輝き人! NO.17 辻 詩音 / Shion Tsuji 後半

今回はシンガーソングライター辻詩音さんの後編をお送りいたします。

interview

―アーティストとして、世間に発信していきたいものはありますか?
辻:私がデビューさせてもらった時から時代がどんどん変わっているので、こうしたらこうなるっていう常識が壊れてきていると思います。音楽以外の部分である、自己の見せ方、ライブのやり方やそれをやる場所など全て0からアーティスト自身が考えないといけない時代になるって思うので、私はそれを実践して、こういうやり方でも、お金をかけなくても、人に伝わるんだっていうところを見せて行きたいです。
―メッセージ的な部分は?
辻:私がこれまで好きで聴いてきたアーティストの方はみな日々その人自身が感じた恋愛などいろんなことをそのまま歌詞に書いていたんですけど、私が聴いた時に思ったのは、“これって私のための曲じゃん”って。これは私のことを歌っている曲だと思ったんですね。だから、私もみんなが自分のことを歌っているんだと思うような曲を書いていきたくて。そのためには、自分に起こったことを正直に素直に書いて、曲にすることかなって。そうすれば、みんなが共感してくれると思っています。
―業界のキャリアも長くて、普段も音楽の関係者の方に囲まれていて、なかなか一般人の方とは乖離した世界にいると思うんですが・・・
辻:でも、私のまわりには普通の仕事をしている友達もいますし、結婚していく人もいるんですが、彼らの多くはこの先の仕事や進路をどうしようって悩んでいるんですね。その感覚は大きい意味では、私と一緒な気がします。この先ずっと音楽をやっていくんだけど、どのようにやっていこうとか思ったりして。多分、そういった悩みは何歳でもどんな仕事に就いていても一緒だと思うので、そういうところを曲で書いて行きたいなって思います。
―音楽業界は狭いですか?
辻:狭いと思います。音楽業界にいるって感じて、業界の友達だけしかいないっていう状態になると、やっぱり偏ってきちゃうと思うし。音楽が好きな人がいいねって言ってくれる曲はもちろんいいけど、あんまり音楽を聞かない人にも、なんなら音楽を初めて聴いた人でもいいなって思ってもらえる曲を作りたくて。私のライブに来てくれる人が意外と、“始めてライブというものに来ました”っていう人が多くて、そういう人がどんどん増えればいいなって思います。

