天才と呼ばれたい

美人だきれいだかわいいと言われるよりも、天才と言われたかった。

「明日50万円を払わないと家を取られる」と母から電話がかかってきた。それで、私は悟った。逃げ切れなかったんだ。逃げるために東京に来たのに、逃げられなかったんだ。

そこから怒涛の展開がはじまるわけですが、とにかく実家にお金をいれなきゃいけなかった。でも私は東京で仕事をしているし、実家は田舎だし、返ったところで仕事はない。東京で二倍働いて金を送るか?あるいは実家が働いて金を作るか。選択肢は、ふたつはあった。

わたしは後者を選んだ。
なんで壮絶な家庭内暴力を通過して殺すか死ぬかのどちらかという状況からやっと逃げたというのに、また親のために身を粉にして働いて金をおくらなきゃいけないの。
だったら仕事は作ってやる、金は稼げ!
という事だ。

これが結局、図らずも起業という事になった。

で、とにかく儲かってもお金は一銭も入ってこないだろうという事は感じていた。借金がいくらあるかは教えてもらえなかった。兄弟たちが家探しをしていくらあるか調べようとしたけど、書類もどこにあるかよくわからなかったらしい。とにかく、問題のある家なのだ。

まあ、億はないだろ。

そう考えた。それで充分だった。

でもお金が入ってこないのに、必死にやるにはやっぱりリターンというか、どこかやっただけの何かが必要だった。いくらわたしが借金から逃げたくて、ホームレスになるのが嫌で、恐怖に取り憑かれて頑張ったとしても、プラスのリターンが欲しかった。
それは金銭以外のモチベーションでなくてはいけなかった。
(お金は全部借金に消えちゃうからね)

それで、わたしはどうなりたいのかなって思った。
その時に思い出したのが、子供の頃「あーこれで私は天才少女だと言われずに子供時代が終わるんだな」ってちょっと寂しく思いながら堤防を歩ていたという事だ。

そうだ。わたしは天才だった。
ただ、周りが天才だとわかるようなことをしなかった。
それはわたしの怠慢でした。

じゃあ、今度こそ、天才とわかることをしよう。わたしが天才だと世に知らしめよう。
借金まみれの過疎地の倒産レストランからとんでもないビジネスを叩き上げたら、どう考えても天才だろ?
コネもない、金は見事にない(電気代が高いからって冷蔵庫の電源が抜けてた)、学歴も専門知識も資格もなかった。社会的な立場でいったら単なる20代の受付嬢だった。それが、たった3年弱で1000万円以上の年商を作った。受付の仕事をしながら東京と田舎の距離感もありながら、それでもやったら、少なくともわたしの才能だと誰かは気づくだろう。

わたしは、天才と言われたかった。
天才だって気づいてほしかった。
それが既定の天才でなくてもいい。でもわたしはどう考えても天才だった。
そういったら、きっとみんな「痛いコ」みたいな目でわたしを見るだろう。だから黙っていた。でも、わたしは天才だって世に知らしめたかった。

わたしが天才だとわかる状態になった時には、実家には注文がバンバン入ってお金も入ってくる状態になっている。
だから、実家に金が入るようになればわたしは天才だと証明される。

これがわたしを支えた強烈なモチベーションだった。

結果。

今は数人、いや十数人くらいには「天才枠」「狂気のひと」と言われている。
最初のビジネスは作ったはいいけど、途中で弟に全部持っていかれてしまった。なので、もう一回別のビジネスを立ち上げて、これがうまくいったら前のも偶然うまくいったわけでもなさそうだとわかるだろう。
今は、まあまあうまくいっている。

まだ本当の天才だと世に知らしめるにはもう少し必要だと思う。
待ってろ世界。わたしが天才だって思い知れ。

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つよく生きていきたい。