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Lee Ritenour 「Wes Bound」 (1993)

日本の方々にとってはリー・リトナーって、杏里の旦那さんだった人…といったイメージが強いかもしれません(笑)。でも私にとってはもちろんフュージョンを聴くきっかけとなった大家のお一人。特にGRP移籍後のリラックスした演奏が大好きで、1987年の「Portrait」から本作くらいまでの彼の作品はどれも素晴らしいんですよね。

本作はジャズ・ギタリストのウェス・モンゴメリーを敬愛するリーの、彼へのオマージュ作品です。ウェスのカバーが5曲。オリジナルが5曲。なぜかボブ・マーリーのカバーが1曲。珠玉の全11曲。ジャケットも素晴らしい…。

アルバム・タイトル・トラックの①「Wes Bound」。リーのオリジナルですが、ウェスお得意のオクターブ奏法が光ってます。本アルバムの基本ミュージシャンはドラムはハーヴィー・メイソン、ベースはメルヴィン・デイヴィス、キーボードはボブ・ジェームス。お馴染みのメンバーですね。ジャズビートを刻んでいる訳でもないので、ジャズではなく、完全なフュージョンですが、当時流行っていたクワイエットストーム系の夜型フュージョン(??)で、実に心地いいです。

ウェスのオリジナル作品の③「Four on Six」はスリリングなナンバー。印象的なオルガンはロニー・フォスター。私は原曲を全く知らなかったのですが、リーは原曲のイメージをそのまま解釈、かつ更にリズムを強調するようにホーンやオルガンなどを効果的に用いてますね。それが、スリリングな曲調をより引き立たせ、かつ飽きさせないアレンジを施しているような気がします。原曲もアップしておきます。

この当時流行っていた典型的なライト・フュージョンの④「A Little Bumpin'」。リーのオリジナル作品です。こうしたフュージョンはラリー・カールトンにも通じるものがあり、本作発表後、二人は共作を発表することになります。この曲なんかよく聴いてみると、フュージョンとオクターブ奏法って、実に曲調にマッチしたものってことがよく分かりますね。せっかくなのでライヴバージョンをアップしておきます。

本作では異色の⑤「Waiting in Vain」。ボブ・マーレーの名作ですね。ヴォーカルは当時一世を風靡した(今も現役ですね)マキシ・プリースト。もちろんギターはオクターブ奏法でしっかり弾いているのですが、他の楽曲と比べると、なぜこの曲が収録されたのか…。ただレゲエのリラックスしたムードと、オクターブ奏法が実は結構ぴったりだったりするってことを示したかったのかも…と勝手に推測してます。でも個人的にはウェスとリーのオリジナルで本アルバムは固めた方が良かったような気もします。

⑥「Goin' on to Detroit」はウェスのオリジナル作品ですが、全く原曲を知らない私は、これはリーの作品と思ってしまいました。それくらい違和感のない仕上がり。原曲聴いてみましたが、なるほど、フルートとかドラムの音とか、古さは感じますが、曲そのものは「新しい」ですね~。ウェスの他の過去の作品の方が気になってしまいます。

⑨「Road Song」は言わずと知れたウェスの遺作となったアルバムタイトルトラック。本作でもそうですが、現代風アレンジ(といっても本作発表から20年以上経過してますが)で、全く古さを感じさせない仕上がり。これもリーのオリジナルじゃないの??って感じです。原曲はちょっとボッサな感じと、オーケストラアレンジが60年代後半って感じ。イージーリスニング的な仕上がりですね。そういえば後期ウェスのCTI3部作は、イージーリスニング的な名盤なんですよね。

CTI以前のバリバリジャズのウェスを愛する方々でしたら、本作、ジャズ・アルバムではなく、完全なフュージョンサウンドなので、ちょっとお気に召さないかもしれません。ただフュージョンファンでしたら、本作は間違いなくマストアイテムですね。

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