アルテタアーセナルの通信簿

皆さんごきげんよう、TDKです。
さて、アーセナルがペップ・シティの正統後継者として名乗りを挙げてからしばらくが経ちました。アルテタのやりたいフットボールやそこにおける選手達の働きも概ね見えてきたといったところでしょうか。そこで今回は、選手個人個人への評価を中心に、短期間に関してではありますがアルテタアーセナルについておさらいしていきましょう。これからアーセナルを見たい!今気になっているんだよね!という方が読むと。チームの概観が知れて良いかもしれませんね。

※今回は文章のみで構成されております。故にお見苦しいこともあるかとは思いますが、どうか温かい目で見守ってやってください。

◎選手個評

さっそく内容に入っていきます。まずは選手についての評価から。ざっくりと5段階で評価し、拙文ながら評価も併記していきます。

1 ベルント・レノ
評価 S

トップバッターは文字通り『守護神』と化したこの選手から。文句無しのS評価でしょう。エメリ・リュングベリ時代からその貢献度は計り知れず、それは今もなお変わらず。11人目のフィールドプレイヤーという昨今のトレンドからは外れているかもしれませんが、圧巻のショットストップはチームの要です。彼が必死で繋ぎ止めた勝ち点1に笑う日が来ることを、切に願います。

26 エミリアーノ・マルティネス
評価 B

カップ戦においてレノの負担軽減に大きく貢献しているマルティネス。目立ったミスもなく、安定したセービングを披露してくれています。もっとも、レノの壁が高いことは紛れもない事実であり、リーグ戦でのレギュラー獲得は現実的に厳しい状況。それでも彼は、ローン移籍を経てもなおアーセナル愛を持ってチームに貢献し続けています。こういった選手は大切にしたいですね。トレイラの夫です。

2 エクトル・ベジェリン
評価 C

悪夢の長期離脱から復帰し、徐々に稼働率も高まってきたベジェリン。しかし、そのパフォーマンスは本調子からは程遠いと言わざるを得ません。攻守に判断の怪しさが目立ち、パワー系WGに手を焼く場面も少なくないです。まだまだ思うように身体が動かないもどかしさもあるのだと思います。元々フットボールIQは決して低くない選手。アルテタの要求に応えるだけの資質は備わっています。新体制における顕著なパフォーマンスの改善は、皆さんも見てきた通りです。復調に期待しましょう。

5 ソクラティス・パパスタソプーロス
評価 B

昨季からアーセナルの最終ラインを支えてきたギリシアの門番。アルテタ体制下では徐々に序列が低下中です。決して彼自身に大きな落ち度があるというわけではないのですが、後方からの組み立てという点で弱さを見せることが現状の理由説明でしょう。それでも意外と機敏なカバーリングや闘魂を注入する熱さは健在なので、重要な戦力であることには変わらず。これからも相手CFを跪かせるパワーディフェンスに期待です。

16 ロブ・ホールディング
評価 D

彼もまた、大怪我からの復活を期すシーズンを送っています。しかし、ベジェリンと同様に復調に悪戦苦闘している印象が拭えません。昨季は安定した守りと組み立ててエメリアーセナル絶頂期の象徴的存在でありました。それだけに、現状が歯がゆい人は少なくないはず。もちろん自分もその一人で、それがこの評価の理由でもあります。貴重なHG選手で足元も器用なタイプなので、これからのアルテタアーセナルに必要な人材であることに疑いはありません。きっとまた輝ける。きっかけ1つだと思います。

20 シュコドラン・ムスタフィ
評価 A

『陽気な不死鳥』ことムスタフィ。堂々のカムバックです。彼のキャリアに関しては説明不要でしょう。チーム内外から放出候補筆頭という評価を受けていたシーズン前。今の姿を想像することは正直困難でした。致命的なミスを繰り返し、失った信頼。それを彼は自分自身の手で取り戻して見せました。自信が備わり格段に安定した組み立て、果敢なチャレンジングディフェンスに加え、エリア内では全てを跳ね返す壁となります。相方のルイスと共に、まさにチームを底から上げていく存在。不屈の象徴として、多くの選手やサポーターに勇気を与えてくれました。本当に恐れ入りました。