―辻詩音をどう見せて行きたいですか?
辻:自由で遊び心がある感じをビジュアルと音楽とライブで見せていきたいです。ライブは最初から最後まで一つの物語があるように見せたいです。
―ライブの演出もこだわりがあるんですね。
辻:ちょっと前まで3か月連続ライブをやっていたんですが、その時は“反逆”など毎回テーマを決めてやっていました。最近はラッパーのエミネムを基にして “シオネム”という新キャラが登場しました。そういう新キャラをやったり、ラップもやったりしています。
―今後ライブで挑戦したいことは?
辻:いつか自分の曲だけでミュージカルみたいなものができたらいいですね。
―ミュージカルは好きなんですか?
辻:はい。かつてひとつの曲から物語を作るっていうのをスティングというアーティストのライブで見たことがあって、こういうのをやってみたいなって思いました。
―他のアーティストの方から影響を受けたりしているんですね。
辻:そうですね。父の影響で小さい頃から洋楽が好きで、インディーズのアーティストなど聴いたりします。そこから影響も受けたりしますね。
―洋楽が好きな辻さんが邦楽に足りないものは何だと思いますか?
辻:私は洋楽を聴く時は必ず和訳を見て、なければ自分で訳すとかするんですけど、そこで思うのは日本語だとどうしても文字数が限られていて、言えないことが多くて。それが日本語の難しい所なんですが、英語は同じ時間の中でも、言いたいことがいっぱい言える言語だから、それが羨ましくて、なんとか日本語でもそういう歌詞が書けたらいいかなと思います。なので、私は日本語でも多くのことを語れる楽曲を目指して行きたいです。
―辻さんはどういう方々にご自身の曲を聴いて欲しいですか?
辻:老若男女関わらず、デビューする前の自分のような心境の人に聴いてほしいです。なんとなく毎日が生きにくいなとか、“自分と同じような気持ちを持っている人はいないだろうか”って思ってちょっと寂しさを感じていたりとか、そういう人に聴いてほしいなって思います。
―どうして、デビュー前はそんな感情になりましたか?
辻:そういうことを喋れる人が当時いなかったんです。友達と会っていても、いつも楽しい話しかしないじゃないですか。悩みとか相談しても、ちょっと自分の考えていることとは違うとか思ったりして。だから、その悩みを歌詞にて、自分の中でうまく消化していたんです。
―人生のターニングポイントはどちらにあったと思いますか?
辻:やっぱり15歳の時に高校をやめて、自分で片っ端からライブハウスに電話していた時ですかね。
―その時の心境を振り返ってください。
辻:その時は目標を立てて、18歳までにデビューする、できなかったら、もうやめるって決めていました。17歳の終わりのギリギリのところでデビューが決まったのですが、それでみんなから“とんとん拍子だね”って言われることが多かったのですが、私としては本当にギリギリ間に合ったみたいな感じで、デビューが決まった時はあまり嬉しいという気持ちが無かったですね。それよりかは、一安心みたいな。
―精神的に相当追い詰められていたんですね。
辻:そうですね。今思えばそうでしたし、一生そうなんですかね。
―やっぱり刺激的な生き方が良いんですね。
辻:本当に楽しく生きたいんですけど、でも、ここまで振り返ると、そうやって生きてきたので、もしかしたら常にハラハラした刺激的な方が好きなのかもしれないです。それに、自分を追い詰めるのが好きなんだとも思います。

―これまでに音楽以外のものに興味を惹かれたことはありますか?
辻:私は外国に行くのが好きなので、いつか世界一周をひとりでしたいなっていうのがあります。いろんな国に行くのが好きなんです。ワールドツアーなんて、できたらいいですね。
―どうして好きですか?
辻:違う国の言葉を話したりとか、違う国の人だけがそばにいると、全てを諦めて人見知りが治って、いろんな人に話しかけられるようになるんです。世界中に友達が欲しいし、いろんなものが見たいなっていうのがあって、ずっと世界旅行が好きなんですけど。本当に面白いですよ。
―これまで行った場所で思い出に残っているところは?
辻:20歳の時に初めてひとり旅に行ったのがNYでした。そこで、2週間語学留学をしていて、ブロンクスという危ない地域にところにひとりで住んでいたんですが、それが刺激的で面白かったんです。
―まわりから心配されたりとかは?
辻:心配されたり、止められたんですけど、もう行きたいから、仕方がないじゃないですか。(笑)だから、行っちゃいました。
―周りの人は心配で仕方がないですね。(笑)
辻:そうです。そうなんでしょうね。申し訳ないです。(笑)
―やっぱり冒険家ですね。
辻:新しいことがしたいです。
―辻さんの中での新しいこととは、どういうことですか?
辻:自分が今まで経験していないことです。世界一周はそのひとつです。
―世界を見ると、人生変わるものですか?
辻:分からないです。まだ一周していないから。(笑)一周したらわかるんですかね。(笑)でも、インドに行くと、よく世界観が変わると言われていますよね。私も行きたいです。でも、行くべきタイミングで、インドから呼ばれるらしいです。(笑)私は呼ばれてないので行けないのですが、行くべきタイミングにインドが呼んでいるっていう気持ちになるらしいんですよ。呼ばれましたか?
―全く呼ばれないです。
辻:呼ばれたら行った方がいいですよ。(笑)
―これまではどういうものを見てきましたか?
辻:タイのカオサン通りとか、バックパッカーがたくさんいるところで。私は外国に行くと、できるだけ汚いところや観光地じゃない現地の人が生活しているところに泊まったり、行ったりすることが多いです。1泊300円のホテルに泊まったりもしました。
―治安が悪かったのでは?
辻:でも、楽しかったですし、親切な人も多いし。
―語学力はどうですか?
辻:いや~全然話せない。英語を勉強しようと思って、NYに行ったりしましたし、ちょいちょい勉強しようっていう波は来るんですけど、すぐ飽きちゃうっていうか。語学ができなくてもコミュニケーションはできるので、今のところは必要性を感じていないんです。
―お忙しいと思いますので、スケジュール的に海外旅行は厳しいですよね。
辻:そうなんです。ありがたいことに。だから、1か月ぐらいでも良いので、いつか一周したいです。

