【前編】「前期中間テスト」アーセナル×リヴァプール マッチレポート

 皆さんこんにちは、TDKです。
 ついにこの日がやって来ました。大きな試金石であるリヴァプール戦。ビルドアップ主体の我が軍との相性は最悪であるとも予想されていました。ここで一体何を見せられるのか、ここまでとこれからの道のりがある程度見えてくるのではないか。そんな風に考えていました。非常に楽しみでもあり、怖くもある。正直今シーズン一番緊張しながら試合を迎えました。
 ・・・と書こうと思えば前書きだけで一本の記事になりそうなレベルです。さすがに進みます。

◎スタメン確認

 まずはアーセナルから。陣形はいつもの4-2-3-1。両SBには本職が間に合いました。特に左SBがジャカなんてことになっていたら、恐らく試合は始まる前に終わっていたでしょう。そして最近思わず褒めたくなっちゃうベジェリンも大丈夫。覚悟は出来ていただけに、非常に喜ばしい復帰でした。それに伴い中盤もべストな構成。ゲンドゥージは出場停止であるため、これ以外に選択肢はなかったのですが。そして、前線ではいわゆるLMAOが揃い踏み。ムヒタリアンとイウォビでスタメン選択を迷ったであろうエメリさん。右でのイウォビがイマイチであること、途中で流れを変えられるカードをベンチに置いておきたかったという理由でムヒタリアンをチョイスしたと予想しました。

 次に、リヴァプールにも触れておきましょう。中盤に怪我人が増えているリヴァプールはヘンダーソンとケイタが欠場。それに伴い、アンカーの位置にはファビーニョが入りました。このように、ヘンダーソン不在時のアンカーは現状ファビーニョしかいません。彼の出来は相当大事なのではないでしょうか。それ以外には特に突っ込むことはありません。最終ラインと前線はいつものメンバー。堅く速く襲い掛かってくることが容易に予想されました。

◎試合開始~15分「勉強の成果」

 試合開始。ここまで総じて立ち上がり、何なら前半丸っとイマイチなアーセナル。この試合で以前と同じようなテンションを引きずると、前半で試合が終わってしまうなんてことになりかねません。しかし、そんな心配はどこ吹く風。今季ダントツで素晴らしい入りを見せます。
 開始早々いきなりオーバメヤンがアーノルドからボールを奪うなど、果敢な姿勢を見せるアーセナル。恐らく世界一苛烈であろうハイプレッシングを信条とするリヴァプール相手に、真正面から勝負を挑みます。そう、ビルドアップです。ザックリと簡略化したビルドアップ図は以下の通り。

 このシーンは仮にレノからホールディングにパスを出したと仮定しています。アーセナルはバックライン+ボランチで丁寧にボールを前進させていました。ジャカとトレイラはCFとWGの間に位置し、さらにコラシナクとベジェリンでWGを挟みます。こうすることで、相手3枚の守備基準設定を難しくしていました。さらにレノが配球に苦労しないため、アーセナルのビルドアップ経路を全て遮断することは不可能だったのではないでしょうか。こうしてある程度まで前進したら前線がサポートに降りて、ジャカやトレイラが縦につけてビルドアップは完了。上手く回っていました。

 ・・・と言うは易しとなるのが本来のリヴァプールだと思います。そんな綿密な意図をも破壊するようなプレッシングを持ち合わせているはずでした。上の図でも、中盤3枚まで激しく出てきたら話は変わりますし。どうもいつものやり方ではなかったような気がしました。この日に備えてリヴァプールの試合は優先的に見ていたのですが、そんな風に感じました。私だったら立ち上がりに不安を抱えるアーセナルを飲み込んでしまおうと考えるのですが、その辺りはどうだったのでしょうか。これまでのような馬鹿試合化を防ごうと考えたのかもしれませんね。

 そろそろ試合に戻りましょう。アーセナルは個々にスポットを当てても素晴らしい点がいくつもありました。特にこの試合のジャカは鬼神そのもの。圧倒的な存在感で、中盤の王として君臨します。体躯の頑健さに球威と精度を併せ持った配球、さらにはエジルをも彷彿とさせるような視野の広さまでありました。恐らく加入後ベストのパフォーマンスの1つ。今後もこの調子が継続するようであれば、アーセナルの両ボランチはリーグ最強クラスです。また、今季中々調子が上がらないムヒタリアンも、ロバートソンに自由を与えないというタスクを懸命に遂行していました。特にオーバーラップにはしっかりと付いていき、ピンチの芽を摘み取ります。
 などなど、褒めようと思えば全員を褒められるような時間帯でした。キリがないので、このあたりにしておきます(笑)

