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The Byrds 「Fifth Dimension」 (1966)

サイケロックの真骨頂、フォークロックからの転身

ザ・バーズほどアルバム毎に音楽スタイルを代えていったバンドもないかもしれません。おそらく当時のファンからすれば、大いに戸惑ったと思われますが、その変革姿勢が当時のウエストコーストロックの牽引者であった証でもあり、どのアルバムも未だに魅力的ある点は、大いに評価されていいと思います。ザ・バーズとザ・ビーチボーイズがウエストコーストロックの源流である点も首肯し得ますね。

ザ・バーズのファーストアルバムとセカンドは、ボブ・ディランのフォークソングをロック調に改めたフォークロックが中心のものでしたが、サードアルバムである本作にて、ザ・バーズは最初の変化を遂げます。

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だいたいこのアルバム、ジャケットからして怪しい・・・(笑)。サイケ感覚に溢れてますね。
本作発表は1966年7月ですが、それより遡ること4ヶ月。同年3月にシングル「Eight Miles High」、邦題「霧の8マイル」を発表。この曲はサイケ・ロックともラガ・ロックとも呼ばれ、後にサイケ・ロックはウエストコーストロックの主流となっていきます。だからこの曲は、サイケの先駆けの1曲として、エポック・メイキング的な存在なんですね。

この曲はロジャー・マッギンのイントロや間奏のソロの12弦ギターが非常に印象的で、特にギターソロはジョン・コルトレーンのサックスソロをモチーフにしたとも云われています。だからてっきりロジャーが中心に書いた曲かと思ったのですが、実はこのときはすでに脱退していたジーン・クラークが中心に書いたものなんです。上のジャケットにはジーンが写っていないんですけどね。初期バーズの音楽面の支柱的存在だったのはジーンだったのかもしれません。デイヴィッド・クロスビーの力強いリズム・ギターも印象的です。そんな訳でこの曲のクレジットはジーン、ロジャー、デイヴィッドとなってます。もちろんクリス・ヒルマンの唸りを上げているベースも素晴らしい・・・。ちなみにドラムのマイケル・クラークはデビュー当時はドラムの素人で、レコーディングにすら参加していなかったのですが、ここでは彼が本当に叩いているようです。
ジーンの置き土産ともなったサイケな「霧の8マイル」、ここでは音は悪いですが、メンバーの容姿が堪能できる映像をアップしておきます。

1966年初頭にジーンは脱退してしまったので、ロジャーとデイヴィッドが曲作りに励みます。そこでロジャーは①「5D(Fifth Dimension)」と③「Mr.Spaceman」の2曲の佳曲を作ります。「5D」はワルツのリズムをベースに、ちょっとカントリー風味を加えた哀愁感のあるメロディの楽曲で、ここでも印象的に鳴っているロジャーの12弦ギターが肝となってます。パイプオルガンみたいにも聞こえます。

③「Mr.Spaceman」は音楽的な独創性はあまり見出せません。タイトルからすると、サイケなサウンドを連想させますが、全く違います。どちらかというと爽やかなカントリーロックでしょうか。

一方デイヴィッドは初の単独クレジット作品の⑤「What's Happening??」を提供します。なかなか味わい深いメロディライン(このメロディの繰り返しなんですが)です。ギターソロにはラガロック的な要素が感じられますね。

せっかくなのでロジャーとデイヴィッドの共作曲もアップしておきます。④「I See You」ですが、ちょっとサイケなロックです。パーカッションや12弦ギターがサイケ感覚を煽ります。

本作にはボブ・ディランのカバーは収録されてませんが、次作「Younger Than Yesterday」では再びカバー、「My Back Pages」という名曲を生み出します。



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