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Eric Carmen「Eric Carmen」(1984)

私が敬愛していたエリック・カルメンの訃報が届きました、それも突然に。
彼が率いたラズベリーズの4枚のオリジナルアルバムはどれも秀逸で、よく聴いてましたね。

このブログでは、既にエリックが発表してきた作品は相当数ご紹介済ですが、まだ80年代のアルバムはご紹介出来ておりませんでしたので、彼の功績をもっと多くの方々に知って頂きたく、そのアルバムもご紹介したいと思います。

80年代をリアルタイムで過ごした方々には、映画「フットルース」のサントラが大ヒットしたことはよくご存じと思いますが、そのサントラから大ヒットした曲が、マイク・レノ(ラヴァーボーイのVo)とアン・ウィルソン(ハートのVo)の「Almost Paradise」。この曲がエリック・カルメンの作品であったことは周知の事実ですが、一時低迷していたエリック・カルメンが再び脚光を浴びた会心の作品だったのでした。
聴いてお分かりの通り、如何にもエリックが書きそうな泣きのバラード。これはエリックが歌っても全く違和感のない、正真正銘のエリック流バラードでした。

そしてエリックは4年振りとなる本作、ソロ5枚目のアルバム「Eric Carmen」を発表するのでした。

アルバムのタイトルはファーストと同様に自身の名前を冠したもの。それほど自信に満ち溢れたものだったのでしょうか。それとも新たに心機一転という意味合いだったのでしょうか。個人的にはこのアルバム、如何にもこの時代特有の80年代サウンド的なアレンジで、あまり好きになれない1枚だったのですが、ハッとさせられる曲もいくつかあります。

まず最初にニヤッとさせられたのが⑦「You Took Me All the Way」。
なぜか…。この曲のタイトル、All The Wayにピンと来た方はなかなかですね。そう、ラズベリーズの名曲「Go All The Way」です。間違いなく、エリックはこの名曲をモチーフに、今だったらこういう風になる…と思って書いたのではないでしょうか。
イントロのギターのリフから「Come On !」のシャウト…、ああ、ラズベリーズのエリックだなあ。曲が甘いメロディに変わるところなんかは「Go All The Way」そのもの。80年代風アレンジ、シンセドラムとかはイマイチですが、曲はいいですね~。

シングルカットされた甘いバラードの②「I'm Through with Love」。
愛の終わりを歌ったエリックらしい珠玉のバラード。
この曲、一瞬「All By Myself」を彷彿させるメロディが登場します。甘い、そして泣きのメロディはエリックならではですよね。
当時のPVがありましたのでアップしておきます。エリック、カッコ良すぎますね。

私のあまり好きでない80年代特有のサウンドの⑤「Come Back to My Love」。
この曲を採り上げた理由はこの曲の作者にあります。本作の殆どがエリック単独の作品なんですが、この曲だけはボブ・ゴーディオ、ジェリー・コルベッタ、ジョン・ベティスの共作。ボブ・ゴーディオは本作のプロデューサーでもありますが、フォー・シーズンズのメンバー、かつプロデューサーとしても有名な方。ジェリー・コルベッタは元シュガーローフのメンバーで、1978年に発表した「Jerry Corbetta」はポップスファン必携の1枚。そしてジョン・ベティスはカーペンターズの作品でもリチャード・カーペンターとのコンビで数多くの名曲を書いてきた方。
こんな大御所が集まって書いた曲…という理由でアップしましたが、曲は当時流行ったアレンジでちょっと残念(苦笑)なんですが、彼等らしいポップスですね。

軽快なアカペラで始まる⑧「Maybe My Baby」。
1985年にカントリー歌手のルイーズ・マンドレルがカバーしてヒットさせた楽曲で、こちらもエリックらしいポップス。
エリックならこうした楽曲は数分で書き上げたんだろうなあと思います。もともとこうしたポップスが大好きだったんでしょうね。

ロックチューンの⑨「Spotlight」、これも80年代サウンドアレンジなんですが…。
キッスのジーン・シモンズも「エリックは「All By Myself」のイメージが強いが、本当のロッカーだった」といった趣旨の追悼コメントを出されてましたね。
実は私もそう思ってまして、特にラズベリーズ時代はロッカーそのもの。このアルバムでも最初にご紹介した曲やこの曲(本当にアレンジは残念なんですが)のシャウトにその精神が表れてますね。

そしてエリックはロッカーであると共にバラードの名手でした。
本作エンディングも素晴らしいバラードが用意されております。それが⑩「The Way We Used to Be」。
昔の恋人を思い出す…、そんなことが皆さんもきっとあると思います。
エリックは素晴らしいメロディメーカーであると当時に、歌詞を紡ぎ出すことにも才能を発揮しておりました。
仰々しいバラードが得意なエリックにしては、かなり短い曲ですが、非常に印象深い楽曲です。私の大好きな1曲。

エリックはラフマニノフの楽曲をモチーフに「All By Myself」「Never Gonna Fallin’ Love Again」といった名バラードを発表しておりますが、実は著作権が切れていない国もあったことで、ラフマニノフ財団に印税を払わないといけない羽目に陥ってしまいます。何かそういったことと、エリックが寡作であったことが関係あるのかは分かりませんが、彼が素晴らしいメロディメーカーであったことは事実。
多くの素晴らしい音楽を有難うございました。R.I.P.


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