲が歌われている時のライブ空間はまさに宇宙・生命に包まれているような錯覚を覚える。スマホのライトに照らされた幻想的な演出もこの曲にはぴったり。ASKAの長い音楽生活の一つの到達点であり、これからのASKAの音楽活動の方向性を示唆する曲。

メンバー紹介・質問タイム

このときのASKAは本当にリラックスしてる。本当に楽しそう。今のASKAの音楽活動が充実し、「Fellows」という仲間たちを近くに感じられるからこそ、生まれる空気・空間なのではないか。MCの尺もある程度決まっていて、何を話すかも基本的には決められているライブの中で、この時間は、客席を巻き込むことで本当に自由な(自由過ぎる)時間となっているし、それができるのが今のASKAの強みなんだろうなと。。まあ、そんな小難しい事を考えるまでもなく、本当に客席も楽しめる時間。(渋谷では公演後のSNSで賛否が巻き起こるような場面もあったけど、それを受けてASKAさんがブログでコメントをしている。本当に「Fellows」なんだなと思った)

※余談だが、以前チャゲアスのツアー(確かnot at allTOUR)でも質問コーナーがあった。その時、軽い骨折をして、ギプスを付けた腕を上げていたら「じゃあ、腕に白いバンダナを付けてる人の並びの人!」と言われて、「指されなかったけど、一瞬認識された!」と喜んだものです。ASKAさん、あれはバンダナではなく、ギプスでしたよ!!

ここからは後半戦へ

⑫「you&me」(with SHUUBI)(1995年・ソロ:AL「NEVER END」収録)

コーラスのSHUUBIとのデュエット。昨年のSHUUBIの20周年記念ライブで歌われ、その再現を・・・と紹介されて歌われた曲。ASKAのライブとして、SHUUBIとのデュエットは「MY Game is ASKA TOUR」以来。「もしも君が別れの手紙を書くときは 真っ白な紙に白い文字で読めないように 気づかぬように」この歌詞はASKAにしか書けないよな。。。SCENEⅡ収録の「Love is alive」が大人の恋愛を歌ったデュエットソングだとしたら、この曲はもっと若い二人のピュアな恋愛を歌っている曲。原曲のデュエット相手がデビュー前の黒田有紀で、彼女の年代(当時20代前半)の等身大の恋愛のような歌詞。向かい合い歌うASKAとSHUUBIの空気感がとてもあたたかく感じた。

⑬「HEART」(1994年・C&A:SG「HEART/NATURAL/On Your Mark」収録)

静かな歌い出しで始まったが、客席が総立ちに。チャゲアスの15周年シングルとしてミリオンセラーを記録した曲だが、ライブではセットリストに組み込まれることの少ない曲。実際にライブで聴いたのは2006年の「Point Green Live」以来。ある意味では「YAH YAH YAH」よりも「チャゲアス」を意識させる曲で、当時のマイクスタンドを回すパフォーマンスも再現された。盛り上がりではこの日のライブの一つの山場、そしてここから一気に加速していく・・・

⑭「百花繚乱」(2020年・ソロ新曲:AL「Breath of Bless」収録)

「HEART」の盛り上がりを受け、披露された新曲。3月発売のニューアルバム「Breath of Bless」に収録される本曲は、ASKAのロック魂がさく裂した曲。アルバムへの期待値が一気に上がった曲。

⑮「higher ground」(1999年・C&A:AL「no doubt」収録)

今ツアーのタイトルにもなっている曲。1999年当時で電子・ネット社会への警鐘を鳴らしていたのだから、ASKAの先を見る目の確かさよ。この時代に歌われることで、よりリアルさを伴う。ある意味この意味を歌いたい為のツアータイトルだったのではないかとも思ってしまう。

⑯「青春の鼓動」(1996年・C&A:AL「Code Name.2 Sister Moon」収録)

会場の空気がガラッと変わり一気に明るくなった。リリース後「電光石火」そして「two-five」というチャゲアスの2つのツアーでしか、歌われていないにもかかわらず(もちろんソロでは初!)「ライブ」のイメージの強い曲。それだけライブ映えするのであろう。誰もが過ごしていた「青春」その頃の景色が目の前に浮かび、自然と笑顔になる。会場が完全にあたたまった所で、今のASKAのキラーチューンへ・・・

⑰「今がいちばんいい」(2017年・ソロ:AL「Black&White」収録)

復帰後のツアーでASKAが一番伝えたいこと、それがそのまま曲になっている。リリース当時は「今がいちばんいい」って言われても。。。と思ったが、ツアーで歌われるのを聞き、歌っているASKAの生き生きとした姿を見て、この曲に乗るだけの強い信念のもとに生まれた曲だと思うようになった。この曲で前に出てきて並んだコーラスの一木さんとSHUUBIも楽しそう。並んで歌う時に、テンション上がってお客さんとハイタッチしていてなかなか戻らないSHUUBIを呼ぶASKA。そんな場面がとても微笑ましかった。会場が一つになり、ライブで歌われるたびに成長している曲。