23 ダビド・ルイス
評価 S

前述のムスタフィと鉄板のCBを形成するルイス。前体制から引き続き、チームに欠かせない存在として君臨しています。CBとしては別格のパスセンスを備え、特に高い精度を誇るロングボールはチーム全体を一気に押し上げる必殺の飛び道具です。プレイのムラが大きく集中の欠如が顔を覗かせることもあった今季ですが、アルテタ政権下ではそれが一掃されました。従って、単純にスーパーなCBになりましたとさ。めでたしめでたし。

31 セアド・コラシナク
評価 C

バルカン半島が生んだ重戦車、装甲の脆さが痛すぎます。離脱中にサカが存在感を高めたため、非常に難しい位置に立たされることに。ティアニーの加入に触発されたのか、今季は攻守に渡ってエネルギッシュな姿も見せてくれました。しかし、度重なる負傷が一貫性を損なうという状況が続いています。大きな勝利を手にしたエヴァートン戦でも、致命的なミスと早い時間帯での負傷交代という悪夢に見舞われました。復権を期待しています。

8 ダニ・セバジョス
評価 B

前体制下では好不調の波が激しく、イマイチ乗り切れていない様子だったセバジョス。圧倒的だった買取論も、徐々に下火になっていました。そして、アルテタから練習態度について注文がありました。ここからどうなるのだろうかと、正直ドキドキしていました。ところがどっこい、見事に要求に応え、より深い位置でのオーガナイザーとして帰ってきました。まだまたリスキーなプレイ選択や危うい飛び込みが見られるものの、攻撃時の貢献度は中々の物があります。右に左にボールを散らし、時には巧みなドリブルから攻め上がってみせます。これから更に評価が上がる可能性が高い選手と言えるでしょう。

10 メスト・エジル
評価 S

ここには書ききれないくらい、色々あって色々言われたエジル。復活しましたよ、ええ。涙で前が見えませんね。チーム全体が再整備され、周囲と支え合えるという彼が本来の力を発揮できる環境が完成しました。職人芸とも言える間受けからチームを前進させ、ファイナルサードにおける指揮者として力強くタクトを振るいます。懸念されていたハードワークも、難なくこなせる水準に達したように思われます。無駄走りが減り、結果として守備時に割けるリソースが確保できるようになったといったところでしょうか。まだまだ目に見える数字が伴わないですが、それは些細な問題でしょう。エジル自身も、チームとして結果が出れば満足なのではないでしょうか。最近は笑顔が増えてきて、心身の充実具合が窺い知れます。

11 ルーカス・トレイラ
評価 B

センセーショナルな1年目を経て、今季は迷走気味だったトレイラ。アルテタ政権下では再び本来のポジションに戻り、輝きを取り戻しました。粘り強く何者にも屈しない守備で、前掛かりなチームを支えます。特に攻守のバランスが求められる強豪との試合では、これからも重宝されるでしょう。ただ、セバジョスが新たな立ち位置を確立したことで彼のポジションも安泰とは言えなくなりました。もちろん全くタイプの違う両者なので、使い分けられるのは大歓迎です。今後も切磋琢磨で更なる高みへ。

15 アインズリー・メイトランド=ナイルズ
評価 B

登録ポジションの関係でここに書きますが、今季もSBとして厳しい台所事情を支えるナイルズ。現体制初期には『ついにアーセナルにも偽SBの風が吹いたぞ』とサポーターを歓喜の渦に包みました。元来中盤の選手であるという偽SBにとって最高の肩書であることから、一気にレギュラー奪取が見えていました。ただし、最近はベンチから外れることもしばしば。ベジェリンが本調子ではないため、万全ならナイルズの起用に躊躇いはない状況。これがなければ、評価はSかAだったと思います。何か秘密の特訓でもしている最中なのでしょうか。楽しみに待ちましょう。

