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今アルバムリリースが楽しみな海外インディーアーティスト3選


インディーのギターバンドはロックスターの夢を見るのか


アンドロイドは電気羊の夢を見るのか。
暴走族は自動運転の夢を見るのか。
レコードDJはオートシンク機能の夢を見るのか。
インディーのギターバンドはロックスターの夢を見るのか。

言わずもがなWet Legがセルフタイトルを冠した4月2日にリリースされたデビューアルバムでUKチャートの1位を獲得したことは象徴的でしたが、インディーのギターバンドが再び少しずづ評価されてきたここ数年の到達地点を示唆していて、その結果には素直に喜んでしまうものがあります。


チャートアクション自体は下世話な部分が否めない気持ちはあるし、ビジネス的な側面をベースにシーンの復権を語る一部の評論家の論調が最近は少し目に付きつつもありますが(そうした論者はイタリアの某オーディンバンドをやたらと持ち上げる)、ギターバンドがポップミュージックの脇役に追いやられてしまった2010年代だったことを考えると、ヤングパワーはかつての幻影をただ追いかけるのではなく、新しい価値や表現を見出し、それが少しずつ受け入れられてきた現在地を見た気分になりました。

Wet Legのアルバムがもちろん素晴らしかったことは大前提ですが、それだけで1位になれたとは思っておらず、2019年のSports Teamのデビューアルバム『Deep Down Happy』リリース時の対Lady Gagaとのチャートバトルから続く流れによるファンダムによるムーヴメントかと思っています。

Sports Team以降、ファンにとっても意識的にフィジカルの売上に貢献してチャートを押し上げようとする動きが強まったと感じています。その中にはblack midiのように敢えてチャートバトルから外れるアクションを起こすバンドまで出現したり…とにかく、一つのイベントとしてなんだかんだで、新しいアーティストのチャートアクションは楽しんでいました。

序文が長くなってしまいましたが、Wet Legだけではもちろん無い、リリースが楽しみなギターバンドがまだまだあります。5~6月にリリースを控えた私的注目3アーティストを紹介。たまたまでしたが、豪・英・米から1アーティストずつ。それでは本編へ。

The Stroppies


前作『Look Alive』も超Goodだったオーストラリア・メルボルンのThe Stroppiesは5月6日にアルバム『Levity』をリリースします。

恥ずかしながらも個人的には少し前まで同じくオーストラリア出身のThe Goon Saxと混同してしまっていたThe Stroppies。The Goon Saxが昨年リリースされた新作『Mirror Ⅱ』(私的ベストアルバム2021年の第4位。大好き。)で新境地を切り開いていったことと対照的にも感じるThe Stroppiesの安心なオージー・ジャングリング・インディーではありますが、ただひたすらに真っ直ぐで、死にたくなるぐらいスイートで、突き抜けたい瞬間はいつもどこか控えめで、どこかちょっとFat White Familyっぽさもある(※凶暴性は無し)中毒性のあるトロピカルさ…先行曲のこの曲がリリースされて、やっぱりこのバンド好きだな…っ再確認させられた気がします。

オーストラリアを拠点に活動していた最近のお気に入りだったバンドはどんどんとUKやUSへ拠点を移していきました。Death Bells、The Goon Sax、HighSchool。移った先でも頑張ってるいる姿は微笑ましく今後も楽しみなのですが、The Stroppiesは今後どんな動きをしていくのかも引き続きウオッチしたいところです。

Porride Radio


最近のロシア問題の一連で、ロシア軍がフィンランドとの国境沿いにミサイルを移動させたというニュースがありましたが、フィンランドのマリン首相は36歳の女性で、毅然とした態度で諸々の対応をしていた姿を見て、真の先進国はやはり違うなと、小池百合子が少しだけ脳裏を過ぎった私は肩を落としながらも、思わず感心してしまったのですが、やはりそれと同様にPorridge Radioの新曲を聴くと、そのヴォーカル・Dana Margolinを現在の真のリーダーとして迎えたいということを再確認させられたものです。

全ての事象を受け止めてしまうかのような脅迫性のある歌いっぷりは、「罪」と「罰」を類義語ではなく対義語として解釈した人間失格の主人公同様に、絶望さえも愛に満ちたロマンスとして鳴らす稀有な天才に映ります。凄く繊細だけど、凄いパワー。評価されているとは思うけど、もっと評価されてもいい。

2020年にリリースされた前作の『Every Bad』は個人的にも年間ベスト3位の作品として本当に大好きな作品となりましたが、次作となる『Waterslide, Diving Board, Ladder To The Sky』は5月20日に発売。

Horsegirl


Horsegirlはシカゴを拠点とする3人組。2019年に結成、メンバーも(おそらく)まだ全員10代の若いアーティストで、Snail MailやPavementも所属するNYの名門レーベルインディー・レーベル《Matador》との契約で一気に話題になりましたが、冷めた眼光やトーンで展開されるSonic Youthマナーな轟音と、シュプレヒゲザング的なコーラスワークが不思議とエモーショナルにポップな余韻として響かせる納得のセンス。大学進学前の目標だったというデビューアルバムは6月3日にリリース。

ここ数年でシカゴのシーンは面白くなっている実感は確かにあり、それはWhitneyのことだけを言っているのではもちろんなく、2019年の私的ベストアルバムだったDehdやDeeper、Lala Lalaといった優れたインディー・アーティストの出現を背景に思っていることなんですが、更にその下の世代ではもっと面白そうなムーブメント。

Bandcampの記事で言及があったので、貼っておきます。

<Hallogallo>というローカルのZINEがあったり、多くのアーティストがそれぞれの活動をサポートしたりと、現行のロンドン(ロンドンだけじゃないけど)周辺のシーンと共通するような動きががあるんだなと。


ありがとうございました!

村田タケル

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