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スタートアップの資金調達現場でなにが行われているのか(エクイティファイナンス編)

「◯◯円の資金調達を行いました!」というSNSでの投稿を目にしたことのある方は多いのではないでしょうか。
もちろん、その方が所属しているコミュニティによると思いますが、僕のTLだと1日に複数回のそれを目にすることも珍しくありません。

ただ「資金調達とはなんなのか」を理解している人は、界隈の人でない限り少ないのではないでしょうか。
また、どのようにそれを進めればよいのか分からない、という起業したての方も多いと感じています。
そこで今回は、スタートアップがどのようにエクイティファイナンス(株式による第三者割当増資)による資金調達を進めるのか、というテーマで書いてみます。

※過去記事のカテゴリ別まとめはこちら

そもそもエクイティファイナンスとは

エクイティファイナンスとは株式やCBなどを新たに発行し、それを買い取ってもらうことにより資金を調達する手段のことです。
デットファイナンスと呼ばれる融資とは異なり、調達した資金の返済義務がないことが特徴です。
ただ、出資者はキャピタルゲインを得ることを主な目的として出資するため、企業側は時価総額の増大・IPOやバイアウトによるエグジットを目指す責任が生じます。
エクイティ・ファイナンスをやるべきか否かについては前に書いたことがあるのでリンク先をご覧ください。

まずやるべきこと

はじめに考えるべきは、なぜお金を集めるのか、いくら欲しいのか、そして何に使うのか、です。
先に述べたように、それがたとえ数十万の額であったとしても、特に初回のエクイティファイナンス実施は会社の運命を決定付ける大きな意思決定です。
もちろん、割り当てた株式を自社で買い取るという巻き戻し手法もありますが、キャッシュ状況によって困難である場合が多いです。
そのため「出してくれる人がいるから受ける」という安易な決断は将来の選択肢を狭めることになります。

次に必要なのは、時価総額をいくらに設定するかです。
それを高く設定することにも低く設定することにもメリット・デメリットがあります。
高く設定することによって調達時の株式放出量を抑えられますが、投資家にとっての旨味が減るため調達難易度は一般的に上がります。
それに加え、IPOやバイアウトなどのエグジットをする際、時価総額が高すぎるとそこが障壁になる場合があります。
低く設定することによるメリット・デメリットはこれらの逆だと思ってください。

また、時価総額は価格だけでなく、preなのかpostなのかも決めなくてはいけません。
要するに、preは調達価格を含めない、postは調達額を含めた時価総額です。
例えばpre1億円で1,000万円を調達したとすると、時価総額は1,1億円となり約9%の放出ですが、postなら10%の放出です。

使用使途としては人件費や広告費に使われることが多いですが、ここはちゃんとP/Lを書いていくら必要なのかそろばんを叩きましょう。

出資者探し

自分達のフェーズに応じたVC、CVC、エンジェルに連絡や紹介を依頼するケースが基本です。
それ以外にも、ピッチイベントやカンファレンスへの出席を通じて人と会うという手法もありますし、それをあてにしすぎてもいけませんがプレスリリースの発行等を通じて先方からの連絡を待つという方法もあります。
また、2回目以降の資金調達であれば、既存投資家からの追加出資もありえます。

ちなみに僕は4回エクイティファイナンスでの資金調達を行っていて、初回はIncubate Campというピッチイベントの優勝特典としてIncubate Fund社から、2回目はEast Ventures社の松山太河さんとお茶をしている際にオファーやご紹介をいただいて、3回目はEast Ventures社からの追加出資、4回目は自分からオファーしてベンチャー・ユナイテッド社、ガイアックス社からそれぞれご出資をいただいています。
それぞれにドラマや感謝があるのですが、ここでは割愛します。

実際の交渉

創業期ならともかく、シリーズA以降の調達であれば複数社と交渉を進めることが普通です。
ちなみにシリーズAは1億を超えたら、とか優先株を使ったら、とか言われていますがちゃんとした定義が定着していないので、ざっくりシードの次のフェーズだと考えておいてください。

資金調達を行う上で必要な資料は事業概要、見込みP/L、現在の株主状況などになりますが、それらを持参して各社ご担当者に話をするわけです。
規模が大きくなるほど1回で決まるようなことは稀で、複数回のMTGを通じて条件や事業の成長見込みについて議論を重ねていくわけです。
また、投資家側は、そのMTGの間に事業や起業家がどれくらい成長・変化したのかを見ているともよく言われています。

ちなみに、重視する点は各社で大きく異なり、例えば銀行系VCの方はP/Lの数値や確実性を見ていることが多いです。
また、エンジェルの方であればキャピタルゲインの多寡よりも自分が役に立てるのか、それによって自分がわくわくできるか、ということを重視する方が多い印象です。

そして結果として両者の合意に至った場合、次のステップに進みます。

詰めの段階

これ、正直慣習としてよくないと思ってるんですが、「実際に出資をしよう」というタイミングで初めて投資契約書が出てきます。
この書面は例えば投資家からの買い戻し請求権などが含まれるめちゃくちゃ重要な書面なんですが、僕が知る限りでは契約の最終局面で出てくるものです。
本来、上記の交渉の場でここも含めて議論されるべきだと思うので、今後資金調達される方はどういう条件を想定しているかについて先に内容を教えてもらったほうがいいと思います。

ここでも最終的に両者が合意に至った場合、振込日が決まりその日に資金の振込が行われるわけです。

資金調達時にしんどいこと

時間がかかることが多いため、事業拡大に使う時間が削られてしまいます。
理由は複数社と同時に交渉を進めるためであったり、MTGごとに資料のアップデートを行う必要があるためです。

また、これの成否によって会社が倒産するか否かが決まるケースも多いためプレッシャーもかかります。
あとは、(企業側の説明力の不足や見込みの甘さのせいでもあったりしますが)事業の将来性についてわかってもらえないストレスも。

僕の周りにはたくさんの資金調達経験者がいますが、それがめっちゃ好き!って人にはぶっちゃけ今まで1度も会ったことがありません。

最後に

「あそこが◯円調達できたんだからうちもできる」みたいな考えはだいたい上手くいかないです。
あと、(僕も正直思うことはありますが)「◯◯の時価総額は高すぎる」みたいなのもそこに未来を見た人がいるんだし、そんな文句を言う前に自社事業を伸ばすべきだよなと感じます。
あとは、資金調達した人は自分の財布ではなく会社のお金が増えただけで、給与が上がることはあれど必ずしも金持ちになっているわけではありません。

資金調達という大変な業務をやり遂げた企業や人に対して、それは一つの区切りでしかないという意見も理解はできますが、おめでとうと応援を伝えられる社会の方がいいよなと感じているので、皆さんも応援してあげてみてください。
ということで、スタートアップの資金調達がどのように行われているかについての説明はこれで終わりますが、疑問点等あればコメントにてお願いしますー!

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この記事が参加している募集

ITベンチャーに新卒入社後2012年創業 複数回エクイティ・デッドでの資金調達を行い各種事業を行う 2015年に既存事業譲渡と訪日旅行者向けWebメディア立ち上げを並行しつつ、 2016年にフジメディアホールディングスグループに数億円でバイアウト 2019年から福岡で2度目の創業