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一般人アートバーゼルへ行く■4日目、電車に乗ってザンクトガレンからのチューリッヒ

バーゼルに二日間滞在して(泊まったのはドイツだけど)、チューリッヒに戻るかバーゼルで1日使うかと思っていたところ、事前に「なんかザンクトガレンというかなり古い修道院図書館の世界遺産がある」というのをガイドブックで見つけて、今までスイス観光をほとんどしていないという案内人が「ここはどうです」みたいなことになり、調べたらチューリッヒ経由でほぼ一直線に電車でいけることが分かった。

ということで、4日目はバーゼルを離れ、朝から電車に乗ってザンクトガレンへ。
これも事前に電車の予約を日本でしておいて、当日は切符を買った証明QRコード(アプリでも紙でも)を回ってきた鉄道員の人に見せる。たまにパスポートも見せてと言われる。

荷物を引きずって、バーゼル駅に行き、時間があったので駅でホームを眺めながら少しお茶を飲む。ただのティーバッグだったけどヨーロッパの硬水を使うと紅茶の出方が変わるという説をついに試す時が来たと思って飲んでた。
大体なんでも面白かったし、初めてのヨーロッパなのでいろいろ気になることがあったけど、よくよく考えるとだいぶ安上がりな事ばかりに興味が向いていた気がする。でも絶対に日本ではできないこと。
香水もヨーロッパの空気では香り立ちが変わるというから、いつも使っているものを持っていったけど、それほどか?という印象だった。
ただ、香りはあまり残らない感じがしたので、100mlボトルがガンガン消費されるのもそういう事?とちょっと思ったり。

電車に乗り、1時間くらいでチューリッヒに戻ってそのまま乗り換え。
荷物を引きずったまま、さらに1時間弱でザンクトガレンにつきました。

電車の二階席は意外と揺れがくる。
あとものすごくでっかい黒い犬を連れて乗ってきた人がいた。わんこがふさふさと電車内の通路を歩いていく。新幹線をもっと手狭にした感じの電車の通路を幅いっぱいにわんこが…。

またパンにハムなどをはさんだもの。おいしい

バーゼルからチューリッヒまで50分、チューリッヒからザンクトガレンまで1時間程度。定刻通りに電車は静かに走っていった。
相変わらず、発車ベルもなく、スーッと。車内放送は、ドイツ語からはじまってフランス語、英語など、その時々。向かう方角で言語が選択されている様子。
車内放送する人によっては苦手な言語とかもある様子。

ザンクトガレンの駅について、私はなんとなく東京駅みたいなのをイメージしていて「大きい荷物を入れるロッカーはあるに違いない、世界遺産認定されている観光地ならそのくらいしているはず」と思っていたんだけど、その通りで一安心です。

(あと、有名な(?)ヨーロッパの有料トイレなども体験)
(入り口にお金を入れないと入れない)
(中は日本人の感覚からすると普通のトイレなんだけど、ヨーロッパではそっちが異常らしい)

ところが、ホームを出たあたりで案内人が「こんな現代っぽいの?もっと古い感じを想像していた!がっかり!」とか言い出し、確かにチェーン店らしいテナントが入った地方都市あるあるな感じで、チューリッヒやバーゼルのほうが雰囲気はよかった気がする。

でも、そういう田舎っぽいもっさり感、地方都市にありがちな感じ、「ヨーロッパも同じなんだね!」とか思って私はなんでも楽しかった。

憤慨している案内人を横目に、こっちはいつパニック発作を起こすかちょっとひやひやしつつ薬を少しのみ、まあなんとかという感じです。
常にパニックを起こさない、という強い気構え。(なので気を抜くと顔が怖くなる)

ザンクトガレンの大聖堂

駅から徒歩圏内で大聖堂と、ご自慢の図書館、それから資料室が見れる。

大聖堂は、誰でも無料で入れる、つまり今も稼働中の現役宗教施設なので、そういうところはやっぱり観光スポットとはちょっと違う圧迫感のある空気が入っている。

大聖堂は、装飾がすごかった。
もうみっちり、細かい彫刻、派手な彩色、意味を表す独特な意匠や象徴モチーフを隙間なく盛りつけて、可能な限り盛る、みたいな感じがあった。

