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浜崎さんの『人生、悲喜交々③』@ Under the Rose

 
 
~第二夜・男のみ……会~
 
 

 毎度、浜崎でございます。

 本日は、またしても女性陣にフラれた男性陣の、哀しき……いえ、気楽な男飲み会?男のみ会?のようでございます。

 このお二人、何だかんだ仲がいいですよねぇ。

 さてさて、今宵はどのようなお話が繰り広げられるのでしょうか。

 「課長。いつも申し訳ありません」

 「ああ……まあ、仕方ないよな」

 せっかくの金晩に(と言っても、いつも忙しそうで曜日など関係なさそうな様子ですが)、美女二人にフラれたデキる男二人。お互いに慰め合う姿に物悲しさを感じます。いい男だけになおさら。

 「……女性って、どんなことを話してるんでしょうね」

 藤堂さんがポツリと呟くと、

 「そりゃあ……あれだ。おれたちと違って、何でも話題になるんだろう」

 片桐さんの、全く答えになっていない返答。

 私がここで聞いている限りでは、今井さんと雪村さんの話題の半分以上は相談事、あとは色々と言う感じですがね。ま、敢えて教えては差し上げません(自慢気な笑み)。

 「彼女たちは他の女性社員と違って、もう、ほとんどが噂話や恋愛の話、と言う訳でもなさそうですしね」

 再び呟く藤堂さんに、

 「……ん……そんな気はするが、女同士だと……どうなんだろうな。その辺はおれにも良くわからん」

 また無難に返す片桐さんに、ため息をつく藤堂さん。

 「では、お二人も過去の恋愛話などされてみては?」

 私が面白半分に提案してみると、藤堂さんの目が食いついたのを感じます。ま、当然、片桐さんは乗り気ではなさそうですが。

 「一度お聞きしてみたかったんですよね。課長の昔の話。本当は課長の元にいた頃から」

 片桐さんは面白くなさそうな顔でチラリと藤堂さんを見やると、すぐにグラスに視線を戻しました。

 突っ込まれたりからかわれたりするのが大嫌いですからねぇ~片桐さんは。自分が突っ込むのは大好きですが。

 ━しかし。訊いてみたい興味も手伝って、私も藤堂さんに少しだけ加勢することに致しましょうか。

 「では、お互いに初恋談義などされてみては如何ですか?」

 片桐さんは、大人になってからの過去については、恐らくすんなりとは話してくれないでしょうからね。ええ。取っ掛かりとしての初恋談義です。

 「……初恋……ですか。何か幼稚園レベルまで遡りそうです」

 藤堂さんの言葉に、片桐さんが視線を僅かに向けました。どうやら少し興味が湧いたようですね。思った通りです(不敵な笑い)。

 「きみのことだから、幼稚園の先生、とか言い出すんじゃないか?」

 片桐さんの突っ込みに、

 「よくわかりますね。その通りです」

 セオリー通りに進む藤堂さん。

 「同じクラスの◯◯ちゃん、とかではなさそうだからな。どちらかと言えば、周りの女の子に取り合いされて辟易してた……そんな感じじゃないのか?」

 「はい。全くその通りです。何故、わかったんですか?」

 「いや、わかるだろ」

 片桐さんの言葉に、私も心の中で頷きました。目に浮かぶようにわかりますとも。

 女の子たちが藤堂さんの腕を引っ張り合って「そういちくんはあたしとあそぶのー」とか何とか争われ、困った顔をしているサマが。

 「課長の初恋はいつですか?」

 自然な流れの質問に、片桐さんは少し視線を宙に向けて考えているようでしたが、

 「……いつだ?……初恋……初恋……?」

 呟きながら真剣に悩んでる様子の片桐さん。

 「……課長……」

 呆れと驚きと意外さが入り雑じるのを隠し切れていない藤堂さんの表情。

 「本当に覚えてないんですか?」

