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Jimmy Webb「Just Across the River」(2010)

急速に寒くなってきましたね。巷ではもう日本も「四季」ではなく、「二季」だとも言われてますが、確かにそんな感じがしないでもないですね。
そして関東は朝から雨…。こういう時はハートウォームな曲が聴きたくなります。連休でもあるし、まさにこういう時にピッタリな1枚。

チョイスしたのは私の大好きな作曲家、ジミー・ウェッブ。ジミーといえば1967年に発表されたフィフス・ディメンションの「Up,Up And Away」。ジミーの曲が詰まった素晴らしいアルバムでした。

本作はジミー自身、1996年発表の「Ten Easy Pieces」に続く二作目のセルフカバー・アルバムです。しかも今回はジミーの曲を愛するミュージシャン達がそれぞれデュエットしております。彼のために参加したミュージシャンが凄いのです。

本作のハイライトは何と言ってもジャクソン・ブラウンと歌う⑤「P.F. Sloan」でしょう。
この曲は1970年発表のセカンド「Words and Music」にて発表され、1977年発表の「El Mirage」で再度採り上げられている名曲。タイトルの通り、P.F.スローンを歌ったもの。

 ♪ I have been seeking P.F. Sloan
   But no one knows where he has gone ♪

P.F.スローンは知らなくても、1965年のバリー・マクガイアの大ヒット曲「Eve Of Destruction」はご存じの方も多いのではないでしょうか。この作者がP.F.スローン。当時、彼はダンヒルの専属ライターで、この翌年にもジョニー・リヴァースに提供した「Secret Agent Man」が大ヒットを記録します。そしてスローンは自ら歌う活動も同時に行っていきます。そんな活動をダンヒルは苦々しく思い(彼を専属ライターとしておきたかったため)、ダンヒルはシンガーとして独立をするなら過去の作品の著作権を放棄し、また過去の曲も歌うことを禁じることを条件とする旨申し入れし、なんとスローンはそれを了承した上で独立します。それほどSSWとして自立していきたかったんですね。

ところがこれが全くうまくいかず、精神的にも病んでしまい、スローンは音楽業界から去って行ってしまいます。こうした背景の下、以前交流のあったジミーは彼に敬意を表し、この歌を作ったのでした。そしてジャクソン・ブラウンもまた、そういったSSWとして道を開いていったスローンに敬意を表し、この曲をライブで歌ったりしておりました。
その二人がこうしてこの名曲をデュエットする…、実に味わい深いものがありますね。ちなみにスローンは1994年にようやくアルバムを発表するに至ります。

カントリー界の大御所、ウィリー・ネルソンとの③「If You See Me Getting Smaller」。
ウィリー・ネルソンとの活動でも有名なカントリーシンガーのウェイロン・ジェニングスが1977年に歌ったナンバー。
ジミーも同年に発表された「El Mirage」でセルフカバーしておりますが、本作で再演。ピアノをバックに朗々と歌うジミー、そして2番目から歌うウィリーの強烈な存在感。さすが大御所…。マンドリンの音色が郷愁を誘います。味わい深いですね。

ジミー・ウェッブといえばこの曲、グレン・キャンベルの大ヒット曲の⑥「By The Time I Get To Phoenix」。もちろんグレン・キャンベルが馳せ参じております。
こちらは前回のセルフカバー・アルバムにも収録されている、フランク・シナトラに「最も偉大な失恋ソング」と言わしめた屈指の名曲。
LAからオクラホマまで。男は愛する女性を置いて出ていってしまう…、それを描写した歌詞が共感を得たのでしょう。元々はジョニー・リヴァースのアルバムの中の1曲だったものを、ラジオから流れてきたこの曲をグレンが一発で気に入り、シングル曲として採用。見事に大ヒットにつながったという楽曲。
この後、ジミーは「Galveston」「Wichita Lineman」といった街を冠したタイトル(ご当地ソング)を発表していきます。

私が大好きなJ.D.サウザーも参戦しております。J.D.は⑩「I Was Too Busy Loving You」を一緒に歌っております。
こちらは1982年にグレン・キャンベルが歌っております。こちらも心に染み入る名曲。それをJ.D.が歌うのですから、尚更胸に響きます。
J.D.といえば、彼も2011年に「A Natural History」という素晴らしいセルフカバー・アルバムを発表しておりますが、今回ご紹介しているこのアルバムとサウンドプロダクションが非常に似ておりますね。本作が2010年発表ですから、少なからずJ.D.は影響を受けていたのかもしれません。

最後にご登場するのはリンダ・ロンシュタットです。アート・ガーファンクルがS&G解散後、自身初のソロシングルとして発表したのが⑬「All I Know」です。
この名曲、やっぱりリンダの名唄が光ります。ちょっと愁いのあるメロディですが、リンダが歌うと輝いてきますね。このアップした映像も曲に合っていて素晴らしいですね。

秋の夜長にじっくり聴いてみたいアルバム。他にもビリー・ジョエルやマイケル・マクドナルド等も参加しております。未聴だった方は是非、本作収録の他の曲も聴いてみてほしい。

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