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中込遊里の日記ナントカ番外編「リヤ王稽古場報告(1)」2019/8/20



およそ半年後の上演の「物狂い音楽劇・リヤ王」に向けて、日々感じたことや思ったことを記そうと思い、書き始める。

劇団鮭スペアレでは、「ロミオとヂュリエット」「ハムレット」「マクベス」に続く、シェイクスピア4作品目。すべて100年前の坪内逍遥訳である。

遠い国の遠い過去の言葉を用いて、日本の伝統芸能を参照しながら、現代日本に問いかける新演出を上演するという企みのもと、2014年からシェイクスピア×坪内逍遥シリーズを始めて、産休を少し挟みはしたが、もう5年になる。

最近では、長く辛抱強く稽古するということを一番に考えてそのために体制を整えている。深く、強く、続けるということがいかに大変なことか。長期間創作する仲間がいないと演劇はできない。仲間を豊かに結び、それぞれ健康的に生活しながら、結婚し、子を育てることも諦めずに、わがままに無茶な理想をかかげて演劇を大事に充実させること。

私は非常に欲張りな性分で、劇団員などにいつも「欲張らないでください、そんなに多くのことは一度にできません」と言われるのだが、たぶんこの欲張りは治らないんだろう、と既に気が付いている。とはいえ、無理なものは無理だ、ということは活動を重ねるごとに、わかってきた。ようやく。

だから待つことを覚えた。待つためには、何を目指しているのか、今は何をしているのか、自分が他人が場がどういう状態にあるのかをしっかり観察して分析するという能力が必要なのだった。

そのために、そのつど言葉にする。しつこいくらいに言葉にする。言葉にできない時はできるまでまた待つ。待っている間に台詞や音楽を繰り返し肉体に落とし込む。

今日は、劇団員と、何度目か共演する俳優たちと、たくさん言葉を交わした。現在のおのおのの生活スタイルのこと。今目指すこと。

自分の奥から言葉を引っ張り出すという時間の後に、坪内逍遥訳の「リヤ王」を1幕分声に出して読み合わせ。大いなる他者の言葉。知って覚悟してはいるが相変わらず一度も聞いたことのないような言葉が重なり、つっかえずに読むのはもはや奇跡、という段階なのだが、やはりだからこそ面白い。遠いものに迫るのはロマンだと思う。これを2020年2月に能楽堂で演じる。


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