戦慄衆の指揮

GP台北準優勝!木原 惇希のPerfect Kihara Works(エスパーコントロール)完全攻略ガイド

 皆さん、こんにちは。初めましての方は初めまして。僕の名前は木原 惇希。Onogamesに所属し、チームシリーズはFinal Last Samurai。現在はゴールドレベルプロです。
 過去の戦績や詳しいプロフィールにつきましては、コチラのOnogamesのページをご覧ください!


 ご存じの方も多いかと思われますが、僕はつい先日のグランプリ台北で準優勝しました。そしてなんとこれはグランプリで3度目となる準優勝でした…。


 またチャンピオンまで後1勝というところで、膝を折ることになってしまい、非常に悔しい思いを今もしているのですが、その一方で、台北で使用したデッキについてはとても満足しています。

 というわけで今回準優勝の成績を収めた『エスパープレインズウォーカーコントロール』について、書いていきたいと思います。

■メタゲーム

 現環境のスタンダードではたくさんのデッキが活躍していますが、まずグルールの話からしていかなければならないでしょう。
 日本国内で行われているあらゆるMCQで勝ち残り続け、勝ち組であり続けたグルール。その強さは、《ラノワールのエルフ》からの爆発力もさることながら、魅力的なのはカードの取捨選択によって様々な相手を見ることができる点にあるでしょう。プレインズウォーカーデッキが多ければ《不滅の太陽》を採用した型、同系を意識するなら《楽園のドルイド》まで入れたマナクリ型、ランプが多いと見るなら序盤から圧力を掛けられる《ザル=ターのゴブリン》型など、ベースとなる《ラノワールのエルフ》、《グルールの呪文砕き》、《再燃するフェニックス》を除けばリストは本当に様々で、それはグルールと戦うデッキたちに、不安要素を与えます。どこに意識を置けば良いかわからないですからね。

 そんなグルールに相性が良いとされているのが、ネクサスとバントランプの2種。グルールが序盤からクリーチャーを積極的に展開するのではなく、《ラノワールのエルフ》や《ボーラスの壊乱者、ドムリ》から4~5マナの脅威を叩き付ける構成が主流となったため、そのミッドレンジ型のグルールを潰すべく、台頭してきたのです。
 マナクリーチャーから《世界を揺るがす者、ニッサ》、そして《ハイドロイド混成体》と《集団強制》の流れは、まさにグルール殺し

 そしてそのバントランプとネクサスに強いのが赤単。特にバントランプは《楽園のドルイド》と《ラノワールのエルフ》が入っているため、《ゴブリンの鎖回し》が突き刺さります。同じ理屈はグルールに対しても言えるため、赤単は形によってはグルールにも有利です。

 その赤単に最も強いとされているのが、メインから《聖堂の鐘憑き》を採用したエスパーミッドレンジ。環境の高速化に伴って《正気泥棒》を排除したリストが、見事にグランプリ・カンザスシティを制しました。


 ですがエスパーミッドレンジは《時を解す者、テフェリー》をはじめとしたプレインズウォーカーに極度に依存したデッキであり、速攻を多数擁するグルールにはあまり相性が良いとは言えません。《暴君の嘲笑》などといった除去が《再燃するフェニックス》や《スカルガンのヘルカイト》に当たらず、上からの攻勢に無力だったり、《不滅の太陽》1枚でほぼ詰んでしまうなど、様々なグルールに厳しくなっています。

 今のグルールを取り巻くスタンダード環境についてはこんなところにしましょう。
 というわけで、まず僕はグルールこそが、グランプリ台北のトップメタであることはほぼ揺るぎないと思っていました。
 様々な形に変化でき、それぞれが少しずつ対抗策が異なり、またブン回りが存在する。強いデッキの条件を満たしていると言えます。


■グルールに勝とう

 目下意識すべきはグルール。そこで、グルールに対して効果的なカードから考えていきました。
 グルールで最も強いカードは《グルールの呪文砕き》、次に《スカルガンのヘルカイト》。そしてこれら2種を簡単に対処できるカードはかなり限られ、更にそのカードはスタンダードではさほど使われていません。

 そのカードとは《喪心》です。前環境のエスパーコントロールでは4枚が標準装備だったのですが、今のスタンダードで《喪心》はほとんど使われていません。


 というのも、黒いデッキはエスパーミッドレンジがほとんどで、そのエスパーミッドレンジには《第1管区の勇士》が入っているため、マルチである《暴君の嘲笑》が優先されています。
 環境で今最も使うべき除去を、《第1管区の勇士》との相性の悪さから使えない。ならば《第1管区の勇士》を使わなければ良いのでは?と考えました。

