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James Taylor「New Moon Shine」(1991)

2月6日以降、突然私の本家ブログのアクセス数が異常に増えだしたので、またミュージシャンの訃報があったのか…と思ったら吉報でした。一部の方はご存じかもしれませんが、日本では知名度の低いボニー・レイットが、なんとグラミー賞の「年間最優秀楽曲」を受賞しました。「びっくりして言葉が見つかりません」、これはボニーのスピーチですが、そりゃそうですよね。今更、73歳のボニーが…という感じ。でも確かに受賞した「Just Like That…」は素晴らしい楽曲だし、同アルバムも素晴らしい内容なんです。

あ、私のアクセス数増加の原因はボニーの「Just Like That…」の記事でした。恐らく米国からのアクセスでしょうね。未チェックの方は是非ボニーのこの作品、聴いてみて下さい。

ということで今回はボニーとは一つ年上のジェームス・テイラー。マイペースな活動をしているJTですが、ここ20、30年のJTサウンドは非常に安定している印象です。そのキッカケとなったのは恐らくジャズ・ピアニストでもあるドン・グロルニックのプロデュースに因るものと思います。
今回ご紹介するJT13枚目のスタジオアルバム「New Moon Shine」はドンによる2作目のプロデュース作品です。

JTというとダニー・コーチマー、ラス・カンケル、リーランド・スカラー、クレイグ・ダーギのザ・セクションとのコラボが有名ですが、本作ではドン・グロルニックのプロデュースの下、ドン(Key)、マイケル・ランドゥ(G)、ジミー・ジョンソン(B)、カルロス・ヴェガ(Ds)を中心に、カッチリした演奏を聴かせてくれてます。

そうは言っても1曲目の①「Copperline」から往年のフォーキーなJTサウンドが楽しめます。
相変わらずのマンネリな音楽、でもこの変わらないJTサウンドが大好きです。細野晴臣がJTからの影響を大いに受けていることは有名ですが、細野さんはJTのビブラートをかけない唱法が新鮮だったと語っていた記憶があります。この曲でもハッキリ分かりますが、確かにビブラートをかけないJTの歌い方は、彼の声質ともマッチし、実にほのぼのした印象を受けます。この曲ではバイオリンやドブロが、より一層のBack To Basicな、米国の伝統音楽=カントリーを偲ばせますね。

個人的には、このアルバムの一番の良さが表れているのは④「Shed a Little Light」のように感じます。
本作ではいつものコーラス隊、アーノルド・マカラーデヴィッド・ラズリーケイト・マルコウィッツヴァレリー・カーターが参加しております。ヴァレリー・カーター、私の大好きなSSWでもあります。ヴァレリーは2009年にドラッグの不法所持で追訴されますが、経済的にもJTはヴァレリーを支援し続けておりました。またヴァレリーが2011年に更生施設を退所するときに、暖かく出迎えたのもJTでした…。
アップしたのは当時のライヴ映像です。バックコーラス4人をフロントに従えたJTの素晴らしい歌声、段々とグルーヴ感が伴ってくる演奏、熱くなってくるコーラス。会場も乗ってきているのが伝わってきます。ちょっとした光を当てて欲しいと神に祈るような歌詞は如何にも米国人が好みそうなもの。ヴァレリーもこの歌詞に励まされていたのでしょうか。

ちなみにこの「Shed a Little Light」はライブでも頻繁に演奏されてますが、特に2015年の地元のコーラス隊とのコラボ演奏は、JTの人柄が偲ばれる感動的なもの。かなりゴスペルタッチに仕上がってますが、これもまた素晴らしい。ここにはケイトも加わってますが、ヴァレリーは不参加。もう具合は悪かったのでしょうか。

JTの作品にしては珍しいロックンロール・ナンバーの⑥「Slap Leather」。
スタジオ録音バージョンは非常にスピーディなナンバーですが、ライブではいろいろと趣向を凝らして演奏しているようです(ヨーヨーマとの共演なんていうのもあります)。
ご紹介した映像は、アコースティックなドラムマシーンを用いたユニークな演奏。演奏の前後のJTのトークも人柄が伝わってきます。JT、スピーカーを使ってますね。JT、若い!

一転、ちょっとエリック・クラプトン風なブルージーなナンバーの⑧「One More Go Round」。
演奏自体も非常にタイト。まるでクラプトン・バンドの演奏のようです。テナー・サックスはマイケル・ブレッカー

⑨「Everybody Loves To Cha Cha Cha」はサム・クックが1959年にリリースしたナンバーのカバー。
タイトル通り、キューバのダンス、チャチャチャをモチーフとしたもので、JTもオリジナルに忠実にラテン系リズムを取り入れてます。この曲だけはベースはトニー・レヴィン、ドラムはスティーヴ・ガッド。こちらもカチッとした演奏に仕上がってますね。

エンディングはカーラ・ボノフのバージョンでも有名な⑫「The Water Is Wide」。
この曲、JTのヴォーカルも合ってますね。曲そのものも素晴らしいんですが、JTのアコギと声がメロディの良さを引き立ててます。

80年代以降のJTのアルバムって意外と見過ごされているような気がしますが、実は素晴らしい作品が多い。本作も聴き返せば聴き返すほど、味わい深い作品。もう30年以上前の作品とは思えないサウンドです。

下の写真はヴァレリーが更生施設から出所した際の、JTとの抱擁シーン。このアルバムからもJTの人柄が伝わってきますが、この写真からも彼の人柄の良さ、人間味溢れる素晴らしい方…ということが分かりますね。

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