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Elvis Presley「On Stage」(1970)

60年代、エルビス・プレスリーは軍隊を除隊後、活動の中心を映画に移していきますが、1968年12月に「カムバック・スペシャル」と題されたTVショーに出演し、再び音楽活動に力を入れ始め、1969年1月には伝説のメンフィスセッションを行います。
個人的にはスワンプ音楽が世間一般的に拡まったのはエルビスのお陰と思ってますが、このメンフィス・セッションは実に味わい深いスワンピーな音楽が堪能出来ます。ロカビリーのエルビスには興味がなくとも、私がこの頃のエルビスに興味があるのは、ソウルフルな南部音楽が楽しめるからなのです。「On Stage」は、この頃のステージを収めた貴重な音源なのでした。

会場は有名なラスベガス・インターナショナル・ホテル。1969年夏、1970年1月、そして1970年夏と、計3回のステージが組まれ、この作品は1970年1月のライヴを収録したもの(「Runaway」「Yesterday」のみ1969年夏のものですが)。

バックのメンバーも名うてのミュージシャンばかり。ギターは名手・ジェームス・バートン、ベースはジェリー・シェフ、ドラムはロニー・タット・・・ではなくボブ・ランニングのようです(この点は後述します)。
バンドはTCBバンドと呼ばれ、ジェームス・バートンがリーダーを務めてました。このアルバムはエルビスのソウルフルなヴォーカルとTCBバンドの熱い演奏が堪能出来ます。

イントロのジェームスのカッティングギターが光る①「C.C. Rider」。
エルビスが得意とするロカビリータッチのトラディショナルソング。ギターソロもはジェームスらしいカントリータッチ溢れるスリリングなもの。
1曲目から熱いです。

ニール・ダイヤモンドの大ヒット曲、③「Sweet Caroline」。二ール・ダイヤモンドはモンキーズ・ファンにとってはあまりにも有名な存在のシンガーソングライターですね(大ヒット「I'm A Believer」の作者)。
エルビスは時のヒット曲をうまく歌いこなす名手でもありました。実に味わい深い歌いっぷりです。

それにしてもデル・シャノンのヒット曲④「Runaway」のカバーはあまり気に入りません。
これはライナーノーツにも書いてありましたが、エルビスが歌う必然性がよく理解できませんね。スワンプのかっこよさに絞ればいいのに、やっぱりディナーショー的な雰囲気を出すにはこうした楽曲やビートルズの「Yesterday」」が必要だったのでしょうか?
(でもここでのジェームス・バートンのギターもかっこいい・・・)

このアルバムでのハイライトは・・・と聞かれれば、間違いなく⑥「Polk Salad Annie」でしょう。この曲、明らかにディナーショー向きではありません。土臭い男のロック、これぞスワンプの極み、トニー・ジョー・ホワイトの名曲ですが、これがまた最高にかっこいい・・・。時間のない人はとにかくこれだけは見てほしい。
YouTubeにアップされている映像を見ていて、このアルバムの音源と何か違う・・・と思ったら、ドラマーが違うのですね~。アップした映像はTCBバンドのロニー・タット。そしてこの音源のドラマーはボブ・ランニング。
例えばイントロでエルビスが台詞を語るシーンで Polk バン! Salad ババン!と合いの手をドラムが入れるのですが、その音が明らかに違う。映像のロニーの迫力は段違い。それから映像では3分25秒あたりからのリズムが激しくエルビスを揺さぶるシーン、これなんぞ、ボブのプレイがしょぼく聴こえます。
(映像は1970年夏のステージのもの。「Sweet Caroline」でアップした映像もその時の模様ですね)
ロニー・タット、恐るべし。それからエルビスのスワンピーな姿に感動です。

スワンプといえばCCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)。私の大好きなバンドです。そしてスワンピーなエルビスがカバーしないハズはありません。CCRの代表曲でもある⑧「Proud Mary」。
エンディングに向かって曲が転調していくアイデアはジェームス・バートンによるものでしょうか? アップした映像はラスベガス・インターナショナル・ホテルでのものではなく、もっと脂の載った演奏です。

山下達郎ファンの私にとっては⑩「Let It Be Me」はエバリー・ブラザーズのヴァージョンが耳に残っているのですが、ここでのエルビスは見事にロッカバラード調に歌い上げます。やっぱり歌、上手いですね。

エルビスのファンでもない私が申し上げるのも気が引けますが、この当時のエルビスがデビュー当時よりも、一番輝いていたかもしれません。音楽的にもTCBバンドに支えられ、非常に充実していたと思われます。


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