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地方に若者を呼び込むために必要な3つの施策とは?

「限界集落」「消滅可能性都市」などの言葉を聞いたことがあるでしょうか?現在、日本の多くの地域で少子高齢化や若者の流失によって存続が危ぶまれている地方自治体が存在します。私が住む滋賀県でも他人ごとではありません。深刻化して地方自治体として持続できなくなる前に、地方が今すぐに取り組むべきことを、地方に暮らす若者の視点で考えていきます。

滋賀県の現状とこれから

まず、こちらを御覧ください。これは滋賀県の高齢化の推移を表した図です。1番左の2010年では、ほとんどの自治体で高齢化率は30%以下です。しかし、2040年になると高齢化率が30%以上の自治体が現れ、高いところでは40%以上の自治体もあります。10人いたら4人以上が65歳以上のおじいちゃん、おばあちゃんという社会が25年後にはやってきます。

そして、高齢化だけでなく少子化も加速しており2014年には人口の自然減(出生数-死亡数がマイナス)が起こっている。つまり、1年で亡くなられる方の数が生まれてくる赤ちゃんの数を超えているのでこのまま放っておけば人口は自然と減少することになります。

そして最も衝撃的なデータはこちらです。簡単に言うと上のデータは人口の自然増減によるもので、この下のデータは社会増減(他地域からの流入や流失による人口の増減)を示しています。なんと、ただでさえ生まれてくる若い世代が減っているのにせっかく育った20代の若者も滋賀県から流失していることがわかります。つまり人口減少のダブルパンチを滋賀県は受けています。全体で見てみても若い世代の流失が近年加速しているので、県としても2012年から社会増減も減少に生じています。

そしてトドメのデータはこちらです。これは年齢別に人口移動について推移を示しています。衝撃的なのはやはり20代。30年前は5000人もの20代の男性が他地域から滋賀県に移り住んできていたのに、現在では4000人もの20代の若者が県外に流失しています。この要因として挙げられるのが滋賀県に住む大学生の県外就職です。県内大学生の県内企業への就職率は2014年で 10.1%となっており10人中9人は県外で就職しています。まだデータでは公表されていませんが、2017年現在の県内就職率は10%を切っているでしょう。ここまで劇的な変化が起こっているとはデータを見るまでは思いもしなかったので驚きを隠せませんでした。

人口減少の影響

人口減少が起きて、少子高齢化が進むような地方自治体では生産労働人口も減るのでそれに伴って税収が減ります。よって、その税収で賄われている公共サービスの質も低下します。また、公共サービスだけでなく、私営でバスや電車を走らせても儲からなくなるのでそのような交通網も廃線される可能性が高まります。すなわち、若い人たちがある程度稼いで税金を納めてくれないと地方で住む人たち全体の生活の質が下がることを意味します。このような状況は日本のあちこちで実際に起こり始めていることなのである程度、イメージしていただけると思います。

若者の呼び込むための3つの施策

このような現状だからこそ、若者は地域を支えていく上で必要不可欠な存在となってきます。では、どのようにすれば若者が地方で暮らしてくれるのでしょうか。先ほども述べましたが若い人の流失は就職時と大学の進学時のタイミングで起こります。そこで打てる施策として考えたが以下の3つになります。

①県内就職の促進

先ほども述べましたが、県内大学生の県内就職率は約10%です。この数字を上げるためにできることは県内の企業をもっと学生にアピールすることです。ただし、既存のリクナビやマイナビといった就活サイトだけに求人を掲載して、普通に説明会をしているだけだと、東京や大阪の大手企業と比較した時に給与や福利厚生といった項目で負けてしまうので滋賀の企業だからもっている魅力を伝えて勝負する必要があります。その魅力を伝えるために適しているのがインターンシップ(就業体験)です。現在の就職活動の中では欠かせないものとなっており、大手企業では導入していない企業の方が少ない状況になっています。一方、県内の企業でインターンを導入している企業がありますが、1DAY型で説明会と変わらないようなインターンシップをされている企業が多いので、企業の魅力があまり伝わらなのではっきり言ってもったいなと感じてしまいます。