 疑わしそうな藤堂さん。私も思わず片桐さんの顔を横目で凝視。

 「まさか、今井さんが初恋とか言うオチはやめてくださいよ」

 「そんな訳ないだろう!」

 ムキになって否定した片桐さんでしたが、しかし、しだいに自信なさげな様子に(ぷぷぷ)。

 「……いや、そう言えばおれ、何だか初恋らしい初恋の記憶がないな……」

 「じゃあ、初めてつき合った人は?」

 藤堂さんのその質問に、再び考え込む片桐さん。

 「まあ、強いて挙げるなら……高校生の時……か?その時も一時渡米してるからな……向こうでも日本でもガールフレンド程度で終わった気がするが」

 「じゃあ、ファーストキスとかもその人ですか」

 (藤堂さん、いい質問です!)

 何となく恋愛論らしくなって来ましたよ(ほくそ笑む)。

 「……いや、それは中学生くらいの時だな」

 「「ええっ!?」」

 驚きのあまり、思わず藤堂さんにハモってしまった私。私たちのあまりの驚き具合に、片桐さんの方が呆気に取られて引き気味に。

 「……浜崎さんまでそんなに驚くなんて……」

 「し、失礼しました」

 動揺を抑えながらグラスをみがくフリ。

 「課長……でも、それじゃあ、つき合っている訳でもない人とキスしたと言うことですか」

 厳しい表情で訊ねる藤堂さん。真面目な藤堂さんらしい突っ込みです。その辺り、聞き捨てならないのでしょうね。

 「まあ、あれをキスのうちに入れるなら、だがな」

 当の片桐さんは平然。

 「あれは親父の仕事の都合で、2回目か3回目の渡米の時だったか……確か中学生だったな」

 「……ってことはアメリカ人の女の子ですか?」

 それなら何とか納得が行く、と言った風情の藤堂さん。

 「いや、日本人の女の子だ。たぶん……10歳くらいの……」

 「「ええっ!?」」

 再び私たちは大音声でハモりました。

 藤堂さんが、明らかに不審なものを見る目付きで片桐さんのことを凝視。

 「おい、藤堂。勘違いするなよ。別におれが10歳の女の子に無理やりキスした訳じゃないぞ!」

 明らかにイラッとした様子の片桐さんが、ムキになって否定。

 「むしろ逆だ!」

 藤堂さんの疑わしそうな様子に、片桐さんが吼えました。

 「逆?」

 まだ疑いの目をモロに向ける藤堂さん。

 「キスされたのはおれの方だ。おれの方がその子にファーストキスを奪われたんだ!」

 片桐さんの叫びに、一瞬、固まった私たちは、次の瞬間━。

 爆笑。

 案の定、面白くなさそうな片桐さん。

 「……ったく!つまらんこと思い出させやがって」

 ブツブツ言いながらそっぽ向く片桐さんを尻目に、私たちは笑い続けました。

 「課長……何でそんなことに……」

 藤堂さんが、笑いながら息も絶え絶えに訊ねると、

 「迷子になってたから助けたんだよ!そうしたらお礼だって……」

 私たちはさらに大爆笑。私が「可愛い子でしたか?」と訊こうとしたその時、店の扉が開いてベルが音をたてました。

 「ほら、お二人とも。美女お二人が迎えに見えましたよ」

 涙を拭き拭き教えると、私の言葉に二人が振り返り、一瞬で破顔。

 「こんばんは、浜崎さん。……課長たち、やっぱりここにいた。ね、静希」

 顔を見合わせて笑い合う今井さんと雪村さん。

 雪村さんの姿を認めた途端、藤堂さんの顔も緩みます。

 そして何より、片桐さんの目尻もこれ以上ないくらい緩んだこと、私はしっかりと気づいておりますが、せめてそれは黙っていて差し上げましょう。

それでは、今宵はここまでに致しとうございます。
 
 
 
 
 
~つづく……かも知んない~
 
 
 
 
 
 
 
 

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