祭壇前に柵がある様式は歴史としては浅い方らしい

織物が強い地域って、立体系の装飾強い気がするんだけど気のせいか。
染色が強い地域だと、すごいデカいタペストリーみたいなのをバサーッとかけ平面で攻める感じがある。ヨーロッパの話ではなくて、今までの経験からくる勝手な感想ですが。

木彫とこの少し緑がかった薄い色と金色に白い壁
主は出し惜しむことはありませんと言われている気持ちになる


世界遺産の図書室に漂う現役感

大聖堂を見てから、ご自慢の世界遺産である図書館に向かったのだけど、いまいち場所がわからず、ドアを拭いていた人に尋ねる。

中庭の芝生にみんな座る。右奥のステージなんだろう、ライブでもあるのかな

案内人「英語で聞いたのに図書館だけビブリオテーク(仏語)って言っちゃった」
日本語英語仏語にドイツ語で大変です。(主として大変さの素を作っているのは私です……)

チケットを買った時に、日本語のパンフレットをもらった。さすが世界遺産。絶対変な日本語に違いない、と思って「英語のやつももらったほうがいいのでは?」と案内人にいう。
英語に翻訳するなら意味が通じるけど日本語になると壊滅というのが普通です。(パンフレットの裏面は全面デザイン化されてて、永遠・唯一無二・感激って漢字で書いてあった。家に戻ってきてそれに気づいて、声出して笑った。高校野球地方予選の応援横断幕みたい。パンフレットの同じフォーマットに日本語を詰め込むという無理のある仕事をすごく頑張ってくださったんだろうなというのが伝わってくる)
せっかくもらったのに、結局英語版を見るのを忘れてしまった。そして感激という言葉の破壊力に、元の単語が何なのか、少し想像はつくけどもうその言葉が伝えようとしたイメージは破壊されております。

さて、この図書室。
下足厳禁でスリッパ着用と事前にガイドブックで読んでいたのだけど、「絶対に靴を脱がないヨーロッパで靴を脱ぐの?」と思って興味津々で現場にいったところ、なんと!
靴のままデカいスリッパをつっかけるという、やっぱり絶対靴は脱がないスタイルでした。

もともと足の小さい私は、着ぐるみの足みたいになって、歩くの大変だった。

入り口にも中にもスタッフの人が数人いたけれど、思ったよりこじんまりとした部屋だった。
大聖堂を見た後だと余計かもしれない。
とはいえ、装飾みっちり!みっちりです!すす払いが大変そう!

今見返すとディズニー版美女と野獣でベルが図書室が欲しいと言ってたのってこれか
天球儀?

全体の装飾のすごさにも圧倒されるし、振り返ってみると昨日バーゼル市立美術館で見たホルバインの「墓の中の死せるキリスト」が掲げてあったりして、「あっ、昨日バーゼルで見た!」ってなりました。
同じものをホルバインに発注したのか、別の人が作ったものなのか、そこまではわからなかったけど。

ど真ん中一番奥に「墓の中の死せるキリスト」、画面左が入り口

最初は全体の圧に気圧されたのと、思ったよりちっちゃいなというギャップだったけど、よくよく本を見ていると、背表紙に図書館のあのシールが貼ってある。

「えっ、これいまだに使ってるんじゃない?」
図書館の本の背表紙に貼ってるあのシールって、こんな古い時代から世界共通な形なの?
私は子供の頃、家の前が図書館で、図書館の中で育ったようなところがあるので、過去の日本の地方の図書館と、今の日本と、そして世界遺産クラスの図書館が同じ形式であることに、なんだかとてもしみじみとした。

棚には金網のついた扉が付けられて、がっちりと鍵が付けられていたけれど、つまりしかるべき鍵を持つ人がここをあけて本を引っ張り出して、資料として使う事もあるという事かもしれない。

