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Crosby, Stills & Nash「CSN」(1977)

デヴィッド・クロスビーが旅立たれた。彼のソロはかなりエッジが効いており、聴きづらいものもあったが、グループでの彼の立ち位置は、絶妙なスパイスで、なかなかいいものでした。

ウェストコーストロックを語る上では絶対外せない3人、デヴィッド・クロスビースティーヴン・スティルスグラハム・ナッシュ、その3人がCSNとしてグループを結成したのが1968年。元バーズのデヴィッド・クロスビー、元バッファロー・スプリングフィールドのスティーヴン・スティルス。元ホリーズのグラハム・ナッシュ。所謂スーパーグループと呼ばれた最初のバンドだったのかもしれません。

デビューアルバムCrosby, Stills & Nashは本当に素晴らしい内容でした。それからスティーヴンとは犬猿の仲だった筈のニール・ヤングが加わり、CSN&Yとして発表したDeja Vuも、よりロック色が加わり、これも良かった・・・。ただ個性的なメンバーだったがゆえに、敢え無く解散。

その後もこの4人にはいろいろな経緯がある訳ですが、1977年、クロスビー&ナッシュとして活動していた2人のステージにスティルスが飛び入り参加。「Teach Your Children」を歌ったところ、非常に反応が良く、そのまま3人としての活動を決意。それがそのまま本作制作の流れに繋がります。

クロスビーが3曲、スティルスが5曲、ナッシュが4曲の計12曲。バンドメンバーは各人とそれぞれ関係の深いクレイグ・ダーギ、ラス・カンケル、ジョージ・ペリー、ジョー・ヴァイテール等が参加。

アルバムトップの①「Shadow Captain」はクロスビーの作品ですが、この曲の作曲者はクレイグ・ダーギなので、クロスビー色はそれほど感じられません。この曲、ハイハットが16ビートで刻まれた、ちょっと洗練された楽曲。この時代に合った、前作のCSNとは違う楽曲。絶妙なスライドギターはスティルス。エンディング近く、3人の息のあったコーラスが伸ばされ、最後、誰かが「Hi!」と言っているのが聞こえます。それだけノッていたのでしょう。

スティルスの②「See the Changes」は3人のヴォーカルとスティルスのアコギだけのプレイ。なのにすごく拡がりを感じさせる1曲。それはつまり3人のコーラスの成せる技であり、この3人(というか特にクロスビー&ナッシュ)の美しいコーラスが堪能できます。

④「Fair Game」、⑦「Dark Star」ともスティルスの楽曲ですが、両方ともラテン・ビートが強調された楽曲。CSN&Y解散後のスティーヴンは、ラテンビートの楽曲を結構作ってましたね。特に⑦「Dark Star」はジョー・ヴァイテールがドラム、ラス・カンケルがコンガを叩き、かなりファンキーなグルーヴを感じさせます。クレイグのエレピもフュージョンタッチでいいですね。

クロスビー作の⑪「In My Dreams」。彼のアコギは味わいありますね。ナッシュのようなポップで優しいメロディでもなく、スティルスのようなカッコいい楽曲でもない。でも味わい深いのがクロスビーの作品。この曲も不思議な魅力があります。

アルバム最後はスティルス作の⑫「I Give You Give Blind」。この曲、イントロだけ聴くと、CSN??、ELOじゃないの?って思ってしまいました。この前年、既にスティルスはソロステージでこの曲を歌ってますが、そちらの演奏はピアノを強調したロックチューンでした。本作ではELOを意識したオーケストラアレンジを加えることで、よりスリリングな曲に仕上がるとスティルスは考えたのでしょうね。

ということで、個人的にはいいアルバムに仕上がっていると感じてます。特にスティーヴン・スティルスが作った楽曲は素晴らしく、彼の声はちょっとダミ声で「大丈夫?」って感じなんですが、そこにクロスビー&ナッシュのコーラスが加わると、魔法がかかったように、美しい楽曲に仕上がっているんですよね。

CSNはこの後、ニューアルバムの制作にも取り掛かるのですが、結局、次のCSNとしての新作は、あと5年待たねばなりませんでした・・・。この間、クロスビーのドラック中毒は酷い状態だったようで、その新作もスティルス&ナッシュに、クロスビーが少し参加する・・・という形になってしまいますが。

でもやっぱりこの3人のハーモニーは素晴らしい。もうこのハーモニーが聴けないのは残念ですね。ビートルスのブラックバードの素晴らしいカバーを最後にアップしておきます(コレ、日本公演らしい…です)。


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