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ダイヤモンドは永遠に(16億年くらい)

さて引き続き、宝石とジュエリーの勉強をみっちりしている。
今日はダイヤモンドを中心にやった。

ダイヤモンドは、炭素なのに鉛筆の芯となぜ違うのかという事から、ダイヤモンドはどうやってできるのか、どこでとれるのか、人工のダイヤモンドはどこで誰がどういう目的でつくっているのかとか、いろいろ。

一言でいうと、ダイヤモンドは鉱物としてロマンの塊。
昔々、大体古いものだと16億年、最近の話だと5000万年くらい前に、炭素がマグマで地上に噴火で急に出てきて冷えてダイヤモンドになった(端折りすぎ)。
これがゆっくり地上に出てくると、鉛筆の芯のようなグラファイトと呼ばれる黒く柔らかい炭のような素材になる。
ダイヤモンドは過激な環境でないと生まれない。

その昔はダイヤモンドを掘り出すという考えはなくて、地上に押し上げられたダイヤモンドの鉱脈が風化によって崩れて、丈夫なダイヤなどの宝石だけが残り川などに沈んでまたそこで鉱床となる。
それを漂砂鉱床という。

漂砂鉱床!
これだけで私は結構ロマンで胸がいっぱい!
川の底にダイヤモンドが落ちているんですよ。昔は、ダイヤは拾うものだったのだ。というか、すべての宝石は拾ったり、洞窟の奥に探し当てたり……ロマン!ロマンが過ぎる!!
川底に積み重なったダイヤモンド、ダイヤモンドの川底を流れる水。
「ダイヤモンドの天然水」っていって売り出したい。顔につけたら肌がつるつるになって、飲んだら万病が治り、偏差値が上がって友達も増えて宝くじに当たり、私を大切にしてくれる素敵な彼氏と今度結婚します。

最初にダイヤモンドに気が付いたのはインドの人たちだったらしい。
そして、ダイヤモンドが8面体に平行してならうまいこと割れるという劈開(へきかい)と呼ばれる性質があることも早々にわかっていたらしい。紀元前4世紀ごろ。

古代はダイヤモンドが硬い石だという事で珍重されたようだ。
また、漂砂鉱床のダイヤモンドは基本的に相当質の良いものだけが残っているので、見た目もなかなかに美しいものだったのではないかと思われる。ラフダイヤモンドといって結晶のダイヤは8面体でとてもきれいだ。
でも、カット技術がないから今のような燃えるようにきらめく存在ではない。何なら水晶のほうが偉い。
それでも、「あの石、いいよね」ってなるくらいには人の気を引いていた。

人間は月にさえ行けるが、地下には数キロが限度である――――と教科書にはちょいちょい詩情のある言葉が差しはさまれていて、勉強していくにはちょっとめんどくさいんだけど、確かにおっしゃるとおりである。

それまで川底などから拾うような方法でしか取れなかったダイヤモンドが、実は直径1キロもある鉱脈として存在しているとわかったのは1850年代の南アフリカでのことだ。
結構最近です。
直径1キロのパイプ状のダイヤモンド鉱脈はキンバーライトと呼ばれている。

直径1キロの鉱脈。想像がつかない。
その想像がつかないものを、上から下まで抑えて価格と供給の安定を図っているのが、ご存じデ・ビアス社。
ここら辺は、世界史とか経済史、はたまた007までとにかく楽しい。イギリスの植民地政策の権化みたいな男が、想定外に発見された桁違いの資産となる可能性(大暴落の悪夢を同時に抱えている)であるキンバーライトを管理することで価格を安定させようとしたのが、その始まりだ。
世界征服、経済を手中に納めるという強烈な上昇志向もあったと思うけれど、実はアフリカの隠し持っているダイヤモンドはその何倍もあったと後になってわかってくる。
おまけにロシアでも似たようなのが発見される。
一度は手中にしたと思った強大な資産が、地球の豊かさゆえに崩壊していく。
宝石は、何より希少性がその値を高くする。
たくさんあってはいけないのだ。
なのに、どんどん出てくる。という事で、一度は全世界のダイヤモンドを手中に納めたと思ったデ・ビアス社は、ちょっと失速する。
けれど、またしても凄腕の、あるいは凶悪なダイヤモンド商人が登場してデ・ビアスの一社独占スタイルが強化されていくことになる。