28 ジョー・ウィロック
評価 C

今を時めくアーセナルの若手たち。ウィロックもコンスタントに出場機会を得ています。しなやかな身のこなしで攻守を繋ぐピースとして期待されているものの、中々あと1つ殻が破れない状況です。恐らくは判断スピードの部分。持ちすぎることがしばしば見られます。本当ならエジルを休ませる際のトップ下を務められるようになってほしいのですが、今のところは若干役者不足でしょうか。ただ、彼もまた少しのきっかけで爆発しそうな選手の1人。そういう刺激を与えるのは、アルテタの得意技。ばちこりしごかれて大きくなってもらいましょう。

29 マッテオ・ゲンドゥージ
評価 C

燃えるアフロがパリをも照らすゲンドゥージ。一時期掴みつつあったレギュラーの座が遠ざかっています。最近もドバイでの短期キャンプにてアルテタやチームメイトと衝突した模様で、フラストレーションが溜まっているのが伝わってきます。課題もポテンシャルも特大という、指導し甲斐のある選手。良くも悪くも大きく変わり得る存在です。それだけに、今この時が彼にとって重要な転換点と言えるでしょう。足りないのはTPOの理解とリスク管理の部分でしょうか。いずれも戦術的なトレーニングで補える部分。アルテタとがっぷりよつで精進していってもらいたいですね。

34 グラニト・ジャカ
評価 S

濃厚な1年を過ごすジャカ。紆余曲折を経て、絶対の地位を確立しました。サポーターとの衝突、監督からの譴責、主将の剥奪。アーセナルにおける彼のキャリアは閉ざされつつあったと言っても過言ではありません。しかし、アルテタとの対話の後に復活。更に上のステージに行ってみせたのだから驚きです。プレイのムラが大きく改善され、義務とまで言われていた試合中のミスも無くなりつつあります。そうなってしまえば彼は敵無しです。長短自在のパスで、相手を置き去りにしていく。圧巻のゲームメイカーとして、試合を支配します。替えの利かない大黒柱、まだまだ化ける可能性を秘めています。

9 アレクサンドル・ラカゼット
評価 B

上手くいかないチームにおいても、前線から必死にチームを引っ張ってきた苦労人。得点という意味では長いスランプに苦しめられたものの、それも終わりを告げました。思わず溜息が漏れるようなハードワークは、攻守一体を掲げるチームに欠かせないもの。Bという評価は悩ましい部分がありましたが、FWとして得点に恵まれなかったことを考慮した形です。心の中ではA評価。その苦労、ここから報われ続けるターン。

14 ピエール=エメリク・オーバメヤン
評価 S

瞬く間にリーグ戦得点王に躍り出たオーバメヤン。今も昔もチーム最高の得点源として奮戦。いつ何時いかなる試合展開でも得点を生み出すことができる『本物』です。それに加え、ジャカから託されたアームバンドに報いるかのようなハードワークを披露中。試合終盤には躊躇うことなく守備に加勢します。得点だけと言われていたのも今は昔、立派なチームのマストパーツです。ぺぺとのホットラインも強力無比で、そこにラカゼットを交えた連携には大きな期待感があります。契約延長してくださいお願いします何でもしますから!

19 二コラ・ぺぺ
評価 A

シーズン当初はその期待の大きさから、失望の声も少なくなかったぺぺ。事実、チームへのフィットには時間を要しました。しかし、それも既に完了した話。アルテタ政権下では見違えるようなパフォーマンスを発揮中。エメリ政権時からその兆候はあったものの、不安視されていた献身性に顕著な改善が見られます。持ち前のドリブルスキルも健在で、加えてコンビネーションが形成されたのが非常に大きいです。チーム全体の距離感が整い孤立するシーンが減り、その結果として危険な位置での出し手側にも回れるようになりました。目に見えて得点とアシストが増加している真っ最中で、プレミア初挑戦のWGとしては上々の成長曲線を描いていると言っていいでしょう。

