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最近の【ほぼ百字小説】2023年4月24日~5月1日

 だいたい16篇くらい溜まったらそこまで、という形式でいきます。あとはべつに変わりないです。ひとつツイートしたら、こっちでそれに関してあれこれ書きます。
 おかげさまで、そろそろ【シリーズ百字劇場】の第2弾『納戸のスナイパー』が出ます。もう出てるのかな。シリーズ名を劇場にしたのは、ツイッターとかnoteとかのこういうものを劇場として捉えているからで、そしてそれを劇場にしているのは、お客さんがこうしてここにいるからです。だからほんとに決まり文句ではなく、おかげさまで、なのです。お客さんの前でないとできないこと、わからないことはたくさんありますからね。いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。


4月24日(月)

【ほぼ百字小説】(4432) すっかり散って地面に貼り付いているのをよくよく見ると、その半分くらいは紙なのだ。ではあの見事な桜吹雪、半分は紙吹雪だったのか。そんなふうに増量されていたとは。誰が何のためにやっているのかは知らないが。

 しばらくお休みしている間にすっかり散ってしまいました。それにしても桜は演劇的ですね。咲いたと思ったら、ぶわっと派手に散ってしまう。跡形もない、と言いたいところですが、地面にはけっこう貼り付いてる。舞台だと処理がけっこう大変だなとか思います。で、舞台で桜吹雪をやるとなると紙になるだろうなあ、とかそんなことを考えて歩いてて、花びらといっしょに紙が貼り付いているのを見て、それをそのまんま。この世界全部がそういう人工的な舞台の上。「演劇宇宙」みたいな話ですね。

【ほぼ百字小説】(4433) この時期、ヒトに似たものがいっせいに交接して山は桜色になる。事が終わると四肢と頭が落ちて卵型の胴体だけが残り、実際それは卵なのだ。ヒトに似ているのはその時期だけで、ヒトというのはそういうものなのかも。

 そういう時期にだけある形態を取る、というのは生き物ではわりとありますからね。蝉なんかそんな感じですよね。そして、ヒトというのは、発情期がなくて、一年中ずっと発情している動物らしいですから、もしかしたらそのための形態のままずっといる、ということなのかも、とか。つまりどっか壊れてそんなことになっている。そして、壊れていない、つまり発情期だけヒトの形態を取る生き物、の架空博物誌みたいな感じ。

4月25日(火)

【ほぼ百字小説】(4334) 今日は飛行機雲がたくさん見える日ですよ。ラジオが言っていた通り、頭の上には何本もの飛行機雲がどこまでも伸びていく。もう飛行機なんかどこにも飛んでいないのにね。今日はたくさんの飛行機が落ちた日なんだな。

 飛行機雲の話もけっこう書いてます。好きなんですね。映画『ザ・ライトスタッフ』の飛行機雲がいいですね。そして、飛行機雲がたくさん見える日です、と言ってたのは本当。テレビだったと思いますが。でもまあラジオのほうが飛行機雲にはよく似合う。野外ですからね。実際、今日は飛行機雲がたくさん見えるなあ、それとも京都は飛行機がたくさん上を通るのかな、どっちなんだ、とか思ってたらニュースでそんな言葉を聞いた。飛行機がなくて飛行機雲だけ、という風景が浮かんで、それなら幽霊か、飛行機の幽霊なら飛行機がなくて飛行機雲だけ、とか。白いから幽霊っぽいし。で、絶対に幽霊だとわからせるには、飛行機が飛んでない世界のほうがいい。ということで、こうなりました。

4月26日(水)

【ほぼ百字小説】(4335) 餅のような椅子だ。白いからそう見えるのか、滑らかな曲線がそう思わせるのか、柔らかなこの座り心地からの連想なのか。いや、なんといっても丸ごと包み込まれていくこの感触だろうな。苺大福の苺にでもなった気分。

 そういう椅子を見ました。そこからの妄想。座り心地のよさそうな椅子があれば、たぶん多くの人はとりあえず座ってみるでしょうから、擬態としてはけっこう有効かもしれません。椅子ホラー、餅ホラー、みたいな感じでしょうか。そして、真っ赤な苺になっちゃうわけです。

【ほぼ百字小説】 (4336) とくに力をかけたわけでもないのに眼鏡がいきなりぽっきり折れて、これがドラマとか映画の中なら誰かが死んでいるぞ、と思ったが幸いそんな連絡もなくてほっとしたが、そうか、長いつきあいのこの眼鏡が死んだのか。

 ついこのあいだ本当にあったこと。外出先だったのでだいぶおたおたしました。長年使っていて劣化していたようです。ほんと、噓みたいに右と左のレンズをつないでいるブリッジのところが、なんの抵抗もなく折れました。ああびっくりした。

4月27日(木)

【ほぼ百字小説】(4337) 狸たちがやってきた。四角くなって小さくなって箱に入ってやってきた。持ってきたのは黒猫だ。しかしこんなに大勢で何をするのか狸たち。化かされまいとは思っているが、狸囃子にのせられて、次から次へサインする。

 ということで、『納戸のスナイパー』をよろしくお願いします、というやつです。まあしかし「黒猫が狸を運んでくる」、というのはなかなかいいですね。現実はおもしろい。

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