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Manassas「Pieces」(2009)

さて、今回は私の大好きなスティーヴン・スティルスです。
1971年にはCSN&Yの活動は終了し、各メンバーはソロ活動に注力していきます。スティーヴンは自身のセカンド「Stephen Stills 2」を発表し、プロモーションツアーを敢行。そのツアーも9月には終了し、スティーヴンは同ツアーメンバーだったダラス・テイラー(Ds)、カルヴィン・サミュエルズ(B)、ポール・ハリス(Key)、ジョー・ララ(Per)等と共にマイアミのクライテリア・スタジオに入ります。

そこで新たなプロジェクトの構想の一環として、パートナーにクリス・ヒルマンを招聘。クリスはフライング・ブリトー・ブラザーズのメンバーでしたが、この時点で解散を決めていたものと思われます(もともとクリスの方がスティーヴンに新たなプロジェクトを持ちかけたとの説もあります)。クリスは複数のメンバーと共にマイアミに合流し、マナサスが結成されます。そして発表されたアルバムが「Manassas」です。

マナサスは結局、セカンドアルバムを発表後に空中分解してしまうのですが、(前置きが長くなりましたが)今回ご紹介するアルバムは、そのマナサスの未発表音源集です。ですから発表された時期は2009年ですが、音源自体は1971年~1973年(一部1975年)のもの。
通常未発表音源集というと、中身が詰まらないものが多いのですが、本作はなかなかの良作。もちろんアルバムとしてのバランスは全く取られていませんが、1曲1曲は聴き所のあるものばかりです。

まずは個人的ハイライト・トラックからご紹介しておきます。それがクリス・ヒルマン作の③「Lies」。
カッコいいロックナンバーです。まず印象に残るのがスライド・ギター。これはゲスト参加したジョー・ウォルッシュのプレイ。もちろん当時はジョーがイーグルスに加入するなんて、誰も想像すらしていなかったと思いますが…。

この曲のライヴ映像がありましたが、なぜかスティーヴンは演奏終了後に登場(笑)。しかも(恐らく)デヴィッド・クロスビーと共に登場してますね。
クリスとジョー・ララ(でしょうか)がフロント・マン扱いしたステージとなってます。いずれにしても貴重なマナサスの演奏シーンです。

「Stephen Stills 2」に収録されていた②「Sugar Babe」。
ソロのバージョンとテンポもそう大差ないのですが、マナサスの方がより、バンドサウンドに近いイメージでしょうか。但しダラスやポール、カルヴィンと同じメンバーでの演奏ですから、恐らくマナサスとしての肩慣らし的な楽曲だったのでしょう。個人的に好みの楽曲でしたのでチョイス致しました。

⑤「Like a Fox」も「Sugar Babe」と同様のミディアム・テンポのロックナンバー。スティーヴンらしいナンバーですが、こちらはアル・パーキンスのスティール・ギターが効いており、よりカントリー・ロックに近いイメージです。ボニー・レイットがコーラスで参加しております。

せっかくなのでクリス作のスワンプな楽曲⑨「Love and Satisfy」もご紹介しておきます。イントロのギターは一瞬CCRと勘違いしてしまうくらいスワンピーで泥臭く、いいですね。
この曲は後にThe Souther-Hillman-Furay Bandで採り上げられます。そちらはJDサウザーやリッチー・フューレイの味付けもあり、スワンプというより、カントリー風味が効いております。

ヘビーなブルース・ナンバーの⑩「High and Dry」。
たまにはこういうブルージーなナンバーもいいですね。
スティーヴンとアルのギターの応酬がスリリング。そしてスティーヴンの熱唱…、この辺りが聴き所ですが、2分30秒過ぎから、後から入れた歓声と共にテンポアップした後半の熱いジャムも、このバンドの熱い演奏が楽しめます。これがなぜお蔵入りとなったのか分かりませんね。

本作は①~⑩がロック、⑪~⑭がカントリー・ブルーグラス、⑮がスティーヴン単独という構成です。
せっかくなのでブルーグラス調の4曲から1曲セレクトしておきます。セカンドアルバムでも披露されていたスティーヴン作の⑬「Do You Remember the Americans」.。
セカンドアルバム収録の正式なバージョンよりもかなりテンポアップしたアレンジ。こちらが原型ということです。バンジョーはアル・パーキンス、マンドリンはクリス・ヒルマン。この二人のプレイが光ります。

個人的にはスティーヴンの音楽は、70年代前半からマナサス辺りが一番好みです。この作品集も、彼の良さが十分発揮された一枚。味わい深いですね。

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