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今週の【ほぼ百字小説】2021年7月5日(月)~7月11日(日)

 今週もやります。【ほぼ百字小説】をひとつツイートしたら、こっちにそれについてのあれこれを書いていきます。手の内は全部晒してるので、こういうマイクロノベルの書き方のちょっとしたガイドみたいなものにもなればいいなと思います。100円で一週間分読めます。その週の終わりにぜんぶまとめて朗読して、その音声ファイルを貼ります。ということで、今週もよろしくお願いします。

7月5日(月)

【ほぼ百字小説】(3210) 問題が起きて凍結されていた秒読みがようやく再開されることになったのはいいんだけど、ほんとにぎりぎりで止めてたんだな。しかしここまで時間が迫ってしまってると、なんともその心構えが、あ、もう打ち上ってる。

 言ってしまえば、これは番号ネタです。【ほぼ百字小説】には番号が振ってあるので、たまにネタになりそうな番号が出てくるんですね。せっかくだからそれに合わせて何か書く、みたいな。これだけ続けてたらそういうのがあってもいいだろう、という感じですね。『100文字SF』みたいな本になってしまうと番号はなくなるので、ツイッター上で【ほぼ百字小説】を読んでいる場合だけネタとして機能します。

 というわけで、秒読み。ロケットの打ち上げの中継とか、やってたら見るんですが、なかなかすんなりとはいきませんね。途中で何かがあるとすぐに秒読みが凍結される。それから点検作業に入って、問題が解決するとそこからまた秒読みが再開される、というのがよくあります。ほんとに打ち上げ直前で止めてた場合、再開した途端に発射になってしまうんじゃないか、とかそんなこと。実際には、ちょっと戻ってからやるんでしょうけど、まあ小噺みたいなもんです。

 ついでに、これまでにやった番号ネタを幾つか。

【ほぼ百字小説】(13) 納戸の奥には、今もスナイパーがいる。私が小学生の頃からだから、もう四十年以上になるのか。その位置からでないと標的を狙えないのだという。許可を与えた父と母はもうこの世にはおらず、妻にはまだ話せていない。

 これが最初ですね、あのスナイパー。ある一点からだけ狙えるところがあって、というエピソードがわりとあります。

【ほぼ百字小説】(1001) お椀の中にアラビアの夜が入っていた。知らないうちに入っていた。遠慮なくいただくと、翌日も入っていた。そういうシステムらしい。まあ、おかずが一品増えたようなものなのかな。いつまで、と尋ねると、死ぬまで。

 アラビアの夜です。始めたときは、1000まで行けたらいいなあ、まあ無理だろうけど、くらいの感じでした。おかげさまで今も続いてますが。

【ほぼ百字小説】(1999) あの大予言によって本当にその年に世界が終わると信じていた我々は今、予言が外れた世界に生きているわけで、ということは、あの大予言が当たった世界は終わってしまったのだから、つまり当たったことになるのかな。

【ほぼ百字小説】(2001) 黒い蒲鉾板は珍しい。それに大きい。支えもないのにいちばん小さい面を下に自立している。こうして見上げても、形以外はまったく蒲鉾板らしくない。なのになぜ、蒲鉾板だとわかったのか。さっき手を触れたせいかな。

【ほぼ百字小説】(2010) 機械も夢を見るのだろうか、と機械に問われて、どう答えるべきなのかわからず困ったことを憶えてはいるのだが、それは本当にあったことではなく、だからたぶんこれが夢というものなのだろうと思っている、そんな夢。

 他にもいろいろありますが、まあキリがないのでこのへんで。


【ほぼ百字小説】(3211) 空き地で夕焼けを組み立てた。空き地で見た夕焼けを記憶通りに組み立てたはずなのに、あの夕焼けみたいにならなかったのは何が足りないのだろう。それがわからないのは私のせいではなく、私を組み立てた誰かのせい。

 模型が好きです。といっても、作るのは苦手。プラモデルを完成させることができない子供でした。本物ではない作り物、というものに惹かれるんですね。いろんな偽物。これは、夕焼けの模型ですね。空の模型。

 たぶんそういうのは、特撮から来てるんだろうと思います。雑誌の特集とか怪獣図鑑にちょっとだけ載ってたりする特撮スタジオの写真とかを子供の頃は食い入るように見てました。ビルのミニチュアなんかの背景に空があって、それはスタジオの中に作られた嘘の空なんですね。それがものすごく綺麗で不思議でした。ウルトラマンの『恐怖の宇宙線』という話にガヴァドンという怪獣が出てきて、それは子供が描いた絵が実体化するんですが、夜になると消えてしまうんですね。その最初の形態のガヴァドン(白い餃子の皮に丸い穴みたいな目がついてるだけのやつです)が、夕暮れの空の下をもこもこ歩いてて、空でいちばん星が輝くと溶けるみたいに消えてしまうシーンがあるんですが、それが大好きで、今でも夕空といえばその空を思い浮かべてしまいます。偽物の空なのにね。まあそんな感じ。どんな感じや、と突っ込んでください。まあ書きたかったのはそういう思いみたいなもので、オチは模型繋がりでわりと定番のところに落としました。

 夕焼けの話は他にもいくつも書いてますが、代表的なのをひとつ。

【ほぼ百字小説】(1820) 帰り道の夕焼けがきれいだったと娘が教えてくれたので、ひとりで空き地まで見に行った。もう来年は高校生か。すべてが加速して遠ざかっていく。夕焼けだけではなく過去も見えるのは、それが光の速度を越えたからか。

 「夕焼けもの」で「娘もの」でもあります。じつは『100文字SF』は、ここに着地しようと最初に決めて配列しました。

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