 更に、今《ケイヤの怒り》が強力なカードであることも明らかとなりました。


 グルールはミラーマッチやクリーチャー戦を見越して、軽量クリーチャーとプレインズウォーカーのバックアップという面々から、《切り裂き顎の猛竜》《スカルガンのヘルカイト》のクリーチャー軸にシフトしていますし、バントランプは多数のマナクリーチャーから《豊潤の声、シャライ》と、いろいろなデッキがとにかくクリーチャーを並べてきます。
 《第1管区の勇士》にも《ケイヤの怒り》は当たりますし、効かないデッキはほとんどないと言って良いと思います。

 《喪心》と《ケイヤの怒り》を使うデッキとくればもう一つしかないでしょう。そう、エスパーコントロールです。


■エスパーコントロールのアップデート

 かつて一世を風靡していたエスパーコントロール。僕は長年エスパーコントロールを愛用しており、ミシックチャンピオンシップ・クリーブランドでもエスパーコントロールを持ち込んでいたのですが、今のスタンダードで使うには、大型アップデートが必要でした。

 大きく問題に感じたのは2点。まずは《吸収》です。


 《時を解す者、テフェリー》と《ボーラスの壊乱者、ドムリ》の2種に対して、後手で完璧に腐ってしまう《吸収》。スタンダードのほとんどのデッキに対して《吸収》はとても弱いカードなのです。
 赤単に対しては依然として強力なカードではあるのですが。

 そしてもう一つが《薬術師の眼識》です。マナフラッドと5枚目の土地の確保を同時にこなしてくれる《薬術師の眼識》は、エスパーコントロールでは必須のカードでしたが、《覆いを割く者、ナーセット》の出現と環境の変かにより、アンプレイアブルなカードだと感じました。


 2マナ、3マナとさばき続けて4ターン目に《薬術師の眼識》を打てるのならば効果はあるのですが、グルールは特に4ターン目以降でインパクトのあるカードを展開してきます。そのため打つ暇がなかなか生まれない。
 ネクサスやバントランプも最序盤より4ターン目からの展開に重きを置いています。
 《覆いを割く者、ナーセット》が出てしまうとただ弱いカードになってしまうのは言うまでもなく。

 こうして、既存の「打ち消し・ドロー・除去」のエスパーコントロールは使用に値しないと確信しました。

 これらの弱いカードをデッキから排除したところ、勝率は非常に安定しました。《ケイヤの怒り》と《喪心》、このグルールに強い2枚を使うことのできるエスパーコントロールは、この現環境の最適解となったのです。


■GP台北使用デッキ

土地(26)
4《神聖なる泉》
4《湿った墓》
4《神無き祭殿》
4《氷河の城砦》
4《水没した地下墓地》
4《孤立した礼拝堂》
1《沼》
1《平地》

クリーチャー(3)
3《聖堂の鐘憑き》

呪文(31)
4《時を解す者、テフェリー》
4《ドミナリアの英雄、テフェリー》
3《覆いを割く者、ナーセット》
4《喪心》
4《思考消去》
3《ケイヤの怒り》
3《ケイヤの誓い》
2《戦慄衆の指揮》
2《古呪》
1《アズカンタの探索》
1《渇望の時》


サイドボード(15)
3《永遠神の投入》
3《灯の燼滅》
2《リリアナの勝利》
2《強迫》
2《肉儀場の叫び》
1《ケイヤの怒り》
1《ナーセットの逆転》
1《渇望の時》

■デッキリスト解説

4《時を解す者、テフェリー》

 以前までのエスパーコントロールと違い、《時を解す者、テフェリー》が加入したことで序盤の干渉手段と軽量ドローの二つを手に入れました。以前よりも4ターン目のセットランドや、《ケイヤの怒り》のキャストが安定するようになっています。
 3ターン目の《時を解す者、テフェリー》で減速させて4ターン目に《ケイヤの怒り》、5ターン目に《ドミナリアの英雄、テフェリー》から《喪心》を構えるというのがメインの勝ち手段。
 ターンを稼ぐ手段としての《時を解す者、テフェリー》の強さは凄まじく、相手のそのターンの行動を無にし、返しでの対処をほぼ強制させられます。対処しなければ相手はインスタントの《ケイヤの怒り》に常に怯えることになりますからね。そうでなくとも、放置していたらカードを引かれますから、対処せざるを得ません。
 《ケイヤの誓い》を戻して出し直しすることも多いので、覚えておくと良いでしょう。

  また、《時を解す者、テフェリー》は対象がいない状態でとりあえずカードを引くという使い方はしないことをオススメします。基本的に場に残るバウンスとして運用するか、対象がないならプラスしましょう。忠誠値5のテフェリーをカード1枚で落とすことはほとんどのデッキは不可能であり、もっと言えば次のターンにバウンスを使える可能性も高いです。

  無駄にカードを引いたがために、次のターンに出てきたクリーチャーに《時を解す者、テフェリー》が脅かされるのはもったいないです。

  《時を解す者、テフェリー》を先に出しておくことで、次のターンに0マナで脅威をさばいて更なるプレインズウォーカーを更地で出せるようになりますから、3ターン目に置いてプラスしておくことは大きな意味があります。


4《ドミナリアの英雄、テフェリー》

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