チャネルのマネジメント

われわれ消費者が買い物をする際は、だいたい身近な小売業者を利用する。その小売業者が揃えている商品は、メーカーが自前の工場で生産した製品を、主に卸売業者を通して届けたものである。メーカーが生産した製品のほとんどは、消費者に届くまで、①メーカー②卸売業者③小売業者の順路を経て、消費者に届く。この順路を流通経路と呼ぶ。
 あるメーカーの製品を消費者に届けてくれる卸売業者や小売業者のことを「マーケティング・チャネル」と呼ぶ。また、メーカーは自社製品を扱ってくれるチャネルとどのような関係を持つべきかは非常に重要な課題である。メーカーによるチャネル選択と、チャネル管理を併せた「チャネル・マネジメント」は、ブランドイメージを重視する化粧品メーカーなどにとっては重要な問題である。
 「チャネル別ブランド戦略」の説明を述べていく上で、大手化粧品メーカーの「資生堂」を例に挙げる。資生堂には、ドラッグストアや量販店以外にも、専門店、百貨店、ネット通販というチャネルがある。これらのチャネルそれぞれに、別のブランドを意図的に配置しようとしている。なぜなら、チャネルごとに消費者の求めるニーズが違うためである。また、各チャネルに同じブランドを配置してしまうと、チャネル同士で消費者を奪い合ってしまう可能性などもあるからだ。専門店では、「専門家に相談しながら、化粧品を購入したい」というニーズを持った消費者がおり、百貨店では、「高い質のカウンセリング、心地良い接客を受けたい」というニーズを持った消費者がいるため、それらのニーズに合わせた接客態度や、価格設定が重要となる。
 ここからはチャネルの「長さ」と「広さ」について述べたい。
 チャネルの「長さ」とは、生産された製品が消費者の手元に届くまでに介在する流通業者の数を示し、一般的には、①メーカー②卸売業者③小売業者④消費者というような、卸売業者と小売業者の2段階チャネルを利用するメーカーが多い。
 チャネルの「広さ」とは、メーカーが卸売業者、小売業者においてどれほど多くのチャネルを通して自社製品を販売するかを決めるものであり、消費者にとって生活必需品の性格が強い商品であればチャネルを広くし、ブランドイメージを守ったり、厳しい価格管理をする場合は、チャネルを狭くするといった戦略がある。
 以上のように、チャネル・マネジメントは「チャネル選択」と「チャネル管理」の2つで成り立っており、製品を消費者に届けるためには、これらのチャネル・マネジメントは避けて通れない問題となっている。重要なのは、メーカー視点のチャネル・マネジメントではなく、あくまで「消費者のニーズ」を起点としたマネジメントをすることである。

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