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The Beatles「Beatles for Sale」(1964)

ひょっとしたらビートルズのオリジナル・アルバム(英国)の中でも、一番地味な存在のアルバムではないでしょうか。初期ビートルズから中期ビートルズの橋渡し的な、ある意味ちょっと中半端な立ち位置のアルバム、そんなイメージですね。

前作「A Hard Day’s Night」が全曲オリジナルで構成された素晴らしいアルバムだったのですが、レコード会社は商魂逞しく、その年のクリスマス商戦に次作発表を間に合わせるよう要請。そのため「A Hard Days Night」発表から僅か1か月後の1964年8月11日から次作のレコ―ディングを開始。但し8月18日からはアメリカツアー、10月9日からはイギリスツアーが既に予定されていたことから、その合間合間にレコ―ディングしなければならないという過密スケジュールでしたので、当然新曲もそう多くは書ける筈もなく、結局は本作「Beatles For Sale」は14曲中、6曲がカバーという構成になってしまったわけです。それでも本作はやっぱりビートルズは凄い…と思わせる曲が散りばめられております。

前作に引き続き、やはり本作もジョン・レノンの存在感が圧倒的です。個人的にはこの当時のジョンの声、楽曲が大好きです。その代表的な楽曲が①「No Reply」。イントロ無しのいきなり ♪ This Happened Once Before ♪ の渋みのあるジョンのヴォーカルに痺れます。
この曲、The Rays「Silhouettes」という楽曲の歌詞(愛する人の家の前を通ったら、シェードに二人のシルエットが映し出されていた)にジョンがインスパイアされて作ったもの。確かにそういう歌詞ですね。
ハンドクラッピングが重なるサビの、なんとカッコいいこと。初めてこの曲を聴いたとき、そう感じました。

あまりにも有名なカバーソングの④「Rock And Roll Music」。ひょっとしたらチェック・ベリーがオリジナルであることを知らない方も結構いらっしゃるかもしれませんね。
チャック・ベリーよりもかなり迫力あるジョンのヴォーカル。演奏もかなり洗練された印象。裏でスウィングしているピアノはジョージ・マーティンのプレイ。この頃はまだまだジョンがサウンド面でもイニシアティブを握っていた印象です。

メロディメーカーのポールの楽曲らしい⑤「I'll Follow The Sun」。
今でもポールのソロライヴでは披露されている佳曲。こういう小作品ながらも、フォーキーで味わい深い楽曲はポールの持ち味のひとつとなっていきます。その先駆けとなった楽曲ですね。個人的にはこういう楽曲が大好きです。

これ以上素晴らしいカバーはない…というくらい個人的に大好きな⑥「Mr. Moonlight」。
もともとは1962年にドクター・フィールグッド&ジ・インターズによってレコ―ディングされたものが初出の楽曲。でも圧倒的にビートルズのバージョンが有名ですよね。
原曲もヴォーカルからスタートしますが、ジョンの迫力はオリジナルを凌駕しております。そしてポール、ジョージの三声ハーモニーも圧倒的に素晴らしい。なによりこの楽曲のちょっと哀愁漂うメロディに対するジョンの解釈、ヴォーカル力素晴らしいです。
地味と云われている本作ですが、ジョンが歌う(紹介した)カバー2曲は傑出してますね。

本作ではジョンの①「No Replay」と対を為すようなポールの⑧「Eight Days a Week」。
正確にはクレジット通り、ジョンとポールの共作のようですが、後にジョンは「ポールの作品に自分が手伝った」ような発言をしております。ビートルズのメンバーもこの曲には不満があったようで、2013年のポールのアウト・ゼア・ツアーでようやく演奏されるようになったもの。
個人的には、ビートルズを聞き出して、早々に好きなった楽曲です。覚えやすく、明るいメロディはポールらしい。「No Replay」に比べたら、深みの無い曲かもしれませんが、こういうポップスはポールらしいなあと感じます。

本作のオリジナル作品の中では一番好きな楽曲が⑪「Every Little Thing」です。「No Replay」でも「Eight Days A Week」でもなく、こちらが(今の気分では)一番のお気に入り。この曲、あまり認識していなかったのですが、ポールが作った曲なのに、ジョンが歌っているという珍しいパターンの楽曲。力強いアコギのストローク、ティンパニーの仰々しいアレンジ、そして深みのあるジョンのヴォーカル。どれもがカッコいい。

久しぶりに「Beatles For Sale」をじっくり聴き返しましたが、前作に引き続き、やはりジョンの強い個性が印象的なアルバムですね。個人的にはこの頃のジョンの迫力あるヴォーカル、ロックンローラーとしてのジョンのヴォーカルに強く惹かれます。

そしてビートルズは8ヶ月のインターバルを取り、5作目の「Help」を発表致します。

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