MC・本編最後のMCからあの曲へ。。。

⑱「Be free」(2017年・ソロ:AL「Too many people」収録)

ファンの間では賛否ある曲。あの当時TUG OF C&Aに入っていた人には、ある意味でのトラウマ曲。自分の中でもイマイチ受け入れられないところがあるのも事実。ただASKAの事だからファンの間でそういう思いがあるのも、知った上での選曲なんだろうな。。そして、その曲を堂々と歌えるのが今のASKA。ライブで聴くと詞やメロディーの美しさを再認識できる。

⑲「We Love Music」(2020年・ソロ新曲:AL「Breath of Bless」収録)

オープニングで導入として歌われた「We Love Music」。ASKAにとって人生は音楽そのもの。歌い続けていくことでASKAがASKAとして生きていける。表立った音楽活動ができない時期があったからこそ、音楽を届けられる喜びに満ちている今があるそんな思いが「We Love Music」。この曲が歌われている時の会場は本当に幸せに包まれていた

アンコール

①「一度きりの笑顔」(2017年・ソロ:AL「Black&White」収録)

アルバム「Black&White」のシークレットトラックとして収録された本曲。ロンドンで見た忘れられない光景。たった一度だけ見た老婆の笑顔。写真で切り取ったような景色が浮かぶ楽曲。シンプルな音で届けられることで、楽曲の中の映像が鮮明に浮かぶという点では本編で歌われた「帰宅」にも通じている。

②「PRIDE」(1989年・C&A:AL「PRIDE」収録)

言わずと知れたチャゲアスの代表曲。この曲がファンの中でどれだけ愛されていて、どれだけ大切な曲であるか。それを「チャゲアス脱退」をしたこのタイミングで歌う事。あのイントロが鳴った時に嬉しさと共に複雑な感情が生まれたが、それを全て吹き飛ばすASKAの歌の持つ力。今回のASKAの歌声は、おそらく今世紀に入ってから、もっとも状態が良かっただろう。チャゲアスのライブを初めて見た頃にタイムスリップさせてくれる力強い歌声。その歌声があったから、いないはずの、聴こえないはずの「あの声」がしっかりと蘇る。感情が追い付かなくなり、音楽の魔法にかけられる。そして最後の最後で音楽の奇跡に遭遇する。

③「BIG TREE」(1991年・C&A:AL「TREE」収録)

もうライブで聞くことができないと思っていた曲。「SAY YES」のメガヒットを受けてリリースされたアルバム「TREE」の核となる曲で、ファンの人気が高いにもかかわらず、ライブではあまり歌われることがなく、国内では「SAY YES TOUR」とそれに続く「BIG TREE TOUR」、そして2003年の札幌のカウントダウンライブで歌われた以降は、歌われることのなかった曲。「PRIDE」がソロでも歌われ続けていたが、この曲はソロでは歌われたことがなかった。もう2度とライブで歌われることはないのではないかと思っていた。。。イントロが鳴った瞬間、約30年の時間を遡り、初めて行ったチャゲアスのライブで歌われたあの日の「BIG TREE」が蘇ってきた。そして、まさに当時を彷彿とさせる歌声、声量、、、気付けば涙が止まらなくなっていた。。音楽の素晴らしさにただただ身を委ね、「あの日」と「今」をただただ行き来する、そんな奇跡のような時間だった。。

音と歌声であれだけのスケール感を生み出す、ASKAという音楽の伝道師、その生き様・決意をまざまざと見せつけられた。

今回の公演で、披露されたチャゲアスの楽曲は8曲。「HEART」や「青春の鼓動」ではいないはずの「あいつ」が見えるパフォーマンス、「PRIDE」~「BIG TREE」では会場の全ての人に「あいつ」の声が聞こえたのではないかという錯覚を覚えるくらいASKAの「CHAGE and ASKA」に対する深い愛情を感じた。「憲兵も王様も居ない城」を先に飛び出したASKA。今後どうなるかは分からないが、これだけの愛情を見せられたら、期待してしまうよね。。。

ソロ楽曲は新曲も含めて14曲、今伝えたいこと・今歌いたい歌が並んでいた。ソロシンガーとしてのASKAの底力を、十二分に堪能させてもらった贅沢な時間だった。

復帰後の3つのツアーで、ASKAの音楽人生を総括したような形に思える。それゆえにリリース日が迫ってきた、ニューアルバム「Breath of Bless」、そしてそれに続く今秋から予定されているツアーで「更なる高み」に達した上で、進化を止めないASKA、その音楽に触れて、何物にも代えがたい感動をまた味わえることに期待したい。

2020・3・4


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