007の「ダイヤモンドは永遠に」はデビアスに従わないたくさんのダイヤモンド鉱山に対するデ・ビアス社側のいやがらせがストーリーの軸になっているそう。ダイヤモンド密輸組織って、デ・ビアス社から見たら密輸ってことで、規制している側(既得権益側)の言い分という事になる。

このあたりのきな臭い感じもそれはそれで大変読み応えございます。
もちろん一社独占状態は良くないのかもしれないが、すべてを統制する機構があるという事で保たれている秩序と平和もある。昔は人間の命は宝石よりもずっと軽かった。そういう文脈の上にあるので人道的ではない形からのスタートだけれど、これが自由になったらよりよい世界が来るのかというとそうでもないという「大人たちの事情の結晶」だったりもする。
多くの宝石類は在庫状況、入荷状況ははっきりしないのだけれどダイヤモンドだけは違う。管理されて安定的に供給される。
そして、みんな知らないだけで、いうほどダイヤモンドという宝石は高くはないのだ。(もちろん高いものもあるという注釈付きにはなるけれど)

ちなみに、ダイヤモンドは別に指輪になるためだけに存在しているのではなくて、かなり多くの部分が工業用として使われている。
人工ダイヤもあるけど、作っている会社は宝石用として作ることはあまりなく最初から工業用利用を目的としているときっぱり宝飾業界に宣言しているくらいです。
硬いことも重要だけど、熱伝導率の高さと熱を持った時に膨張する割合が非常に少ない物質だからだ。人工ダイヤは半導体なんかにも使うらしい。

という、歴史的背景と経済史と、世界の覇権をどうするのかみたいな話から見てもダイヤモンドは面白い。
ただ美しい光る石というだけで、世界経済に大きく食い込むのだ。

しかも、ダイヤモンドは固いから今のように美しく輝く宝石に格上げされるまでに長い時間がかかっている。
そして人間が適切な角度で磨かないと輝くことができない。
「カットは唯一人間がダイヤモンドの美しさに関われる部分」といわれているが、ほかの大きさとか透明感とかは人間にはどうしようもない。しかしカットがなくては輝かない。

ダイヤモンドのカットは、上半分とした半分で役割がある。
上半分はクラウンと呼ぶ。そこは光を集める。
下半分はパビリオンという。クラウンで集めた光を、ダイヤモンドの持つ屈折率と反射率の高さを利用してパビリオンの中で反射させてクラウンに戻す。
そうすると、ダイヤに入った光が複雑な輝きとなって私たちの目に飛び込んでくるようになっているのだ。

ダイヤモンドは、光だ。

この構造を聞いただけで、またしてもロマンで動悸が止まりません!!!

いま手元にあるダイヤモンドは直径が4.5ミリくらいのコニャックダイヤ(ブラウンカラーの深いやつ)なんだけど、クラウンから入った光がパビリオンで増幅されてクラウンに戻ってくる……と思って眺めると、最高にいい気分になれる。
ピタゴラスイッチ的な「しかけ」がロマン心をくすぐる。
全反射されるように臨界角でカットして、カット時に傷やカケが起きないように職人技で仕上げていく、それがちっちゃいメレダイヤでも行われている。
本当に小さくてもダイヤモンドはよく光る。
あのメラメラとした光のことをファイアと呼ぶのだけど、永遠に消えない火。

ダイヤモンズ アー フォーエヴァーエヴァーエヴァー………

16億年前からようこそ。
今のように光学的設計を持って輝けるようになったのは、20世紀の話。
どうしても人類はダイヤモンドを輝かせたかったのだ。
そして人類がダイヤモンドを光らせて、しかもそれを貴族の生まれでない私でさえ手にすることができる時代に生まれたことは、奇跡でしかないと思う。

ダイヤモンドで胸がいっぱいだ。


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つよく生きていきたい。