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リゾナーレ那須 | 秋のにおいに誘われて

つづき。

予約していたパンを『NAOZO』で受け取り、リゾナーレ那須に向かった。チェックインを済ませ、さっそくアクティビティ施設の『POKOPOKO』へ。

施設の軸にあるのは「アグリツーリズモリゾート」という考え方。農業を意味するアグリクルトゥーラと観光を意味するツーリズモを合わせたイタリア語らしい。

都市生活者が農業体験をしながら、閑静な農村で余暇を過ごす旅のあり方のこと。すごく素敵な言葉だと思うし、いつかやってみたい。農村の多いイタリアでは1985年には州法で正式に規定されている。なんと早いこと。

ところで、リゾナーレと聞くと、子連れファミリー向けのイメージがあるだろう。しかし決してそうではない。大人でも、存分に楽しむことができる。アクティビティも、食事も、客室も。大自然を存分に享受できる様々な仕掛けに、自然好きなわたしたちは興奮しっぱなしだった。

レセプションから少し歩いたところでたどり着いた『POKOPOKO』で、まずはビールを購入。ビールを片手に、焚火で焼きマシュマロ。至福の時間でした。

『POKOPOKO』の中には、楽しそうな遊具(やりたかったけれど、さすがに人目を気にしてしまった…)ジェラートや飲み物を注文できるカウンター、子どもも大人も楽しめるbooks&cafeが併設されている。ここにいるだけで、しばらく時間を過ごせそう。

続いて楽しみにしていたお部屋へ。わたしたちが泊まるのは別館にある客室。今回の宿泊の一番の目的にしていた夕食のレストラン『OTTO SETTE NASU』から近くて、ちょっと静かなエリアで、ぐっと大人な雰囲気がある。2人で泊まるには広すぎるお部屋。カウンター机があって、食後にちょっとゆっくりお酒を楽しむこともできそうだ。
ガラス張りの大きな窓からは、気持ちの良い日差しが入ってくる。

合わせたわけではなく、その日はハロウィンで。用意されていた仮装を楽しんだりした。普段はできない遊びに楽しくなってしてしまい、こちらは人目を気にせず大はしゃぎしてしまった。

写真スポットではしゃぐ夫婦、、、


エリア内はとても広く、歩いているだけで楽しかった。深く息を吸い込むと、稲刈りをしたあとの田んぼから、ふわりと稲の香りがただよった。

さらに深く息を吸い込んでみると今度は土のにおいがした。今朝、川のほとりで感じた澄みきった空気とは少し違う、土の、泥の、雑草の根のような、そういう力強い自然のにおいがした。わたしにとっては、それがその年の秋の記憶になったように思う。

そして、待ちに待った夕食の時間。彩り豊かな料理の数々。胃も、心も、目も、満ちていく思いだった。何種類もの野菜が姿形を変え、そしてときにありのままに目の前に運ばれてきた。トスカーナ地方の郷土料理をベースにアレンジが加えられた品々はどれも絶品だった。

トスカーナ地方はアグリツーリズモの舞台の代表であるらしい。ワインのペアリングも楽しかった。あっと驚くような組み合わせ。普段は飲まない深い深い赤ワインも食事と合わせるだけで、するすると喉を通る。目を閉じると目の前に壮大な農村の街が広がっていく気分だった

「農園のピンツィモーニオ」は野菜の輝きというものに圧倒された初めての体験となった。たくさんの種類の野菜が、野菜自身が自分の魅力を存分に発揮しようと、でも、出しゃばらず並んでいるように見えた。素材を味わう、とはよく言うけれど、こういうことだよなと思った。まるで語り掛けるように、並んでいた。彼らに大地の恵みを感じながら、じっくりと味わった。

農園のピンツィモーニオ

デザートまで、ペロリと本当に美味しくいただいた。本当に美味しかった。普段あまり外食をしないので、たまの外での食事は思い切り贅沢をしたい、という日々の願いが叶って嬉しかった。

本当に満たされた気持ちで眠りについた。もうお腹がはちきれそうで、明日の朝食ビュッフェは食べられないかもな、と思っていたのに翌朝にはしっかりお腹が空いていた。本当に不思議だな。お腹が空くって幸せな感情のひとつだなと思う。いつまでもお腹いっぱいになって、またお腹が空いて、明日は何を食べようかと考えながら生きていきたい。死ぬまでずっと、食べたいものを食べられますように。それはすごく大きな夢なのかもしれないが。

朝食の後にお風呂に入り(朝風呂も旅の中の楽しみのひとつ)、また散歩をして、葉の色が、昨日とはまた少しだけ変わったように思えた。錯覚かもしれないけれど。きっと錯覚だけれど。昨日より濃くなったと感じた紅と黄に、別れを惜しみながら帰路についた。

今度は両親もつれて、いつか、未来の子どもを連れて、いつか、また訪れたい場所。また食べたい野菜たち。この時期を狙ったわけではないと思っていたけれど、わたしたちはきっと移りゆく季節に、秋のかおりに、誘われて那須のまちに訪れたのかもしれないな、と思う帰り道だった。


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