①県内就職促進のための具体的な施策

一方、リクルートソフトバンクが長野県塩尻市と行っている1週間ほどの宿泊型インターンシップやCroozさんのBIZ CAMPは学生視点からするとすごく面白いものとなっています。 1日座って会社の説明を聞くだけでなく、地方に行って課題を提示され、現場の社会人の方と一緒になって解決方法を考えていきます。この合宿型のインターンが良いところは、実際の地方の課題に接することでそのような課題を「自分ゴト」として捉え直せるきかっけになり、同時に地方で働くことの魅力を伝えられるところだと思っています。百聞は一見にしかず。どれだけ説明会で話を聞いても実際の様子はその場に行ってみないとわかりません。だからこそ、このような合宿型でしっかりと取り組むみたいなインターンシップは地方の企業をアピールする上で効果的だといえます。ただし、これらのインターンシップを主催している企業が東京のお金をたくさんも持っている企業であることは少し問題です。結局、地方の課題を通してそれを解決できる東京の企業が魅力的だという導線を作ってしまうからです。だからこそ、地方の企業がこのような合宿型のインターンシップを主催して県としても応援していく必要があるでしょう。国としても地方創生の一環で進める方針なので県としてインターンシップを推進することは間違っていないはずです。長野県は学生が帰省するための交通費や宿泊費などを行政が補助しています。一人、最大4万円が出るので一度はインターンシップに参加して地元企業を見てみようとなるわけです。就活生はただでさえお金がないのでこのようなお金の補助は重要です。個人的には、県内企業を数社集めた2泊3日くらいの合宿型インターンシップを開催すると企業側からすると1社当たりが出すコストも抑えられるし、学生側からしても一度に数社見ることができるので効率的だといえます。このようなインターンシップを今後、企画していけたらと思っています。

参照)Internship NAVI Fukui

行政としてインターンシップを推進している県として福井県も挙げられます。このプログラムの良いところは、就職活動を控えた3年生の夏休みにインターンシップを行っており、地元企業を視野に入れて4年生から始まる本番の就職活動を迎えることができるということです。つまり、地元か県外で就職するか比較した上で自分に合った企業を選択することができます。受け入れ先も100ほどサイトにまとめてあり、わかりやすい機会提供ができています。短くても5日間と書いてあるので、地元で働く良さを実感すると共に、インターンップ期間に自分の親と働くことについて話ができることもメリットかもしれません。このような機会提供を滋賀県でもドンドン推進して行く必要があると思っています。

②U・Iターンの促進

とは言っても、個人の自由が広がる時代の中で県内就職だけを押し付けるのも良くないと思っています。むしろ、新卒で滋賀県の企業に就職してずっと働くというよりも東京や海外や経験やスキルを身につけて返ってくるほうが実は滋賀県の発展のためには良いのかもしれません。そこで重要になってくるのがU・Iターンしやすい環境づくりになってきます。滋賀県としては、「県外からの移住件数を5年間(2015年〜2019年)で300件」(人口減少を見据えた豊かな滋賀づくり総合戦略)と書いてあって現状からどのくらい増やすのか資料からは読み取れませんでした。仮に、年間あたり60件増やすと考えた時にどのような施策が必要なのでしょうか。

②U・Iターン促進のための具体的な施策

大きくは2つあると思っています。1つ目が「滋賀で働く魅力を伝える」ことです。都会には都会だからこそ受けられる刺激や給与などの魅力がありますが、暮らしやすい滋賀だからこそできる魅力的な働き方もあると思っています。ワークライフバランスを重視した働き方や、滋賀の伝統や自然を使ったビジネスなどその良さをドンドン発信していけば、Uターンしたいと思ってくれる人の母数はドンドン増えていくでしょう。ここでは、メディアでの発信や移住イベントの開催が具体的な施策として考えられそうです。2つ目が「Uターンしたい人と地元企業を繋ぐ」ことです。さて、Uターンしたいと思っても自分に見合う企業を見つけ出すのが難しかったり、自分の家族などの関係で踏み切れない人が多いのも現状です。この問題を解決するためにも、東京の県人会など各地域にある滋賀県のコミュニティとUターンを考える人が繋がって相談などできる仕組みが必要になってきます。

