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最近の【ほぼ百字小説】2023年6月17日~27日

 だいたい18篇くらい溜まったらそこまで、という形式でいきます。あとはべつに変わりないです。ひとつツイートしたら、こっちでそれに関してあれこれ書きます。
 【百字劇場】三冊そろってます。どれにも全作解説をつけてます。『ねこラジオ』も、最後まで行きました。これで、全三冊600篇分、解説したことになります。ひと通り読み終えてから、お楽しみください。

6月17日(土)

【ほぼ百字小説】(4543) 虫の知らせは悪いことだけだが、猫の知らせは悪いことなのかいいことなのか箱を開けるまでわからない。狸の知らせはどうせ嘘だし、亀の知らせは甲羅の中だから知ることはできない。どれをよしとするかは人それぞれ。

 今出てる『小説すばる』7月号に、「猫の知らせ」という1000文字小説を書いてます。まあそれと併せて読むとおもしろいかもしれません。べつに併せなくても大丈夫だと思いますが。1000文字小説ですから、この100文字の十倍、ですけど、こっちのほうが情報量は多いかも。文章の密度は同じくらいだと思うんですけど。小説はそのへんがおもしろいですね。

【ほぼ百字小説】(4544) 空に明るい星が出現したから、その星に向かって歩き出し、何日も何日も歩き続けて、ついに世界の果てに到着したらしい。世界の果ては壁になっていて、非常口と書かれたドアがある。はたして今は非常時なのかどうか。

 星に導かれていく、というイメージが好きで、それはたぶん子供が考える宇宙というか、子供の頃に考えていた世界構造みたいなものに近いからじゃないかと思います。箱庭的な感じ。だからけっこうすぐに果てがある。果ての向こうに何があるのか、というのはよく考えてましたが、まあ子供の考えることですから、果てに壁みたいなのがある。でも、壁がある、ということはその向こうがある、ということですからね。ということで、舞台の書き割りみたいな果てだから、やっぱりコントみたいになるなあ。

6月18日(日)

【ほぼ百字小説】(4545) 公園のフリーマーケットに、いつも店を出しているロボットがいる。何かの部品らしきものが並べられていて、何なのかを尋ねても無視される。ロボットにしか売ってくれないようだ。今度、ロボットの振りをしてみるか。

 日曜の朝だから、ということもないですが、日曜っぽい話。いろんな機械がしゃべるようになりましたが、たまに無視される。アレクサが、見たことのない色でぴかぴか光ってたりして、なにやってんだ? とか尋ねてる、なんかちゃんと答えてくれなかったり無視されたりして、もしかしたら都合の悪いことはあえてわからないふりするんじゃないか、とかなんか企んでるんじゃないか、とか、そんな気になることがけっこうある。実際、何やってるかわからないし。人間にはわからないところで機械たちが何かをこそこそやってる、というのはありそうで、そしておもしろい。機械たちだけの秘密、というのは、わりと何度も書いてたりする。あと、機械相手に機械に成りすますことはできるか、とか。逆チューリングテストみたいな感じですね。

【ほぼ百字小説】(4546) 水路の石段から道路脇に出て、歩行者用信号が青になるのを待って反対側へと渡り、公園に入って池まで。子供たちを引き連れて一列で歩いていくその行動は、代が変わっても同じで、ヒトがいなくなった今も変わらない。

 カルガモが歩いていくところを妻が見かけて写真を撮ったのを見せてくれた。あの一列で歩いていくのはやっぱり不思議でおもしろいですね。なんだか人間みたいに見えるけど、人間も彼らと同じようにやってる、というだけのことなんでしょう。人間とは関係なく続けるんだろうな、とか。

6月19日(月)

【ほぼ百字小説】(4547) いつもの店で隣の席の男の子が、カバいいなー、カバカバカバー、ねえお母さん、日本にカバいない? 動物園にしかいないね。お母さんはケニアで見たよ。いいなー。話しながら行ってしまった。続きを聞きたかったな。

 見たまんまのスケッチ。たまにこういうのを見ることができるからマクドナルドはいいですね。SNS「マクドの隣の席で」とか書くと、それだけで嘘だとか言われる昨今ですが、実際いろんな会話があって、けっこう大声ですごいことを言ってたりして、なかなか勉強になります。

【ほぼ百字小説】(4548) 二世には、最初から塔やらしもべが与えられていて、二世で飽き足らず、二世の二世、つまり三世がここまで増えることからもおいしい仕事なのだろう。どんな仕事なのかは知らないが、あの三世が泥棒なのは間違いない。

 まあそういう話。それはそれとして、「バビルの党」ってなかなかいいんじゃないかと思う。バベルだと党内の意見が割れて崩壊しそうですけどね。

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