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歯の矯正が通院不要に 評価額32億ドルのユニコーンSmileDirectClubとは?

SmileDirectClubは歯の矯正を家にいるだけで可能にしたUSのユニコーン企業です。2018年の10月にPre28億ドルで3.8億ドルを調達しました。

今回はそんなSmileDirectClubについて調べてまとめてみました。

どんなサービスか

SmileDirectClubは歯の矯正治療を病院に通うことなく、最初から最後まで遠隔で行えるサービスです。平均6ヶ月の期間で歯の矯正が完了し、従来の費用の60%ほど安く済ますことができます。価格は一回払いの1850ドル、24回の分割払いの2170ドルの2プランのみとシンプルです。

従来の企業との違いは、これまで矯正器具やクリアアライナーの企業は歯の矯正サービスを提供する歯科医や矯正医に対して販売していた一方、SmileClubDirectはそのままユーザーにサービスを提供している点です。

これによって通院費など余計なコストが削減され、手頃な価格でサービスを受けられるようになっています。

具体的なサービスの流れ

1. 3Dデータの作成

まずユーザーはSmileDirectClubが要求する、いくつかの角度の写真を撮って、それらを提出します。

それが承認されると、次は矯正器具を作成するステップに移りますが、そのためにはユーザーの歯の3D画像が必要になります。方法としては2つあり、

・SmileDirectClubの実店舗に行き、3Dスキャンする
・自宅に送られてくる専用のキットを使用する

のいずれかです。サービス開始当初は実店舗に行って、スキャンする方式のみだったようです。

キットを使用する場合はこんな感じのキットが郵送されてきます。

https://smiledirectclub.com/checkout/?w=impr

このキットを使用して歯型をとります

そして、とった歯型をSmileDirectClubに送り返します。ちなみにこのキット自体は49ドルです。

2. 矯正器具の製造・使用開始

とった歯型を元に3Dデータを作成し、歯科医や矯正医がレビューをした後、矯正することによってどう変化するかのプレビューや治療計画を作成して、ユーザーに提示します。

ユーザーはそれらを見て、始めるかどうかを決め、もし始めることになった場合は、3Dプリンターでそれぞれのユーザーにカスタマイズされた矯正器具の製造を開始して、完成すると下の写真のようなBOXになって配達されます。

https://smiledirectclub.com/how_it_works/

これが届いたら矯正スタートです。矯正器具はよくある金型のワイヤーの目立つモノではなく、透明なマウスピース型の目立たないデザインになっています。

3. 定期的なケア

矯正がスタートすると、それぞれのユーザーに主治医が付いて、90日ごとに治療の経過を遠隔からオンラインでチェックします。

マウスピースは段々と正常な位置になるように、少しずつ形が異なっていて、徐々に正常な位置に歯を動かすために10数個入っています。それらを2週間ごとに付け替えていき、矯正していきます。

4. 術後ケア

無事に治療が終了すると、元に戻らないようにリテーナーというものを使用して、状態を保つようにします。リテーナーの価格は99ドルです。

また、サブスクリプションにもなっていて、購読すると6ヶ月ごとに配送するようにも可能です。術後もしっかりキャッシュポイントを、しかも継続的なモデルを作っています。

他のプロダクト

他にも79ドルのホワイトニング用のキットもあります。

https://shop.smiledirectclub.com/products/whitening-kit

歯にクリームを塗ってから、スマホに繋いだLEDライトのマウスピースを口に入れてホワイトニングします。

この動画がホワイトニングキットの使い方なんですが、なかなか興味深いです。

この光ってるLEDにもホワイトニングを促進させる効用があるようです。

成り立ち

13歳のときにサマーキャンプで出会ったJordan KatzmanとAlex Fenkellが、大学生の2014年にCamelot Venture Groupと連携して設立したのが、SmileDirectClubのはじまりです。

ふたりとも歯の矯正の経験があり、その時に味わった金型のワイヤーを付けることへの抵抗感や、通常2000-6000ドルと高価であることへの不満がSmileDirectClubを始める原体験になっています。

また、Camelot Venture GroupはJordan Katzmanの父であるDavid Katzmanが創設したVCで、初期の資金提供を行い、さらに現在はDavid KatzmanがSmileDirectClubのCEOを務めています。

ユーザー数や売上・市場環境

市場環境

まず市場規模ですが、矯正器具の市場は100億超ドルあり、そのうち透明な矯正器具であるクリアアライナーのみの市場は約20-30億ドルあり、2023年には50億ドルに達するよう。

その市場のクリアアライナーのリーディングカンパニーであり、SmileDirectClubの競合でもあるInvisalignのAlign Technologyは売上高19億ドルほどで、過去5年で3倍のユーザーを獲得する成長性です。(2018年時点)

しかし特許切れやSmileDirectClubをはじめとする競争環境の激化によって、一時期Align Technologyの株価が半減しました。現在はやや回復して時価総額は215億ドルほどになっています。

https://google.com/

ほかの歯科矯正スタートアップの競合だと、Candid, Uniform Teeth, Orthlyがありますが、いずれも規模感的にはSmileDirectClub及ばず、SmileDirectClubほどの手軽さもありません。

SmileDirectClubのユーザー数

これまでのSmileDirectClubの累計患者数は40万人以上で、在宅向け矯正医療市場だと市場シェア95%と圧倒的です。

一方、競合のAlign Technology(Invisalign)は累計640万人以上、2018年単体だと約120万人の患者向けにクリアアライナーを出荷しました。

SmileDirectClubの売上や営業利益の数字は出てこなかったので、参考までにAlign Technologyの2018年12月期の数字を見てみると

売上高:19.66億ドル
営業利益:4.66億ドル
営業利益率:23.73%

となっています。

日本の市場環境

あまり信頼できるソースは出てこなかったのですが、あるNPOによると、日本の歯科矯正の市場規模は
年間患者数 30万人 × 治療費 80万円 = 2400億円
のよう。

値段が高いこともあって、世界より普及が遅れているようです。

業界の企業情報はあまり多くありませんが、Align Technologyは日本にも法人を作って進出していたり、矯正器具のみならず差し歯など歯科技工製品を製造している和田精密歯研は売上100億円を超えていてプレゼンスは高いという感じ。

ただ、歯科技工所は21000箇所あり、売上10億円超えは12社と基本的には小規模で分散している業界構造のようです。

資金調達変遷

2014年:Camelot Venture Groupと設立(多分ここで資金が入っているはず)
2016年:Gin Laneが出資
2016年:競合関係にあるAlign Technologyが4,670万ドル出資
2017年:Align Technologyが1280万ドル出資して、合計19%取得
2018年:Kleiner Perkins, Spark Capital, Clayton, Dubilier & RiceからPre28億ドルで3.8億ドル調達

まとめ

すごい良いサービスである一方、SmileDirectClubも結構問題になっていますが、医者や業界団体から危険性の指摘が入ったり、裁判になっているので、その辺りは当然難しいです。

また、競合のAlign Technologyが出資している一方、揉めてたりしてて面白いなと思いました。

お茶しましょう〜 DM→@yu8muraka3