24 リース・ネルソン
評価 C

修行帰りの若武者、レギュラーを狙って奮闘する日々が続いています。ただ、WGはチーム史上かつてないほど(多分)充実しているため、出場機会を得るだけでも四苦八苦。鋭い得点への嗅覚を備えているものの、やや自信を喪失しているように見受けられます。現状はリーグ戦の控えやカップ戦での先発に留まることになりそうですが、結果次第で序列を覆す可能性は秘めています。頑張るんだ。

30 エディー・エンケティア
評価 B

ここに来て一気に存在感を増しつつあるエンケティア。いよいよ結果が出始めました。ラカゼットをも凌駕し得る献身性を持ち、フィニッシュの局面では冷静なポジショニングから相手の急所に潜り込みます。リーグ戦先発という大役に当初は尻込みする様子も見られましたが、エヴァートン戦では堂々のパフォーマンスを披露。『オバラカ』を脅かす存在がまた1人、頭角を現しました。近い将来直面する世代交代、彼が次世代のCFでしょう。確信を持ってそう言えます。

35 ガブリエル・マルティネッリ
評価 A

ブラジル4部からやってきた青年は、今やベンチ外で驚かれるような存在になりました。精力的なプレッシングと若さを感じさせないフィニッシュで、選手層に大きな厚みをもたらしてくれます。今は左サイドが主戦場で、右サイドでのプレイには課題を残しています。充実のWG陣において更なる出番を得るには、こういった部分の改善が必要でしょう。もっとも、これは高い次元の要求。彼のポテンシャルを信じているが故。稲妻のようにエミレーツの空を駆ける神童の今後に期待。

77 ブカヨ・サカ
評価 S

気が付けばすっかり左SBが板に付いた感のあるサカ、堂々のS評価でしょう。チーム最多のアシスト数は早くも10に到達し、SBとしては破格の攻撃性能を誇ります。ティアニーとコラシナクが空けた大穴、埋め合わせて余りある奮闘っぷりです。2-3-5のフロント5として、左大外を支配。守備でも良い意味で目立ちません。これが18歳ですってよ、奥さん。信じられませんね。こうなってくると悩ましいのは彼の未来。どこで育てればいいんだ…と。こんなに嬉しい悩みも滅多にありませんが。もっとも、今季はこのまま左SBとして戦うことになるでしょう。その数字をどこまで伸ばしていくのか、目が離せません。

◎チームとして

『なげぇよ!』『いい加減終われよ!』という声が多く寄せられています。すみません、もうすぐです。
アルテタアーセナルの大テーマは間違いなく『攻守一体』。その一環として、アルテタは真っ先に守備の整理に着手しました。プレッシングの連動性と守備ブロックの練度を高め、適切な距離感を実現。まだまだ未完成ではあるものの、失点数は減少傾向。与えられた時間の短さを思えば、これからの更なる進展は間違いないと思われます。
また、攻撃面でも距離感と配置を重要視。ペップ仕込みの2-3-5を基調としつつ、相手の出方に応じて後方の配置を調整している様子。また、それらはSBやCMの特性とリンクするため、様々な事情に考慮しつつ最適な配置を探っています。後方の整備がもたらすものは、エジルの解放でした。わざわざ彼が深い位置に降りるまでもなくボールが前進できるようになったことで、本来の輝きが戻ってきました。そうすれば必然的に、前方の質も向上する。後ろも整っているので、カウンターにも強くなれる。とにかく人海戦術でしか押し込めなかったギャンブルチームが、合理性をもって試合を進めています。とは言え、まだまだチャンスの数が十分ではないでしょう。これはアルテタ自身も思っていることなのではないでしょうか。再現性のある崩しが増え始めたら、それが完成の合図。最小リスクで最大リターン、これが攻守一体の到達点です。こうなってしまえば、我々は再び優勝を争うようになりますよ。今はその道のりにあるわけで、そんな歴史の転換点に居合わせることができて私は幸せです。

ふぅ。これで終わります。2時間で6500文字。学生時代のレポートもこれくらいの勢いで書けたらどれほど楽だったか。ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。それではまた!

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?