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KISS「Animalize」(1984)

昨年12月、ついに本当にキッスのライヴ活動が終了致しました。一抹の寂しさを感じます。

今もたまにキッスは聴き返すのですが、1982年の「Creatures of the Night」から「Lick It Up」「Animalize」「Asylum」までのメタル期の4枚のアルバムは、ちょっと敬遠していたときもありました。ただこの時代のキッスが時代をキャッチアップし、「俺たちだってそれくらい出来る!」と言わんばかりの内容に感動。ここ数年は結構愛聴しております。
そしてこの4枚の中、本作が一番往年のキッスらしからぬメタル色が濃いアルバムじゃないかなと思います。このアルバムを知らない方は「これがキッス?」と是非驚いて下さい。

この作品はキッス三代目のギタリスト、マーク・セント・ジョンが参加した唯一の作品です。二代目のギタリスト、ヴィニー・ヴィンセントはメンバーと意見が合わず、「Lick It Up」1作のみの参加で敢え無く解雇。そこで伝手を辿って急遽メンバーに抜擢されたのがマーク。但し後のインタビューでマークは、自分の扱いは酷く、いい思いはない…的な発言をされておりました。確かに全く曲作りには参加しておらず、代役的にギターを弾かされただけ…にも見えます。しかしながら、そのギタースタイルはエディ・ヴァン・ヘイレンを思わせるトリッキーなもので、それだけで十分凄いプレイが堪能出来ます。

プロデュースはポール・スタンレー。実はこの頃、ジーン・シモンズは俳優活動に勤しんでおり、このアルバムではジーンは全曲参加しているわけではありません。その代わりに曲作りにはデスモンド・チャイルドが大きく関わっております。
当時全盛を極めていたLAメタルの若者たちへのキッスの回答、その集大成が本作ではないでしょうか。

まずはオープニングの、ポール・スタンレーとデズモンド・チャイルドの共作の①「I've Had Enough (Into the Fire)」。
まずはマークのトリッキーなギタースタイルに驚いて下さい(笑)。ヴォーカルはポール節全開ですが、ギターアレンジがメタリックなので、完全にヘヴィーメタルなサウンドになってます。またエリック・カーのドラムも重量感あって頼もしい限り。エリックはピーター・クリスの後釜として、1980年に加入したドラマーで、1991年に癌で亡くなるまでメンバーで有り続けた愛すべきメンバーでした。

シングルカットされた②「Heaven's on Fire」は直近のライヴでも演奏されておりました。
往年のキッス・サウンドをハードにしたようなキャッチーなメタル。このPVにはマークが映ってますが、実は映像として残っているキッスとしてのマークは、これが唯一のものらしい(他にはマーク加入時の紹介映像があるのみ)。マークは本作のレコ―ディングとライヴ3本のみの参加で、関節炎が酷くなり已む無く脱退。そういった意味ではこのPVは貴重です。
但しこのキャッチーなナンバーにはマークらしいトリッキーなプレイは登場せず。PVもそれほど見応えがあるものではありませんが…。

ジーン・シモンズのナンバーの③「Burn Bitch Burn」。
これもギターがメタリックなアレンジなのでヘヴィーメタル風ですが、曲自体はジーンらしいスピーディーなロックンロール。サビもキャッチーですよね。マークのギターソロ、弾きまくってます。

キッス史上、恐らくメタル指数が最高値の⑥「Under the Gun」。ポールとデズモンド、そしてドラムのエリックの共作。
エリックが共作者にクレジットされているのは、やはりドラムがキーとなっているからでしょう。ここでのマークのプレイも圧巻ですが、こうしたメタル・サウンドとエリックのドラムは合ってますね。

ちなみに前述の通り、この1984年のツアー中にマークが脱退。その穴埋めにブルース・キューリックがツアーに参加。もちろんこの曲も演奏しており、このマークのトリッキーなプレイをブルースは見事に弾き切ってます。その映像もアップしておきます。

⑦「Thrills in the Night」は当時流行っていたLAメタル風な楽曲。
当時はこういった楽曲、流行ってましたね。仮面を剥いだキッスは若い新人たちに混じって、堂々と同じフィールドで勝負していったわけですね。
そしてLAメタルというとブラック・アンド・ブルー…、当時、ジーン・シモンズがプロデュースしていたバンド。このブラック・アンド・ブルーのギタリストだったトミー・セイヤーが、後にキッスの最後のリード・ギタリストの地位を獲得していきます。

このキッスのメタル期は、次の「Asylum」まで続くこととなります。リード・ギタリストは次々と変わっていたメタル期ですが、サウンドは充実しております。再評価したいですね。


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