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The Doobie Brothers「What Were Once Vices Are Now Habits」(1974)

17日にドゥービー・ブラザーズの来日公演、行ってきました。場所は日本武道館。前後にエリック・クラプトンの武道館公演がありましたので、ちょうどクラプトンの休息日に合わせてウドーがブッキングしたんでしょうね。

恐らく多くの方々はトム・ジョンストンとマイケル・マクドナルドが同じステージに立つという状況に感化されて、この公演を見に来られたのではないでしょうか。そして観客の80%はトム派(と勝手に推測)。
この思いは全くの杞憂であったし、「Minute By Minute」でのトムのコーラスなんか、絶品でした。

ガンガン客を煽るトムに、全く動かないマイケル(笑)。写真右がマイケルですが、佇まいはまるでブライアン・ウィルソン。でもブライアンと違うのは、今でも声が凄い通り、太いこと。あの衰え知らずの(いや、多少衰えてましたが)スモーキーヴォイスが聞けたことは嬉しかったです。マイケルは控え目なんですよね。

トムやパット、マイケルの曲をバランスよく配置したセットリストから、メンバーのマイケルに対する一定の配慮.尊敬が感じられました。
敢えてネガティブな感想を申すと、トムとマイケルの曲ではグルーヴが違い過ぎるので、トムの曲でノリまくったと思ったら、「Minute By Minute」のような洒落たノリに急にシフトチェンジしなければならず、トム・ファンからしたら、「マイケルの曲はロック的ノリには合わない」と感じられたのでは。そう、例えば「Real Love」なんかは日本武道館では細かいサウンドの解像度が悪く、やっぱりマイケルの曲は小さいホールが合っていると感じました。

でも素晴らしいコンサートでしたね~。お決まりのアンコールの「Black Water」「Takin' To The Street」「Listen to the Music」も良かった。「Takin' To The Street」はトムとマイケルの良さがブレンドされた唯一の曲(と思ってます)。あのゴスペル曲に一緒にノレて感激でした…。

さて、せっかくなので、以下は2012年に書いた記事ですが、その「Black Water」が収録された名盤ですので、転記しておきます。

(以下転記)
先日はモンキーズのディビーが亡くなり追悼記事を書きましたが、今月12日にはドゥービー・ブラザーズのドラマーだったマイケル・ホサックも亡くなっていたんですね。

マイケル・ホサックはドゥービーの二人目のドラマーで、彼が加入したことで、後のドゥービーのトレードマークにもなったツインドラムの布陣となりました。
でも彼が参加している初期の作品は「Toulouse Street」(1972年)、「The Captain and Me」(1973年)、「What Were Once Vices Are Now Habits」(1974年)の3枚のみ(マイケルは1987年以降のドゥービーには参加してますが)。ちなみにマイケル脱退後、加入したのが矢沢永吉とのコラボでも有名なキース・ヌードセンです。

ドゥービーほど70年代前半と後半でサウンドの違うグループも珍しいでしょう(イーグルスも同様に変化していきましたが、やっぱりドゥービーが筆頭格でしょう)。AOR好きの私としては、個人的にはマイケル・マクドナルド時代のドゥービーが好みなんですが、もちろんトム・ジョンストン擁する初期の豪快なサウンドも結構好きだったりします。そしてマイケル・ホサックはそのトム・ジョンストン時代の豪快なロックを支えるドラマーでした。

ホザック時代の3枚で、日本で一番地味なアルバムは今日ご紹介する「ドゥービー天国(What Were Once Vices Are Now Habits)」かもしれません。

このアルバム、ヒット曲は④「Black Water」のみ。しかもこの「Black Water」って曲は日本では今ひとつ、共感が持たれない楽曲。ドゥービーといったらやっぱり「Listen to the Music」とか「Long Train Runnin'」「China Grove」といった豪快ロックですよね。ですからやっぱり「Black Water」のようなカントリー系フォークはのれない・・・。でも米国人は違います。実はこの曲、ドゥービー初の全米No.1ソングであり、コンサートでも観客はノリノリになります。
アップした映像は当時のスタジオライヴ。パットの可愛らしいヘアスタイルはどうでもいいとして、パットのフォーキーなギターと、ジェフ・バクスターの見事なスティールギター。素晴らしい!
このときのドラムはマイケル・ホサックと思われます。
この曲の歌詞、
 ♪ Old black water, keep on rollin'
   Mississippi moon, won't you keep on shinin' on me ♪
このMississippiを一部ライブ会場の地名で言うのが恒例となっており、ここでもChicagoと言って、拍手喝采を浴びます。またアカペラの部分(映像では3分20秒過ぎ)も異様に盛り上がるんですよね。
(もちろん今回の武道館公演ではTokyoと言ってました)

⑥「Road Angel」はホサックが作曲に加わった豪快なロック。イントロからギターのリフがカッコイイです。
でもこの曲の聴き所は3分前後からのスリリングな間奏。カッティングギターに絡んでくるジョン・ハートマンのコンガ。そしてホサックのドラム・・・。これが初期ドゥービーの魅力ですね。4分過ぎからは短いながらもドラムソロもあります。

私は豪快なトムより、フォーキーなパットの曲の方が好きで、特に⑧「Tell Me What You Want」が大好きです。
恐らくこの地味な曲がイイという人は少数派だと思いますが、この曲、どことなくオーリアンズを思わせます。こうしたのどかなアメリカンロックは米国人好みかもしれません。

以上3曲をご紹介しましたが、このアルバム、実はメンフィスホーンを導入したサザンソウル的な味わいのある作品も収録されており、地味なんですが、結構楽しめます。

マイケル・ホサックは本作制作途中にドゥービーを脱退。ただし1987年以降、再びドゥービーに参加し、晩年を過ごします。ある意味幸せなバンド人生だったのかもしれません。R.I.P.


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