図書室内はガラスケースに入っている広げてある本をちょっと見ることができるけど、基本的にはどこにも触れない。

資料室で見る古い本

別館に資料室があって、そこも見てみると、博物館のように薄暗いところにいろいろ置いてあった。

タッチパネル式の説明がついていて、なんと言語languageのところにJPNの表示!日本語だ!微妙だけどギリなんとか行ける感じの日本語の説明がある。

案内人は展示品を見ては、「えっ、この本あの有名な!?」とか「これはあれだ!」とかいろいろ見て回っていたけど、いまいちキリスト教の歴史にうとい私は「ベネディクトって派閥(?)はなんか古いやつ…映画で見たような気が……」くらいしかとらえどころがないので、いろいろ歴史的に重いやつなんかなという感じで見ていた。

あと豪華に表紙を黄金と宝石で飾った細工や、象牙をみっちり細かく彫刻して表紙に使っているものもあって、すごかった。
象牙ってところが得に。象牙の塔っていうヨーロッパの言葉にリアリティがつく。(象牙は西洋では珍しいからこういう慣用句が生まれたけど、アジアでは大理石の塔とかになるよね、みたいなことをどこかで誰かが言っていたが、そうなんだろうか?)

象牙、黄金、あらゆる美しい石の表紙

宝石は(半貴石)、ぱっと見でも大体なんの石かわかるような、特徴のはっきりした色の良いものが使ってあって、それはそれは贅沢だった。
加工は、カットなどがまだない時代なのか、石留めも素朴なのだけど、だとしてもその時代でMAXの贅沢さをぶち込んでくる感じ。
相当重量がありそう。

あと、この地を開いた地名の由来でもある跪いて天を仰いで祈る聖ガレンの等身大人形が置いてある。怖いと思ったら負け。心を乱さず、ありがたいと思って眺める。


テキスタイル博物館も意外にこじんまり

ザンクトガレンは織物や刺繍、レースで大変有名な地域らしく、テキスタイル博物館にもよりたいということで、大聖堂から歩いて少しのところの建物に向かう。

入り口にもレースモチーフのオブジェ

こちらも思っていたよりこじんまり。
入場チケットが布!
そして、やっぱり何でもかんでもロッカーに預けるスタイルです。

私はここでレースのハンカチでも買いたいと思っていたのだけど、スイスのあまりの物価高と円安で「買えるものがないのでは?」と思いつつ、それよりも意外とミュージアムショップの品ぞろえが薄いという方が気になった。

あっ、これだけ?(街のお土産屋のほうが充実していると帰国後に知った)

展示物も、言葉がわからないのでイマイチ踏み込めないところが大きかったかも。自分の手芸の知識でなんとかするみたいな鑑賞方法です。

建物のど真ん中に階段を付ける様式

とはいえ、なんでこんなこの地域でレースや刺繍や織物が発達したのかなと思って。
大聖堂の様子を見るにつけ、とにかく教会が派手好みだったから、服飾や刺繍技術が発達したのかなと思っていたのだけど、本当は逆で、織物の産業で大富豪が続出したので、みんな隣の家より派手な出窓を作ってドヤるとかやりまくったらしい。
もちろんゴリゴリに寄進もしただろう。教会も派手になろうというものです。そして何世紀経て観光資源となるので、金があったら使うもんだなというのがよくわかる。

その出窓争いの旧市街地は遠目からしか見てないですが、その話をあとで読むと、見とけばよかったかなみたいな気持ちにもなりつつ、つまり日本でいうところのうだつ(卯建)みたいな感じなのかなってなりました。
写真を見ると意外と見ているので、見てはいた。認識が甘かった。

出窓争いの結果出来上がった美しい街並み
はしゃいでいる

アートバーゼルと美術館系の予備知識を付けるのに重きを置いたのでザンクトガレンの予習が甘かったなーというのが帰ってきてからの反省です。
街に行けば素敵な物が見れるはず、と勝手に思っていたけれど、どこに行っても、疑似土地勘のようなものを最初に組んでおくのは重要だ。
その場に行って違うなら、違う事を手掛かりにできるのだし。

