値下げはしない。お客さんの得る価値が減るから

最初から強気の値段設定だった。
でも、クオリティをあげて、強気どころかコストパフォーマンスがいいねと言われるくらいに持っていく覚悟はあるし、それは着実に進んでいる。
なんで値段を強気でいったのか。
それは、売上やキャッシュフローとかいう話以上に、お客さんが得る価値を下げないためだった。

もちろんビジネス形態によって値下げが重要な局面もあると思うけれど、わたしはものを作ってユーザーに売るBtoCの場所でビジネスをしている。

お客さんにとって重要なのは、その商品にどれほど価値があるかという事だ。

価値というのはあらゆる角度から構成されている。
現在、私が一番間違っていると思うのは、いわゆる「コスパ」というものだ。
コスパがいい=安いものを買う事を良しとするのが賢い消費者という自負を持っている人たちがいる。それはそれでひとつの価値観だし、あってしかるべき尺度だ。

でも、それでビジネスを作ったらダメなんですよー!!

消費者は、「コスパがいい買い物ができる自分が好き」なのです。
つまり、コスパのいい商品は、値段を下げる事によってその人の自尊心を高める作用を持っています。
これがコスパがいい商品の最大の心理的価値です。

しかしね、コスパのいい商品=安くていいものって小資本じゃ作るの厳しいんですわ。あれは大資本の仕事です。消費の民主化です。
それに小資本の個人や中小企業が立ち向かうのは、ちょっとスタートラインからハンデが厳しい。
という事実を知らねばならん。
よしんば粗悪なものでもうまいマーケティングってやつで売れたとしても、それは結局どこかで誰かが泣いている場合がほとんどだ。
それは、いいのか?道徳倫理の上での問題ではなく、最終的にそれをかぶる可能性があるって事だ。それはとってもリスキーだと思うのですよ、個人的には。

それに対抗するには、適正価格をつけること。
コスパ大好きな連中と同じ思考でいると、まず適正価格が高すぎてビビってしまう。ここを飛び越えないと、スタートの時点で負債をかぶることになる。

で、さらに言うと適正価格をつけたら、値下げはなるべくしないこと。
無料配布もなるべくしないほうがいい。
サンプル配布もちゃんと考えてやらなくちゃダメ。

なぜかというと、お金を払うという事は、それだけでその商品の価値を高めるからだ。お金を払う事で、自分にとって必要だったと、強く感じ取るからだ。そうしてそのものが持つ力を、十分に引き出す使い方ができるようになる。
もしかしたら、その商品が持っているポテンシャル以上の力を引き出して自分のものにできるかもしれない。

自腹を切るというのは、そういう効果がある。

だから、売り手は半端に値下げをしてはいけない、と思っている。
それはお客さんが得るはずの価値を、売り手が勝手に削り取ってしまう事になるからだ。
売り手の都合(不安などの心理面が大きい)で値下げして売ることで、本来の価値も下げてしまう。商品の品質は変わらなくても、大事な価値を削って手渡すことになる。

それは、泥棒ですよ。

お金を払う人から価値を削り取るなんて、ひどい泥棒です。見えないから許されると思っているのかもしれない。でも、見えない価値だって価値です。それを自分都合で下げてしまうなんて、全然お客さんの事を考えていないじゃないですか。

別に高い値段を吹っ掛けて、ありがたがらせて売れって言ってるんじゃないです。適正価格をつけること。そして、それをうかつに下げないこと。それは売り手のためなんかじゃなくて、一にも二にもお客さんのためなんですよ。
自分が不安だからって、安い値段で変な価値をつけないでください。
怖くても踏ん張ってください。
ダメなら、売れませんから心配しないでいいです。それですごく傷つくこともありますが、お客さんに渡すはずの価値を自分で泥棒するよりいくらかマシじゃないですか。傷ついたくらいでなんですか。そこはもう覚悟をもって、何度も切りつけられても丁寧に毅然とお客さんに渡すべき価値を守り通さなくてはいけないんじゃないですか?
お金がなくても、覚悟があればできます。
でもお金があっても、覚悟がなければできません。

値付けは、難しいです。
覚悟が必要です。
傷つきたくないです。
在庫が余るのも嫌です。売れなかったら困ります。
それでも、毅然と適正価格をつけて、プライドを持ってお客さんに渡す価値を守っていかなくては。あなたがやらなくて、いったい誰がやるんでしょうか。

本当に、その商品の価値を、1gさえ減らさずにお客さんに渡そうと努力している?
価値はいろんな影響を受けて上がったり下がったりします。すべての影響を考慮するのは不可能ですが、でも自分のできる場所くらいは守り切るべきじゃないですか?

それが、値段です。

きれいなパッケージとか、丁寧な接客対応とかもあるかもしれませんけどね、お金を払わせるってすごく重要なんですよ。
もちろん払っただけの対価をきちんと手渡す事が大前提ですよ。
クオリティがないっていうのは、ダメです。もうそこは、あの手この手で全力で高めていかなきゃダメです。どんな手を使ってでも高めていく必要があります。
それもこれも、お客さんに価値を手渡すのが、売り買いの仁義だからです。
詐欺をしたいならともかくね、まっとうに商売するなら。

お客さんは、値下げなんか必要としていないんです。
必要なのは価値をあげる事のほうです。
でも、お金に苦しんだ経験のある人(ほとんどの人がそれなりに感じたことがあるとは思う)は、お金の価値だけを見ちゃって、本当に見なきゃいけない商品の価値を見ない。

覚悟をするのはツラいです。
失敗も苦しいです。
しかし、そんなのはお客さんには関係ない事です。
どれだけ傷ついてもね、お客さんには関係ないんです。
それにどれだけ傷ついても、価値を守り抜く方が重要なんです。

で、結局そうやって守り抜いた価値が、最終的にお金も連れてきてくれるしさ。少し先のことかもしれないけど。

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