 一方有効な速攻を繰り出せずにいるリヴァプールは、攻める際には遅攻からの展開が多めの時間帯に。アーセナルの4-4-2守備に対して最終ラインに誰かしら3枚を置くオーソドックスな形。そこからラフに裏を狙って、最悪相手ボールでも良しとしていた印象でした。アーセナルのポゼッションを掻っ攫うのが本来の形であったためそこを作りたかったのでしょうが、立ち上がりのアーセナルは攻守の切り替えが冴えていました。素早く高い位置で囲んで、速攻に抗います。これが功を奏していました。長くなりましたが、とにかく大健闘の開始15分でした。

◎15分~30分「時に難問にぶち当たったり」

 アーセナルが支配して迎えたこの時間、一気に試合がざわつきます。まずは15分、ムヒタリアンに決定機。オーバメヤンのクロスに対するアリソンの判断が遅れ、枠に飛んだ時点でゴールになっていたヘディングシュートでした。ボールウォッチャーになっていた相手最終ラインの背後を巧みに取ったムヒタリアンの動き出しが素晴らしかったです。この勢いで先制したいアーセナルですが、するとリヴァプールにも立て続けに決定機が。まずはアーノルドのクロスにフィルミーノとマネが飛び出したシーン。オフサイドに救われましたが。正直どちらに判定されてもおかしくなかったと思います。その後にはコーナーキックの流れで前線に残っていたファンダイクがレノと1対1。これも致命的でした。こうして、次第に両チームにチャンスが訪れるようになり、「らしい」雰囲気になってきました。
 アーセナルとしてはファビーニョ周辺が狙い所だったかな、と思います。孤立気味でしたし、あまり試合に入れていなかったのではないでしょうか。

 さて、ここまで見ていて思った点を1つ。この試合のアーセナルは、いわゆる「ロブパス」を効果的に利用していたと思います。また略図のご登場願いましょう。いでよ!

 これほど明確なシーンがあったかは怪しいですが(笑)、こんな風に外を切りながらビルドアップの選択肢を絞るのはリヴァプールの常套手段。中央もフリーにさせてもらえず、グラウンダーで繋ぐのは困難な状況です。そんな時にレノは軽く浮き球を蹴り、サラーやマネの頭上を越すような配球を見せました。受け手は、図のようにSBであったり両ボランチであったり。決してエデルソンほどの驚異的なパスレンジはありませんが、このように近~中距離のロブパスは何度か見られました。レノの他にもジャカやムスタフィにも同様のシーンが見られましたし、チームとしてある程度共通認識を持っていたのではないかと推測します。

◎30分~前半終了「結構解ける・・・!」

 依然としてビルドアップからスムーズに攻撃に移るアーセナルと、迎撃して隙を狙うリヴァプールという構図。無理に全て繋ぐのではなく、蹴った方が良い場面はきちんと蹴ってくれていました。安心感。基本的には即時奪回を狙うアーセナルですが、セットディフェンスではラカゼットとムヒタリアンが頑張っていました。それぞれファンダイクとロバートソンにアタックを仕掛け、逆サイドへ逃げるボールをオーバメヤンとエジルが狙っていました。
 39分50秒には、セットプレーからラカゼットがゴールネットを揺らすもオフサイドの判定。工夫したリスタートから、大外のムスタフィがワイナルドゥムに競り勝って折り返しました。恐らく計算されたプレー。前半にもコーナーからトリックプレーがありましたし、色々考えていたんだなぁと思いました。(ボキャ貧)
 ちなみにセットプレーは終始リヴァプールの方が脅威を与えていました。前半終了間際にも、ファンダイクが競り勝ったボールがポストによって防がれました。こうして前半は終了。双方に決定機が訪れるもスコアは動かず。見るもの全てを魅了するような、そんな戦いでした。後半も楽しみです。

 さて、ここでも前半気になった点について。こちらをどうぞ。

 イメージとしてはビルドアップの入り口を突破した後の図。左右それぞれがこの3人で崩しを狙っていました。ここで中盤3人を引き付けられると、生まれたスペースにボランチが顔を出すというような仕組みです。場合によっては最初からボランチが加わった四角形になっていることもありました。この試合に関しては、これまで見られたようなビルドアップ後における「左右不均等」は、あまり感じませんでした。こうしてボールと相手を動かして、得意のチャンネル進入に繋げることが目的だったのでしょう。実際、そこを突いたシーンはいくつかありました。バランスの良い攻めでした。

 ここらで一回区切りましょうか。長くなってしまいます(笑) 後編もよろしくお願いします!

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