ザンクトガレンからチューリッヒへ

いろいろ見て駅に戻り、スタバへ。
スイスのスタバです。いつも私が頼むのはデカフェのスタバラテなので、国によって違うのかと思って同じものを頼んでみた。

日本より、ちょっと酸味が強い。
あと、なんといってもスイスの牛乳です。たぶん。
スイスに来たら牛乳を飲む、というのもテーマだったのだけど、一応ドイツの半地下部屋でスイスのスーパーで買ったものを飲んで、なんか日本の牛乳より気持ちクリーミー?という感じだった。
カフェラテだと、結構酸味が際立つ感じ。

とても豪華な噴水と銀行(またしても工事中)

その後、時間通りの電車に乗って、大体1時間程度でチューリッヒへ。

最初はすいていたけど途中からゴリゴリに大きいカバンを持った人たちが乗り込んできて、空港経由の路線だったので、空港に行く人も多かったみたい。(ちなみに私が帰る時に空港に行くために乗った電車も、ザンクトガレン行きだった)
荷物置き場はものすごい量のカバンやスーツケースが置かれて、最初の方でおいた私たちのスーツケースはすっかり埋もれていた。
「あらら」みたいになっていたら、ドイツ語でしゃべる女性がおんなじのりで「大変ね、たくさん置いちゃってごめんね」みたいな感じで、まったく意味は通じてないけど会話のようなやり取りが発生。

人が多くなってくると、うっすら発作が始まってひやひやしたけど、なんとか無事にチューリッヒへ戻りました。

チューリッヒのホテルは、駅近のこじんまりとした家族経営風のところを運よく抑えることができ、値段も良心的で(円安が憎い!)、とてもよかったです。

おじいちゃんとおばあちゃんがフロントにいる小さいホテル


チューリッヒでくだをまく

チューリッヒに戻っても、なにせ日没が9時半頃なので、街は当然明るい。

19時でこの明るさ

案内人は明日にはフライトで、私はまだ残るということで、少しだけお酒を飲むことに。
ここまで、私は薬との兼ね合いもあって、酒を飲んで動けなくなるのだけは避けたかったので、まったく飲まずに、水とサンドイッチばっかりでした。
しかしサンドイッチがすごくおいしいので、貧相な食事という感じは全くなく、ずっと「おいしい!おいしい!」と言ってた気がする。


スイスワインは、ほとんど輸出されずに国内で消費されてしまうので、他国で飲むことは珍しいという話です。
単純にブドウ畑をやるくらいなら別のものを育てる、みたいな感じで、生産量が少ない様子。

白ワインで、少し炭酸が残っている舌触り、サラッとして酸味も強すぎず、さわやかな味です。

チューリッヒ自体、観光都市でもあり、ビジネス的にも重要な位置にあるため、お店の人はなんなら日本語の挨拶くらい余裕という国際都市っぷり。
あっちもこっちもいろんな国の言葉が飛び交う。

ちなみに、私は大さじ2杯でべろべろに酔うので、ほんのちょっとだけで十分くだをまく仕上がりです。
チューリッヒで酔っ払ってくだをまくことになるとは思わなんだ。
フリーライドするちいかわの話をしていた。
「スイスでちいかわの話を聞くとは」と言われる。

街角からは、そこはかとなく日本では禁止されている植物の匂いがしている。タバコとは違う、ちょっと独特な植物のタンニンとかに似たえぐみのある感じ。
「あれはコンディションを整えてからでないと」
「やらないからいいです」
大さじ1~2でここまで酔えるので、十分です。

危険なことになる前にホテルに戻り、荷物をなんとかして、シャワーを浴び、シートパックして寝ました。
連日、睡眠薬なしで眠れている。

翌日は、チューリッヒに一人で一日滞在し、チューリッヒ美術館や、チューリッヒの観光スポットを回る予定です。

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つよく生きていきたい。