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Bobby Caldwell「Cat in the Hat」(1980)

WBC、凄い試合でしたね…。決勝戦、日本が優勝を決めた時、私は同僚とランチしながらスマホで観戦。その瞬間、レストラン内にも歓声が沸き起こりました。皆、食事しながら観戦していたんですね(笑)。

WBCといえば開催されているマイアミ…。マイアミといえばTKレコード、そしてボビー・コールドウェル。私がAOR好きなるキッカケにもなった恩人です。そのボビーが14日に亡くなってしまいました。享年71歳、晩年は歩くことが出来なかったようですね…、知らなかったです。
私と同世代の方は、ボズ・スギャックスがカバーした「Heart Of Mine」でボビーを知ったという方も多いかと思われます。1988年、ボビーのアルバム「Heart Of Mine」がヒットした頃、私は大学生。その頃、パーラメントのCMで使われた「Heart Of Mine」が、実に大人の音楽、素晴らしい…と感じたものです。当時付き合っていた彼女が横浜に住んでおり、家に送った後の夜の首都高速ドライブには必ずこのアルバムとボビーのファーストのカセットテープが流れていました~(苦笑)。YouTubeにパーラメントのCM曲集がありました。この7分47秒辺り、この映像と夜の都会の高速のイメージがピッタリ合っていたんですよね。

この「Heart Of Mine」のサウンドとは微妙に違う、よりブルーアイドソウルな味わいがファースト、セカンドにはありました。今回は1980年発表のボビーのセカンドをご紹介致します。

プロデュースはボビーとスティーヴ・キンボール。スティーヴはレコ―ディングされたスタジオ、クライテリア・スタジオの専属プロデューサー。アレンジはもちろん、殆どの楽器をボビーがこなしているので、実質はボビーが好きなように制作したアルバムと言えます。

本作の印象ですが、正直、誉れ高き名盤のファースト「Bobby Caldwell」と比較すると、インパクトのある楽曲があまりなく、スルーされてしまうアルバムなんですが、何回も聴いていると、マイアミの風のような心地良さを感じます。宴の後、まさにWBCの余韻に浸るのにピッタリなアルバムですね…。

オープニングはシャッフル系の①「Coming Down From Love」。シングルカットされた曲でもあり、人気の高いナンバー。
この曲はソウルフルなボビーが歌っているからあまり気付きませんが、ちょっとロック調のギターのリフとか、ギターソロとか、AORしたTOTOを連想させます。ファーストのアーバンなイメージをそのまま継承しているような楽曲ですね。

②「Wrong Or Right」はボビーの曲としては比較的テンポアップなボビー流のロックナンバー。イントロからスペーシーなフュージョン、一瞬スティーリー・ダンのような世界観を感じさせます。ファルセットも駆使したボビーが歌うと洒落たアーバン・ソウルに聞こえるから不思議なものです。ちなみに米国ではボビー・コールドウェルはR&Bやスムース・ジャズに分類されることが多いようです。

マイアミの心地よい風を感じさせる④「You Promised Me」。こうした楽曲もボビーの十八番のナンバー。後のヒット曲「Jamaica」を彷彿させるちょっとトロピカルなナンバーです。微妙にそういったアレンジが施されてます。またボビーのファルセットが心地いいですね。

若いリスナーにとってはこの⑥「Open Your Eyes」が一番耳馴染みがいいかもしれません。
この曲はラッパーのCommonが2000年に発表した「The Light」にサンプリングされた曲として、後に知られた存在となり、早逝されたJ・ディラのプロデュース作品としても有名ですね。実際殆ど忠実にボビーの原曲を使っているのですが、ラップが加わることで微妙に違う楽曲に聞こえてしまいます。
ボビーのオリジナルバージョンは、イントロのピアノとヴォーカルだけのパートが、メロディが引き立っており実に美しいですね。淡々と歌われる曲調ですが、ボビー自身のギターソロも素晴らしい。アップした映像は、なぜか映画「白いドレスの女(Body Heat)」が用いられたもの。でも妙にあってますね。

それにしてもこの曲をサンプリングするCommon(いや恐らくJ・ディラかも)のセンスが素晴らしい。Commonバージョンもアップしておきます。

ファンク・ナンバーも本作には収録されております。それが⑦「Mother Of Creation」。KC&ザ・サンシャイン・バンドを輩出したTKレコード「らしい」ナンバーとも言えます。マリンバっぽい音も聞かれ、ファンクでありながらもマイアミ・サウンドっぽいユニークなアレンジですね。このアルバムにはドラムはアンディ・ニューマークやエド・グリーン等が参加してますが、このドラムはエド・グリーンでしょうか。
ちなみにTKレコードはこの時期に倒産してしまい、本作は全くプロモーションが出来ず終いだったようです。

エンディングはボビーらしい哀愁のメロディを持つ⑧「I Don't Want To Lose Your Love」。こういう楽曲は一聴してもその良さがあまり分からないのですが、繰り返し聴いているうちに胸に染みてくるような楽曲です。物思いに耽っているような夜、BGMで流れてくると効果的な曲ですね。この曲もよく聴くとドラムがタイト。アンディ・ニューマークが叩きそうな音です。

掲記の通り、所属していたTKレコードが倒産し、米国ではそれほど人気に火が付かなったボビーですが、日本では「Heart Of Mine」のヒットで一定のファン層を獲得していきます。
一時期はスタンダード・ジャズに傾倒していくのですが、2015年に発表した「Cool Uncle」は新進気鋭のジャック・スプラッシュとタッグを組んだ意欲作で、まだまだボビーが現役であることを証明するようなアルバムでした。それだけに今回の訃報は残念です。今まで素晴らしい音楽を有難うございました。R.I.P.

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