―こうやって話している感じだと、辻さんはいつも明るい人だと思うんですが、落ち込む時はありますか?
辻:もちろん、あります。でも、一気に落ちるので、すぐ元気になれます。トランポリンみたい。(笑)
―落ち込んだ時の対処法はありますか?
辻:泣いて、それで歌詞を書くんです。
―そこで音楽ができるんですね。
辻:私は、多分悲しい時の方が生まれますね。それで曲ができると、“あっでもいいか、曲もできたし”って言って諦められるんです。
―仮に辻さんがアーティストじゃなかったら、落ち込んだ時はどうするんですか?
辻:それがわからないんです。
―じゃあ、音楽が生命線ですね。
―音楽に救われたと思う瞬間は?
辻:毎回思います。音楽がなくても生きて行ける人はたくさんいるっていうことを聞くんですけど、でも、私は本当に気分が沈んだり、挫折した時々に、音楽があるから生きてこられたっていう瞬間がたくさんあるので、音楽がないと死んじゃうと思います。
―どういう部分で音楽に救われてきましたか?
辻:ひとりっ子だったこともあり、すごく寂しがり屋で、この先どうしたら良いんだろうっていう誰にも解決できないような悩みを感じる時があって。でも、音楽を聴くと、私以外にもこういうことを思っている人がいるんだと思って、寂しい気持ちが消えて、それに救われてきた気がします。
―音楽によって、その答えがでなくても、ごまかして、前に進めちゃう感じですか?
辻:この先どうしたら良いんだろうっていう悩みを持っているのは自分だけなんだって思う時に、今の自分と同じ心境を歌っているアーティストがいるって思ったら、みんな一緒なんだと思って、頑張ろうと思えるんです。私自身いろんな瞬間で、“こうしたらいいんだよ”っていう答えを音楽に教えてもらうよりかは、その音楽が描く感情に共感して元気をもらってきたので。だって、答えなんか毎日変わってくるし。私もそんな音楽を目指しています。
―実際に他人を救えたという実感はありますか?
辻:分からないです。おこがましくて、とても言えないです。でも、そういう人が仮にいたとして、私のライブに一度も来たことが無くて、私の曲を1曲しか知らなくても、知らない所で毎日聞いてくれていたりしたら、それでもいいかなって思っています。
―辻さんにとって、アーティストとしての成功の定義は何ですか?
辻:難しいですよね。昔はただ単純に大きいところでライブをするのが成功だと思っていました。でも今は、その瞬間に自分が幸せじゃなかったら、成功じゃない気がします。自分がやりたくないことをやって、過去の自分が思う“成功”を成し遂げても、それは意味がないことだとも思いますし。
―どうしても売上とかが、ひとつの指標となってきますよね。
辻:そうですよね。全部自分が書いた曲で、アリーナツアーとかできたら、それは本当に理想なんですけどね。今はそこを目指しています。

―そろそろお時間のようですね。
―最後に学生にメッセージをお願いします。
辻:学校っていうのは自分がやりたいものを見つける場所だと思います。常にテストや課題など、やらないといけないことがあると思うんですが、自分の一番得意な事と好きな事を見つけたり、伸ばしたりすることに時間をかけた方がいいと思います。よく苦手なものを頑張れと言われることが多いけど、それは間違っていると思います。私は、当時嫌いな勉強をやめて好きな音楽をやったのですが、それが今こうして奏功していると思います。

取材協力:e-smart inc.

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