見出し画像

Larry Carlton 「Plays the sound of Philadelphia」 (2010)

フィリー・ソウルといえば、ギャンブル&ハフのライターチームがあまりにも有名ですね。フィリー・ソウルを生み出していったレコード会社がフィラデルフィア・インターナショナル・レコードで、ギャンブル&ハフ(ケニー・ギャンブルとレオン・ハフ)はそのレコード会社の設立者です。そしてフィリー・ソウルの名曲の多くが、このライターチームによるものなんですね。
本作はフィリー・ソウルの名曲達をフュージョン界の重鎮、ラリー・カールトンがカバーしたアルバム。私がフュージョン好きになったキッカケを作って下さったのがラリー・カールトン(もっといえばラリーのAlone/But Never Aloneってアルバムがそのキッカケです)。そのラリーが、私の好きなフィリー・ソウルをカバーしたのですから、悪い筈がありません(笑)。 ラリーのブルージーでありながら、華麗なギタートーンはフィリーにぴったり。

まずはオープニングの①「Could It Be I'm Falling in Love」、最初はスピナーズでしょ(笑)。フィリー・ソウルの代表選手ですね。そもそもこの曲の邦題が「フィラデルフィアより愛をこめて」ですからね。この曲をトップに持ってきた意義はよく分かります。
メロディを優しくラリーが弾き語ってくれてます。やっぱりラリーのスムージーな奏法、またどことなくねっとりとしたプレイは、フィリーにピッタリ。

⑤「I'll Be Around」もスピナーズの代表曲ですね。ラリーは⑪「Mighty Love」でもスピナーズをカバー。本作全11曲中、3曲がスピナーズのカバーなので、余程のお気に入りのアーチストなんでしょうね。

本作中、一番フュージョン・ライクというか、AORテイスト溢れるカバーが⑦「Bad Luck」。こちらはハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツの代表曲。実は私は原曲を知らないまま、本作のこの曲を聴いたんですが、イントロのドラムの裏打ちフィルインとか、心地いいシャッフルビートとか、実にフュージョンっぽいので、原曲って、どんなんだろう??って思い、ついつい原曲もチェックしてみましたが、これがまた実にカッコいい!!
特にテディ・ペンダーグラスのリード・ヴォーカルが絶品。バックの演奏もソウルフルでありながらも、しっかりフュージョンっぽい。これはラリーが惹かれるのも理解出来ますね。

⑨「Mama Can't Buy You Love」は意外にもエルトン・ジョンのカバーです。フィリー・ソウルの多くはシグマ・スタジオで収録されたものですが、そのシグマ・スタジオには、そのサウンドに魅了された多くの白人アーチストもこぞって収録しに来ました。エルトン・ジョンもその一人で、1975年には「フィラデルフィア・フリーダム」なんていうヒット曲も生み出してます。この曲自体はシグマ・スタジオ収録ではありませんが、1977年にはシグマ・スタジオにてトム・ベルにプロデュースを全面的に委ねた「トム・ベル・セッション」を制作。この「Mama Can't Buy You Love」はその中の1曲で、フィリー・ソウルらしい重厚なオケ・アレンジが、甘酸っぱいメロディを盛り上げてくれます(そういえばトム・ベルも昨年12月に亡くなられているんですよね)。

ここではアップしきれませんでしたが、他のカバーも秀逸です。この時期、ラリーはフォー・プレイを脱退した直後で、自分がやりたいことが出来る時間、立場にあったと思われ、それがそのまま、本作での伸び伸びしたプレイに繋がってます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?