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Brian Wilson「Brian Wilson」(1988)

暑い夏、いや暑すぎる夏が到来しました。ある日、ラジオからビーチボーイズが流れてきて、「ああ、やっぱり暑い夏はブライアン・ウィルソンの楽曲がお似合い」と思い、ここ数日は本作を聴いております。

1988年のビーチボーイズといえば「ココモ」ですね。トム・クルーズ主演の映画「カクテル」の主題歌として発表され、見事全米No.1を獲得したあの名曲。でもこの曲、クレジットにブライアン・ウィルソンはおりません。当時、ブライアンは精神科医(ユージン・ランディ)の治療の下、なぜかビーチボーイズの面々からは隔離されており、この「ココモ」制作時もビーチボーイズの面々は、ブライアンと連絡が付かなかったと云われています。

そんな中、ブライアンはソロアルバムを制作していたわけで、当時本作リリースの1週間後に「ココモ」が発表され、結果「ココモ」がビッグヒットを放ったという因縁の対決…みたいなものがありました。後のユージンとの訴訟等々を鑑みると、ユージンのマインドコントロールにブライアンが陥っていたような状態だったようです。

さて、本作ですが、長い長いビーチボーイズのキャリアの中で、ようやく初のソロアルバムの発表に至ったブライアンですが、当時は完全に「ココモ」の陰に隠れて本作、私自身は殆どノーマーク状態でした。その後ブライアンは「Imagination」や「Smile」、「No Pier Pressure」等々を発表し、それはチェックしていったのですが、なぜか肝心の本作には興味が向かず、最近、ようやく本作の素晴らしさに気付いた次第です。

プロデュースはブライアン自身と、曲によっては共同プロデューサーを器用しております。
ドラムにリバーブをかけ過ぎたり、シンセ音が耳についたりと、この時代特有のオーバープロデュース気味なサウンドがちょっと残念ですが、メロディそのものは間違いなくブライアンそのもの。ポップスの玉手箱です。コーラスにカール・ウィルソンやアル・ジャーディン、ブルース・ジョンストンが加わっていたら、どんなに素晴らしかったことだろうと思ってしまいます。

まずは本作中、私の一番お気に入りをご紹介します。それが③「Melt Away」…。
もう最初のフレーズから泣きのメロディ…。そして豊潤なコーラスの嵐、これがブライアン・ウィルソンですね~。バックのパーカッション等のアレンジは80年代風ですが、ペットサウンズを彷彿させますね。あ~、このコーラスがカールやアル、マイクだったらもっと感動ものなんですけどね。3分弱の素晴らしいポップス。これがブライアンの音楽の魔法です。

オープニングは後にブライアンのコンサートでは欠かせないナンバーとなった①「Love and Mercy」。2014年に公開されたビーチボーイズの伝記的映画のタイトルにもなりました。ブライアンにとっては大事な1曲なのかもしれません。ここでも間奏の心穏やかなコーラスがハイライトとなっております。もう往年のハイトーンコーラスが出せない声となってしまったブライアンですが、この当時まだ46歳だったんですね。あらゆる困難を乗り越えて、ようやく辿り着いた新境地。この後、35年経った今も現役であり続けるブライアンに感謝…ですね。

達郎さんばりのアカペラもしっかり収録されております。いや、ブライアンが本家ですね(笑)。それが⑥「One for the Boys」。
まだまだブライアンの創造の泉は枯れておりません。本作ではインタールード的な役割で収録されてますが、心洗われる1曲です。

なんとジェフ・リンとの共作の⑨「Let It Shine」。ジェフ・リンは数々の大物アーチストと共演しておりますね。こちらもジェフとブライアンらしいポップス。悪い筈がありません。アレンジがちょっとELOっぽいフレーズも飛び出してきますが、うまくブライアン風に料理されております。アカペラの部分はもちろん大合唱(笑)。

本作中、一番キャッチーなナンバーの⑩「Meet Me in My Dreams Tonight」。こちらも③「Melt Away」と同様にブライアンらしい素晴らしいナンバーです。とにかくコーラスが素晴らしい。コーラスはブライアンの一人多重録音ですが、間奏の♪ My Baby Love~ ♪ とサポートで入ってくるコーラスなんかはブライアンらしい。すごくキラキラしている往年のポップス、いいですね~。

恐らく本作中、一番のハイライト的な楽曲が⑪「Rio Grande」でしょう。
好き嫌いが大きく分かれそうですが、イントロから往年のペットサウンズ~スマイルを彷彿させるアレンジとメロディ。そしてこの曲は8分強ありますが、壮大な組曲となっている点がミソ。まさにスマイルの世界。映画を観ているような音の展開。これぞブライアン・ワールドですね。

2012年8月、ブライアンはビーチボーイズのメンバーとして来日してくれました。私もしっかり名古屋で参戦。その時の拙ブログ記事はこちらですが、もう既にブライアンは置物のような感じでした(苦笑)。それでも今も現役。昨日、突然まだ77歳だったランディ・マイズナーの訃報が飛び込んできました。ブライアンも既に81歳。長生きして頂きたいですね…。

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