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The Monkees「Good Times !」(2016)

私が洋楽を聴き始めたきっかけとなったバンドがモンキーズでした。もちろんリアルタイムの世代ではありませんが、それでも彼らとの出会いはもう44年前のこと。もう長く聴いてますね。
今ではメンバーであったディビー、ピーター、マイクはこの世にはおらず、ミッキーだけとなってしまいましたが。

2016年、この時点ではディビーが亡くなり、メンバーは3人が存命であった中、突然の新作の発表。これがアメリカではそこそこ売れました。もちろんモンキーズ・フリークの私も直ぐに輸入盤を購入しました。

プロデュースはFountains of WayneのAdam Schlesinger。メンバーの作品の他、Andy Partridge(XTC)やNoel Gallagher、Paul Weller、Rivers Cuomo(Weezer)等が作品を提供。元々モンキーズって、芸能プロダクションによって作られたバンドで、与えられていた作品を歌っていた(一部メンバーの素晴らしい作品もありますが)訳で、今回も一流のライターが顔を揃えた格好です。

全体を通じて、60年代のポップスの香りを残しつつ、古臭くならないように、うまくアレンジしており、楽曲も粒揃いといった印象(1曲目を除く)。印象深い曲を紹介しておきます!

アルバムタイトルトラックの①「Good Times」はハリー・ニルソンの楽曲。1968年1月のセッションなので、本作では異色。あの当時のサウンドです。ハリーの歌うデモバージョンは既に一部公開されてましたね。
ここではその音源を使ったのでしょうか、ハリーのヴォーカル、当時のドラム、ベースが使われてます。ドラムは当時のモンキーズ・セッションでは御馴染みのエディー・ホー。ニルソンにしては珍しく、R&B調の楽曲。当時からミッキーはよくこうした楽曲を歌っていたので、彼のヴォーカルはぴったりですね。

②「You Bring the Summer」からが、この当時のモンキーズのサウンドといえるかもしれません。XTCのアンディ・パートリッジ作の、完全なポップス。ミッキーがリードヴォーカル、ピーターはヴォーカルとオルガン、マイクがヴォーカルとギターで参加。タイトル通り、夏を運んでくるような楽曲で、本作からのセカンドシングル。

③「She Makes Me Laugh」はウィーザーのリヴァース・クオモの作品。楽曲はポップスですが、ギターの音色なんかは、どことなくバーズを思わせます。ここではピーターがバンジョーを弾いてます。本当はこうした楽曲は間違いなくディビーが歌うとぴったりくるんですけどね。

意外と本作で好きなのはノエルとポール・ウェラーが共作した⑩「Birth of an Accidental Hipster」。かなり強力なロックナンバーで、マイクも歳を感じさせない力強い声を聞かせてくれます。後期ビートルズフリークのノエルらしいナンバー。途中、リズムが変わるところとか、随所に凝ったアレンジが施されてます。②③と比べると、ちょっと違和感はありますが、私の好みですね。

⑪「Wasn't Born to Follow」は1968年3月のセッションのもので、キャロル・キングがシティで演奏していたもののカバー。確か当時、バーズもカバーしていましたね。ギターにアル・ケーシー、ベースはマックス・ベネット、ドラムはアール・パーマー、ヴァイヴはミルト・ホーランド。当時の黄金セッションメンバーですね。フォーキーなサウンドといい、ピーターのヴォーカルといい、どれもいい味だしてますね

真のモンキーズファンにとっては、メンバーのオリジナル作品が気になるところですが・・・。ピーターは⑨「Little Girl」というワルツ調のピーターらしい落ち着いた楽曲を提供。ディビーのことを思いながら作った作品とのことで、ピーター曰く「自由になりたい(I Wanna Be Free)」のフォローソングとなって欲しい由。またマイクは⑫「I Know What I Know」を提供。マイクのことだから、こってりしたカントリーかなと思ったら、比較的地味なスローバラード・・・ですね。ピーターもマイクも、アルバムの中の1曲として聴く分には味わい深い楽曲を提供してます。一方ミッキーはアルバムエンディングの⑬「I Was There」をアダムと共作。こちらは力強いロックナンバー。歌詞もカッコよく、ミッキーだけはロッカーとして未だに現役(笑)・・・と思わせる仕上がりです。

新旧の音源を取り混ぜたモンキーズの最後のアルバム。特に新しいモンキーズナンバーは素晴らしいポップスだし、昔の音源にしても、相変わらず味わい深い。本作を一貫性のないアルバム、と表するご意見も聞かれますが、もともとモンキーズって、特に後期のアルバムは楽曲寄せ集め集的なものだったし、いい楽曲を採り上げようとするスタンスは不変。再結成もののアルバムとしては、非常にいい仕上がりなのではないでしょうか。

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