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【KANさんへ】KAN「弾き語りばったり #19 今ここでエンジンさえ掛かれば」(2016)

天才、KANが亡くなられた。私にとってはOne-Hit Wonder「愛は勝つ」の人のイメージ、なのにミュージシャンズ・ミュージシャン…、きっと何かあると思いつつ、亡くなられるまで気付けなかった。ミスチルの桜井さんやaiko、山崎まさよしやASKA、スタレビ根本さん…、秦基博さん、本当に多くの素敵なミュージシャンと共演し、誰からもリスペクトされていた。

そんなKANさんの姿を根本さんがお悔みのお言葉として綴っておられます。恐らくそういった方だったのだろうと思わせるその素敵なお言葉を引用させて頂きます。

「KANちゃんの音楽は誰もが認めるように本当に素晴らしい。だけど俺は、君の人柄も音楽と同じくらい世の中に知れ渡ってほしかったなぁ。平和を、人間そのものを愛してた。有名無名、偉い偉くないに関係なく、どんな人とも平等に接する人だった。『世界で一番好きな人』の歌詞にある、

”遠くで起きてる戦争はいつ終わるのかわからない。せめてぼくらは、ずっとお互いを許しあい生きよう。僕は誰とも争わないし、誰を憎む根拠もない”。

本当にそう思う。でもね、そんな大切なことを、素敵なメロディに乗せてサラっと歌える人はKANちゃんしかいなかったんだよ。」

スターダスト・レビューの根本さんの追悼コメント

One-Hit WonderなイメージのKANさんでしたが、ある曲をきっかけに、ここ数日、彼の曲ばかり聴いてます。

KANは2016年、弾き語りツアーでライヴレコ―ディングした5公演から、厳選した音源をアルバムとして発表しております。繊細な楽曲とは全く正反対のイメージのジャケット。これもKAN流の裏切りなのでしょうか。

ジャケット買いすると絶対に失敗するアルバム(笑)

根本要さんが歌詞を引用された楽曲、①「世界で一番好きな人」はアルバムトップに収録されております。その引用された歌詞は後半に登場します。

弾き語りなのでバラード中心かと思いきや、ちょっとコミカルな⑤「ひざまくら~うれしい こりゃいい やわらかい~」はKAN流お酒ソング(笑)。
男は誰もがそう思うもの。そんな歌詞です。KANはビリー・ジョエルに憧れて、ミュージシャンを目指した方ですが、この曲はそんなビリーっぽいストーリーテラーのKANの真髄を感じさせます。ちなみにこのアルバムにはビリーのカバー「Laura」(渋い選曲)も収録されてます。

そして私が今更ながらにKANの素晴らしさに気付かされた楽曲が⑩「よければ一緒に」です。
三谷幸喜さんはKANさんのことを「100%ジョークしか言わない人」と仰り「よければ一緒に」を大好きな曲として挙げ、「優しさとか、温かさだとか。それから、ちゃめっ気とか、知性とか。そういうKANさんの全てがその歌に集約されているそんな曲ですね」と語っておりました。
私はちょうどその三谷さんの発言された番組を観ていたので、直ぐにその曲をチェック。冒頭のOne-Hit Wonderな方では決してないということが直ぐに理解出来ました。と、同時に決して押しつけがましい言い方ではなく、あくまでも謙虚に…、そんな人柄が伝わってくるような歌詞にほっこりしてしまいました。
そしてこの歌詞、ラブソングですが、このメッセージ、仕事でも一緒ですね。皆の助けがあって、物事が成し遂げられる。

♪ ぼくがひとりでできることなんてなにもない ♪

♪ よければ一緒に そのほうが楽しい ♪

もちろんこの曲も本作に収録されてますが、同じようなスタイルで演奏されたBank Bandとの共演映像が素晴らしい。小林武史、櫻井和寿、亀田誠治、皆、楽しそうですね。よく聴くと、微妙に転調していたり、アレンジも歌詞も凝っております。
このステージ、KANのコスチュームも爆笑モノだし、あの自転車、最後どうするのかなあと思ったら、想像通りの帰り方(笑)。全てが暖かいユーモアに溢れてます。

当時は「愛は勝つ」よりも⑬「まゆみ」の方がだんぜん好きでしたね。
洋楽フリークだったKANさんらしい楽曲。Tears For Fears、いや後期ビートルズ風なメロディが心地いい。確かサイダーのCMに使われてましたね。

もちろんクリスマスソングも収録されてます。⑭「今年もこうして二人でクリスマスを祝う」、今年のクリスマスはしっとりとこの曲を聴きたいと思います。
KANさんは洋楽が大好きだったようで、かなりその影響が窺えます。例えば「愛は勝つ」はビリー・ジョエルの「Uptown Girl」とか、他にもいろいろありますが、この「今年もこうして二人でクリスマスを祝う」にも海外のクリスマス・ソングのメロディがエンディング以外にもさりげなく挟み込まれてます。とにかくアレンジなんか、随所に拘りを感じさせますね。

KANさん、実は11月3日にサブスク解禁していたんですよね。
フランス修業後、2006年からのアルバムだけですが。そしてその直前、10月には大好きだったそのフランスに奥様と旅行にも出掛けてました。
11月3日のKANさんのXには、サブスク解禁とフランス修業時代の愛らしい自身の写真も…。そして7日、最後の呟きはビートルズの新曲への感想でした。最後の最後まで音楽を愛していたKANさんらしいツィート。

あまりしんみりとした感じで締めるのも、KANさんらしくないので、最後に秦基博さんとのコラボ、如何にもKANさんらしいエピソードを。

それは2021年に発表されたKAN「キセキ」と秦基博「カサナル」。この曲、別々に発表されてますが、実はKANさんが仕組んだコラボ企画。詳細はこちらに書かれてますが、それを公にして一緒の作品にしたものが「カサナルキセキ」。そう重なる奇跡なんです。

発表するに際して謝罪会見まで開いたくだらなさ(笑)。というか恐ろしいくらいに洒落ていて、かつマニアック…。「100%ジョークしか言わない人」の真骨頂。そして音楽を知っている人からすると、そんな変人KANはやはり天才なのでした。

私はあなたが「愛は勝つ」だけではないことに気付くのが遅かったけど、これからあなたの作品から元気を貰っていこうと思ってます。これから宜しくお願いします。そして今まで有難うございました。

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