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最近の【ほぼ百字小説】2023年12月22日~2024年1月2日

【ほぼ百字小説】をひとつツイート(ポスト)したら、こっちでそれに関してあれこれ書いて、それが20篇くらい溜まったら、まとめて朗読して終わり、という形式でやってます。気が向いたらおつきあいください。

12月22日(金)

【ほぼ百字小説】(4901) 子供の頃、近所にある溜め池を通りかかると水が透き通っていて、水底にクリスマスツリーが立っていた。ちゃんと飾りつけられたツリーだ。透き通っていたのはあのときだけで、夏に干上がったがツリーなんかなかった。 

 クリスマス怪談? まあこういう不思議な記憶というか、後になって考えても、はたしてあれは夢だったのか本当のことだったのかわからない、みたいな断片が好きで、そういうやつ。まあこれはフィクションですが、なんかこんな記憶ありそうでしょ。狐とか狸に化かされた話、というのも私にとってはそんな感じで、そしてそれがSFまで繋がってて、あんまり境目はない。

【ほぼ百字小説】(4902) あの溜め池の側を夜通りかかると水の中に光が見えるって。赤や青や緑の光が点滅しているらしい。でもそれはこの時期だけ。水の底にツリーが見えた、なんて話もあって、それでぼくたちはクリスマス沼って呼んでいた。

 ということで、その続き。その溜め池に関するいろんな人の証言を集めたフェイクドキュメンタリーとかおもしろそうですね。子供の頃の記憶の中にだけあるクリスマス沼の話。

12月23日(土)

【ほぼ百字小説】(4903) 今日もいい猫を見た。亀が冬眠に入るこの季節には、路地のあちこちで猫たちが日向ぼっこをしている。写真を撮らせてほしいのに、近づいたらすぐ逃げてしまう。外猫は用心深いからな。遠いけど、ここから抑えの一枚。

 あるあるですね。遠くてもとりあえず一枚。ほんと、いい猫だらけなんですけどね。まあ仕方ないですね。用心しないと生き残れませんから。

【ほぼ百字小説】(4904) クリスマスソングの流れる商店街を歩きながら前にもこんなことがあった気がするのは、気のせいではなくて前にもあったからで、でも最近はそれが確実に増えていて、今年なんかずっとクリスマスソングだったもんなあ。

 デジャヴ? いやいや、実際に前にもあったよなあ、というのもけっこうあるあるで、まあこの場合は同じ一日を本当に繰り返しているというか、何度も使い回されている感じ。日常なんて、けっこう使い回しだけでいけてしまうような気がするんですが、クリスマスソングだとさすがにずっと同じ時間が使われてるのがバレてしまうような気がします。

12月24日(日)

【ほぼ百字小説】(4905) 亀が本格的な冬眠に入る時期に決まって見る夢がある。荒れ地を亀が歩いている。目的も目的地もないので急ぐ必要もない。ただ歩いている。夜になると地面は冷えて亀は眠る。こちらが夢なのかも、と亀の夢の中で思う。

 カメリ―クリスマス。亀が砂漠を歩いているのは、ブレードランナー。そして、亀と夢は似ている。亀で一冊作ってみようと考えているので、ついつい亀のことを考えます。うちの亀は例年通り物干しの盥の水中で冬眠してます。

【ほぼ百字小説】(4906) この時期が来ると、熊たちがケーキを囲んでわやわややっている写真を見ることができた。毎年それが楽しみだったが、今年からは無い。こんなふうに小さな楽しみが鱗みたいに落ちていってしまう。熊たちも寂しかろう。

 亡くなった佐藤哲也さんのツイートのこと。毎年あれを見るのが楽しみでした。すごい人だった。

【ほぼ百字小説】(4907) はるかとおくのむかしから、このよにあったクリスマス。けれどことしのクリスマス、いつもとちがうクリスマス。ひとあじちがうクリスマス。みんなでてこい、ともにいわおうクリスマス。にんげんのいないクリスマス。

 カメリはまあこんな話ですね。SFですからね。『にんげんがいないクリスマス』というタイトルはなかなかいいと思う。そのタイトルで絵本とか作りたい。

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