※この分野に関しては去年の年末から僕が取り組んでいる領域になるので、Uターンを促進したい企業さんがおられましたらご連絡ください。

③地域の魅力に触れて郷土愛を育む

これは、上記①②を加速させる上で重要な施策になります。現在、県内に就職されている人やU・Iターンで滋賀で働いている人と話すとだいたいみんな郷土愛に満ちあふれています。小さい頃から住んでいる滋賀の自然であったりが好きで、都会と比べて暮らしやすいという理由で戻ってきている人が多いように感じます。このような郷土愛は、滋賀にいる間に様々なモノゴトに触れて形成されるものだと思っています。つまり、県外に出る前の学生であるうちに「いかに滋賀県の魅力に触れることができるかどうか」が将来、若い人が滋賀で暮らすか考える上でとても重要になってくるのです。

③地域の魅力に触れて郷土愛を育むための具体的な施策

この施策について関して言うと小中学校の教育など色んなものが挙げられます。しかし、高校や大学といった時に受けた印象やイメージのほうがより鮮明に残っていたりするものです。そこで、僕たち大学生にできることを考えて、現在、滋賀県にゆかりのある大学生が集まって様々な取り組みを始めています。先日、行われた「近江の国未来会議」もその一環です。このイベントはいわばキックオフミーティングであり、これから学生が動いていくための始まり合図を告げるイベントでした。このイベントで出たアイディアや思いを基に様々なプロジェクトが生まれています。

今後は以下のような図のように、それぞれの大学生がやりたいことを実現できるコミュニティとして運営していきたいと思っています。また、この下の図以外の様々なプロジェクトもこの学生のコミュニティを軸に新しく生まれていけるように活動していくつもりです。ラッキーなことに滋賀県は14の大学があり、関西の大学に自宅から通学している学生を合わせると相当な人数になります。この若い学生の数というのは、衰退が叫ばれている他の地方にはない滋賀の武器です。さらに、この大学生同士の繋がりだけでなく、社会人の方々との連携が加われば滋賀をもっと元気にしていけそうです。学生同士の横の繋がりだけでなく、縦の繋がりも意識しつつ、若者が主体的に滋賀県を盛り上げていきたいと思っています。そうやって滋賀の課題を解決しようとしたり、魅力に触れる中で滋賀県のことを「自分ゴト」として捉え直し、一旦、県外に就職したとしてもやっぱり滋賀が良いと考えて戻ってきてくれるのではないでしょうか。

最後に・・・

滋賀県のお隣、福井県の「大野に帰ろう」というプロジェクトは地方創生を考える上で大切な視点を与えてくれます。旅立つ若者に夢を求めて外に飛び出してもいいけれども、私たちはあなたた若者を必要としているという親世代からのメッセージが卒業式に歌で表現しています。言わなくても分かってるんじゃないかとか、東京とか外に出るのは仕方ないとか思っていて親世代が意外と伝えられていないメッセージだと思っています。

就職やUターンの際に最終的に決断する時って「感情」が決めると思っています。年収や労働環境も重要な要素ですが最後は「ふるさとから求められている感覚」って凄く重要なんじゃないかなって思っています。こういう地元からの思いが最後の最後で若者を呼び込むキーポイントになってくるのでしょう。滋賀県の人が一つになって若者を呼び込み、一緒に幸せに暮らしていけることが本当の地方創生かもしれませんね。

ーーーー参照記事、URLーーーーー

人口減少を見据えた豊かな滋賀づくり総合戦略

地域経済分析システム(RESAS

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