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Randy Meisner「Randy Meisner」(1978)

元イーグルスのランディ・マイズナーの訃報に接し、追悼する意味で本作を拝聴。ランディのソロは、私が洋楽を聴き始めた頃に発表されたサードアルバム「Randy Meisner」(ランディの声がスティーヴ・ペリーにそっくり)しか聴いておらず、このファーストは未聴だったのですが、こちらが想像以上に素晴らしい内容でしたので、ご紹介致します。

ランディのイーグルス脱退経緯は、グレン・フライとドン・ヘンリーの横暴に辟易したとか、「Take It To The Limit」ばかり歌わせることにランディ自身が辟易したとかいろいろ云われてますが、それらの不満(表には出ていないが、数えだしたらキリがないくらいの不満)が少しずつ蓄積していった結果なんでしょうね。
イーグルスは1994年に再結成されますが、ランディには声掛けすらなかったと云われてます。私が記憶する限りでは、イーグルス出身メンバー7人全員が一堂に会したのは、1998年のロック殿堂入りのセレモニーだけだったかと思います。その時の各メンバーのスピーチは以下ご覧ください。

この時の7人は全員が大人で、7人7様、それぞれの個性が表れて面白いですね。特にティモシーがランディに感謝の言葉を述べたり、ランディが本当に短いスピーチだったり、バーニーがわざわざ自己紹介したり(笑)…。ジョーは変人だし、一番普通なのがドン・フェルダーかも。ドン・ヘンリーとグレン・フライでしっかり最初と最後を長いスピーチで纏める点は、やっぱりイーグルス…と感じてしまいますが…。この時のランディ、実に楽しそうですね。

さて、イーグルスを1977年9月に脱退したランディは、翌年に本作を発表します。ところが自作曲は「Take It To The Limit」のセルフカバーのみ。しかも多くの楽曲はそれほど有名なライターが書いたものではないんですよね。単に下準備が足りなかったのか、それとも自分に近しい方の、自分が歌いたいと思った曲をヴォーカリストとして取り上げたのか…。本作の参加ミュージシャンが、故郷ネブラスカのアマチュア時代の仲間が参加している点を考えると、イーグルスから解き放たれて、かなり自由な雰囲気でレコ―ディングしたんじゃないかなと思われます。

プロデュースはアラン・ブラケット。アランって誰?って感じですよね。60年代のサイケ・バンドのピーナッツ・バター・コンスピラシーのベーシストだった方で、ランディとはベース繋がりとしか分かりません(笑)。裏側でどんなご接点があったんでしょうね。そもそもアランのプロデュース・ワークって本作くらいしかないんじゃないでしょうか。

オープニングナンバーは映画「FM」にも使われた①「Bad Man」。こちらはJ.D.サウザーグレン・フライの共作。
この2人が作りそうなロックンロール・ナンバーです。線の細いランディのヴォーカルは、こうした曲は似合わないと思いきや、結構いい感じで歌ってます。コーラスのDonny Ullstrom、ベースのKerry Morrisは昔の仲間でしょうか。この曲に限らず、本作全般にスティーヴ・エドワーズのギターが冴えわたってます。このスティーヴなる人物もよく分からず…。あのロニー・ジェイムス・ディオが在籍していたエルフというバンドに同名の方が居たのですが、その方かなあ。このアルバム全般でのスティーヴのギターは、スライドとかスティール・ギター、ドブロを器用に弾きこなす活躍をしております。

そして2曲目から私好みの曲が飛び出してきました。それが②「Daughter Of The Sky」。日本人好みのメロディアスなミディアム・ナンバーです。
こちらの作者はビル・ラム。彼はこの曲の他に2曲提供しております。ビルはゲイリー・オーガン&ビル・ラムとして1972年にデビューした方。1979年にはレイジー・レイサーというバンドに加わりますが、このバンドのプロデューサーがグリン・ジョンズなんですよね。そう、イーグルスのプロデューサーだった方ですね…、やっとランディと繋がった(笑)。
本作にはあまり有名でないミュージシャンが多数参加してますが、ランディも大化けしちゃったイーグルスより、もっと気楽に昔の仲間と音楽をやりたいと思ったのかもしれません。この曲も土臭いスティーヴのスライドギターが印象的ですよね。

今更ご紹介する必要もないかもしれませんね。ランディの代表曲の⑥「Take It To The Limit」です。グレン・フライ、ドン・ヘンリーとの共作ですが、こうして堂々とランディのソロ作にも収録するくらいですから、実質はランディが作ったんでしょうね。
こちらのバージョンはピアノをバックに朗々とランディが歌い上げるもの。ゴスペルタッチなピアノはケニー・ロジャースとの仕事でも有名なジョン・ホップズ。コーラスにはなんとデヴィッド・キャシディが参加してます。この簡素なアレンジのバージョンも感動的です。
ランディはこの偉大なる名曲に引っ張られ過ぎたのかもしれません。でもランディはもうこの曲は歌いたくないと思いつつ、こうしてファーストソロに収録し、大事に大事にされていたんですよね…。

プロデューサーのアランとピーナッツ・バターのメンバーだったジョン・メリルの共作の軽快なカントリーナンバーの⑦「Lonesome Cowgirl」。
サイケなピーナッツ・バター・コンスピラシーからは全く想像出来ないナンバーですね(笑)。バイロン・バーラインのフィドルまで飛び出す、完全なカントリー。結構好みですね~。ランディの声って、本来はカントリーに合っているような気がします。

再びビル・ラムが提供したナンバーの⑧「Too Many Lovers」はしっとりとしたバラードです。伸びやかなランディのヴォーカル、マーティ・ペイチのストリングス、アーニー・ワッツのサックスが実に心地いい。途中でリズムが倍速に変わるアレンジも心憎い。

そして私が本作中、一番気に入ったナンバーが⑩「I Really Want You Here Tonight」。こちらはプロデューサーのアランが提供したメロウなAORナンバー。当時の流行りのサウンドですね。コーラスにはデヴィッド・キャシディやJ.D.サウザーが参加。ここでもアーニー・ワッツのサックスが泣かせてくれます。
タイトルの本来の意味合いとは違いますが、メロウなこの曲を聴きながら「ランディ、やっぱりここに、この世にいて欲しい」としみじみ感じてしまいます。

本作はランディの不思議な人脈に想い馳せられる好盤です。楽曲もバラエティに富んでいるし、ランディも気心知れた仲間とのセッションを楽しんでいるかのようですね。
聴き返す度に彼の死が悔やまれます。R.I.P.

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