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The Best Post Punk In France 2023

フランスで思い付くアーティストは何か?自分自身もそうだけど、Daft PunkやJustice、M83といったエレクトロミュージック、PhoenixやTahiti 80といった洗練とされたギターポップバンド。もうちょっとインディー寄りだとMelody's Echo Chamberとか。…要するに、表題に掲げているようなパンクミュージックのイメージが少なくとも自分には無かった。

ここ最近、フランスのポストパンクに出会うことが増えたという実感がある。もちろん、アイルランドやUKでここ数年渦巻いてきたものからの影響は当然受けるだろうし(なんならUKとはユーロスターでも繋がっているし)、世界有数の芸術大国とも言われるフランスで(地下レベルの出来事だとしても)面白そうなエッジの効いたアーティストが増えているのは当然の流れなのかもしれない。

この記事は、まとめるほど網羅できてはいないだろうし、幾分重要なポイントの抜け漏れもめちゃくちゃあると思うけど、ここ最近で面白いと思っている現行のフランスのパンクアーティスト4組を紹介したい。

The Psychotic Monks

The Psychotic Monksはパリ北郊、サン=トゥアン出身の4人組。2015年に結成し、2017年に1st Album『Silence Slowly And Madly Shines』、2019年に2nd Album『Private Meaning First』とリリース。2023年2月3日には3rd Album『Pink Colour Surgery』をGilla BandのBaでもあるDaniel Foxのプロデュースのもとリリースする。

Gilla Band的な不浄なインダストリアルビートとThus Love的な耽美的アプローチのハイブリッド、そしてblack midiのように急停車と急発進を繰り返し、長尺の楽曲の中に沈黙と轟音の狂気を渦立てる。狂気こそが音楽の醍醐味だ。
高い実験性を備えた楽曲も多いが、不思議と聴きやすく、そのドラッギーなスペースにすんなりと引き摺り込んでくれる。過剰にも思える静と動の応酬に圧倒されていく。

実際、この記事を今回書く決め手になったのはこのバンドの存在が大きい。2月にリリースされる新しいアルバムが多くの耳に届いて欲しい。

MNNQNS

MNNQNS(マネキンズと読む)は北フランス・ルーアン(パリから北西に120kmほど離れる)で結成された4人組。Gt/VoのAdrian d'Epinayを中心に2014年に結成されたが、彼はUKのウェールズ・カーディガフでの留学経験もあるようで、60年代ガレージやサイケデリック音楽の要素、明らかに英国然としたそのサウンドが印象的だ。

彼が留学していたであろう時期を考えると、おそらくTemplesが爆発的にヒットするタイミングだったし、その辺りの影響も受けているのかな。最近のバンドだと、FURとかの雰囲気にも似ている。

結成以降、EPを複数枚リリースし、2019年に1stアルバム『Body Negative』、2022年に2ndアルバム『The Second Principle』とリリースし、順調にステップを歩んでいる。


Unschooling

Unschoolingも北フランス・ルーアンの5人組で、先ほど紹介したMNNQNSの元メンバーが中心になって立ち上げたバンドである。

生き急ぐことも不和を感じることも不機嫌なことも色々とあるけど、音楽として表現する時には何かずっこけてる感じがあれば楽しいし謎の説得力も生まれると、それは私が高校生の頃にFranz Ferdinandのデビューアルバムを初めて聴いた時に感じたことでもある。Unschoolingについて言えば、カナダのCrack CloudやN0V3L周辺にも対抗し得る鋭い眼差しからの謎の脱臼感。音のソリッドさからは意外にも聴こえる(?)変則的でメロディックな彩りある展開もあって、それはどこかLate of the Pierっぽさも思い浮かべたり。


2019年に1st Album『Defensive Designs』、2021年にはEP『Random Acts of Total Control』とリリースしている。

La Colonie de Vacances

最後に紹介するLa Colonie de Vacances(サマーキャンプという意味らしい)で間違いなく言えるのは、ちょっと他ではお目にかかれないような変なバンドだということで、先ずはアー写の通りメンバーが12人もいて、6つのギター、5つのヴォーカル、4つのドラム、4つのシンセサイザー、2つのベースという変態謎編成であることを知る必要がある(ドラム4人て)。

2022年にリリースしたアルバム『ECHT』は、個人的にも年間ベスト8位に選んだ(サブスク配信されているのはこの作品のみ)が、4台のドラムが織り成す怒涛のビートや一心不乱に注ぎ込まれるギター音や電子音の洪水に圧倒された。ノイズ、プログレ、パンク、電子音楽が高い強度のままごちゃ混ぜにされた彼らのサウンドはblack midiを凌駕するカオスで、とてもうるさく(褒めてます)がとても緻密で時に浮遊感もありミニマムだ。

実は結成は古く、2010年に4バンド(Papier Tigre、Electric Electric、Pneu、Marvin)の仲間意識によって始まったコラボレーションバンドで、ツアーを中心とした活動していた。その後にメンバー交代もあり、現在の体制となったのが2019年で、満を持して正式な(※)1stアルバムである『ECHT』を2022年1月にリリースした。

※ちなみに、2017年に4曲入りのレコード兼書籍作品(?)『Livre​/​disque』、ライブアルバム『Les 26 sauces de Maître Saucier』をフィジカルリリースしている。

Murailles Music

ライブパフォーマンスは圧巻。観客の四方を囲むようにステージをセットするのがスタンダードなセットな彼らのスタイルのようだが(!)、演奏している姿に、この手の音楽に見られるがちなシリアスさは無く、楽しそうなのも印象的だ。


以上、4組のフランスのポスト・パンクバンドを紹介した。


ポストパンク以外でも、軽快に渋みを奏でるPARK(Frànçois & The Atlas MountainsというSpoonのようなフランスの中堅バンドとLysistrataという若手のエモパンクバンドのコラボバンド)や美しくポップな轟音を奏でるCosmopaarkというシューゲイズバンド、オランダで一番良いバンド(個人の感想です)ことPersonal Trainerのフランス版にも思えるPavement風味なキャッチーなサウンドが魅力なEggSと、完全に役者が揃ってきている気がする。

今回はポストパンクをメインに記事にしたが、フランスのギターロックのシーンが今後もっと面白くなっていきそうだ。

最後にオススメプレイリストということで、フランスの最良インディーレベルことHowlin' Banana Recordsの公開プレイリストを貼っておきます。今回の記事を書くにあたっても少し参考にしています。



ありがとうございました!

村田タケル

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