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浜田省吾 「J.BOY」 (1986)

1986年、当時私は高校3年。突如全くTVに露出しないアーチストのアナログ2枚組の大作が、オリコンアルバムチャートの1位を記録。その作品が今回ご紹介する「J.BOY」です。
実は当時、私が夢中になっていたのは大江千里、バンドでコピーしていたアースシェイカー、そしてアイドルでは岡田有希子(但し彼女はこの年の4月に他界)。浜田省吾は全くスルーしており、大学に入り、ハマショーもバンドでコピーするようになったことから、遅ればせながら後追いで彼の音楽を知った次第。

特に初期のフォーキーなアルバム、そして楽曲のクオリティがとても高い本作はすぐにお気に入りの1枚になりました。

アルバムトップを飾るのは①「A New Style War」。
このピコピコサウンドと80年代を感じさせるシンセイントロは、ZZトップの「Legs」とかヴァン・ヘイレンの「Jump」なんかを彷彿させますし、オープニングを飾るに相応しいイントロですね。この曲に限らず、本作全体のアレンジに、80年代洋楽の影響が垣間見られます。元来、素敵なメロディを紡ぎだしてきたハマショーですが、本作で、(当時としては)より洗練されたアレンジで、変貌を遂げたのでした。
アップしたのは2011年のライブバージョンです。

ちょっとノスタルジックな③「America」。
1984年、彼女はダンサーを夢見て、そして自分は日常生活から逃れるためにアメリカへ。そんな若かりし頃を懐かしむ楽曲が、曲調とマッチし、郷愁を誘います。ギターの音色はバーズに代表される60年代フォークロックの香りを感じさせますし、曲調も60年代ポップスっぽいですね。印象的なコーラスは盟友、町支寛二。彼のコーラスアレンジは絶品です。

80年代風ロックンロールの④「想い出のファイヤー・ストーム」。
冒頭のタム回しのシンセドラム、アップテンポなドラミングがモータウンサウンドを彷彿させます。ドラムは本作制作から参加し、ハマショーバンドに加わった高橋伸之。ファルセット・ヴォイスを生かしたコーラスはビーチボーイズから影響を受けたもの。間奏のアカペラも大好きです。

サックスのソロから始まるメロウなバラードのインストの⑦「晩夏の鐘」。この美しいメロディを奏でるサックスは当時バンドメンバーだった古村敏比古。古村敏比古は織田哲郎との交流に端を発し、ハマショーを含め、多くのミュージシャンと共演している名サックスプレイヤーです。自身も10枚以上のソロアルバムを発表してますね。この曲は学生時代にカバーしましたが、サックスがメタメタだと、全く締まりません。古村敏比古のための1曲かもしれません。

あまりにも有名な⑩「もうひとつの土曜日」は、我々世代のカラオケの定番。誰もが一度は歌いたい歌なのではないでしょうか。
エレピのイントロを聴いただけで、涙腺が緩んでしまいます。これも歌詞が泣かせるし、歌詞とメロディが相まって、歌詞の持つ世界感に共感してしまいます。

ここからディスク2…ですね。⑪「19のままさ」は歌詞が初期のフォーキーな楽曲を彷彿させる名曲。実はこのアルバムの中で一番好きな曲かもしれません。浪人時代に付き合い始めた2人だけど、「春になれば すべてうまくゆくさと」クリスマスの夜に別れた2人。そして社会人となった今、「僕等もう二度と あの日のきらめき この胸に取り戻せない」と2度と会うことはない彼女を思い、「僕はほら ネクタイしめて 僕が僕じゃないみたい」と、今の自分を嘆く。特に歳を取った自分が、世間に揉まれてしまい、僕が僕じゃないみたいって、誰でも感じることじゃないでしょうか。この歳になっても胸に染みる歌詞です。

コーラス好きの町支寛二のアレンジが冴えるアカペラの⑮「こんな夜は I Miss You」。60年代ポップスが大好きなハマショーと町支寛二らしい1曲。これはビリー・ジョエルもやっていたアカペラからの影響を受けたような曲ですね。

そして、様々なJ.BOYを描き出した本作は、素敵なインストの⑱「滑走路-夕景」でクロージングを迎えます。アルバムのクロージングテーマにぴったりのメロウな、胸に染み入る楽曲です。

本作はバラエティに富んだJ-POPの名作名盤です。2枚組ながら、全く飽きることなく全曲を聴かせてしまいます。もし聴かれたことがない方がいらっしゃいましたら、一聴されることをお勧めします。

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